離婚を進める際の賢い別居の方法【子供を連れて出るか、自ら出ていくか等を弁護士が解説】

離婚・男女法律問題

離婚をするにあたって、両者の意見が一致しない場合、まずは別居をせざるを得ません。
この場合、どのように別居を進めるのが良いのか、夫の場合と妻の場合、家を持っている場合等を類型別に、メリット・デメリットを踏まえ、賢い別居方法について実践的に解説したいと思います。

 本記事では、まず、

離婚事件における【別居】の法的意味 【財産分与の基準】【家庭内別居】

について説明します。そして、それを踏まえて

賢い別居の仕方 子供を連れて別居してよいか
賢い別居の仕方 関係が悪くなった場合に自分から出ていって良いのか?
賢い別居の仕方 モラハラ夫との別居をするには?

等について、別居の方法と注意点について解説していきます。

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櫻井弁護士

学校法人中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、千代田区・青梅市の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

1 離婚事件における別居の法的意味 財産分与の基準 家庭内別居

離婚事件における別居の法的意味

離婚事件において、別居の法的意味は、①離婚に近い状態になっていること②別居時が財産分与の基準時となること、があります。

(1)離婚に近い状態になっていること

別居をするということは、事実上、両者の物理的距離が離れるのみならず、法的に、離婚に近い状態になっていることを意味します。
というのは、相手方が不貞行為をする、DVをする等、法的な離婚事由(民法770条に列挙)がこれといってなくても、別居状態になって数年(一般的には5年以上ぐらい)が経てば、訴訟等で離婚を請求した際に、認められる場合が多いからです(なお、これに関しては、自分が不倫等をして責任がある「有責配偶者」の場合はまた別です。下記の参考記事を参照してください。)。
【参考記事】不倫をした強気な有責配偶者の心理とは 裁判等での対抗策

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櫻井弁護士

なので、離婚をしたいのに、相手方が条件に納得してくれず手の打ちようのない場合は、まずは別居をして、法的に離婚に近い状態を積み重ねていくことを考えざるを得ないということになります。

(2)別居時が財産分与の基準時となること

夫婦両者の財産を分ける「財産分与」は、離婚における金銭の問題では、実は慰謝料等よりも遥かに重要です。
夫婦として、夫婦である期間に増やした財産を、両者合わせて基本的に2分の1ずつ分けるので、結構大きな金額が動く可能性があるからです(例えば、夫が1億円分の財産を持っていて、妻が1000万円の財産を持っている場合、1億1000万円を5500万円ずつ分けるから、夫は、妻に対し4500万円を支払うことになります。)。

この財産分与は、夫婦が同居してから別居するまでに増やした財産を2分の1ずつ分けるので、別居時が財産分与の基準時となり、それ以降の両者の財産の動きは、財産分与とは関係ないということになります。
そこで、別居したときの財産の総額が、財産分与において強い意味を持つことになるので、自分が何かしら大きな財産を得る可能性があるのであれば、自分の財産を低く評価させるために早く別居した方が良いということになりますし、自分のお金が目減りするような事情があれば、別居は遅らせた方がよいということになるわけです。

(3)家庭内別居について

「家庭内別居」という言葉はみなさんも聞いたことはあるでしょう。一緒に住みながらも「別居」しているという状態です。

家庭内別居という状態かどうかは、
物理的に顔を合わせて言葉を交わしているかどうか、
互いのために料理を作る、洗濯をする等の家事を行っているかどうか、
互いの財産が一緒になっているかどうか、

等の諸要素を総合的に判断することになります。

この点、離婚に近い状態とされる【物理的な家庭内別居】は、なかなか法的に認定されにくいです。
自分としては、「家庭内別居である。」と思う状態というのは確かに多いと思うのですが、一緒の建物に住んでいる以上、当事者が思っているよりも、裁判所には「家庭内別居とはいえない」という認定をされることになり、大きな離婚事由がなくとも離婚できるような別居状態としてカウントされないということになります。
これに比べ、財産分与の基準時に関しての、いわば【経済的な家庭内別居】は、実際に夫婦の財産の行き来が全くなく、その上、物理的なやりとりもほとんどないようであれば、その時点までの財産が財産分与の対象として認定される場合もあります。

2 賢い別居の仕方 子供を連れて別居をして良いか?

賢い別居の仕方 

以下、賢い別居の仕方を具体的事例ごとに解説します。

まず、子供を連れて、自ら家を出て別居をして良いのでしょうか。答えはYESです。これは、男性側でも女性側でも同じです。
子供の意思に明確に反するような場合でなければ、特に問題はありません。
未成年者略取誘拐罪になるということもなく、民事上も特に不利益になることもありません。

子供が自分の側にいると、子供の養育分費用を相手方に婚姻費用として請求できることになります。例えば、夫が働いていて、自分が専業主婦の場合に、家を出ると、自分の分の生活費と子供の養育分を合わせた婚姻費用を夫に請求できることになるのです。
ですので、その後の費用負担について有利になりながら離婚の話し合いを進めることができます。
また、親権・監護権を得たい場合には、実際に自分のところに子供がいた方が、親権・監護権をかなり得やすくなります。

ただ、もちろん、これまでそれほど子供の面倒をみていなかった等の状況でありながら、あまりに強引に子供を連れていくと、相手方を逆上させることになって、話し合いが全くスムーズにいかなくなるような場合が多いので、気をつけた方が良いと思います。

あと、子供を連れていかれたからといって、取返して連れ去るのは、夫婦であっても未成年者略取罪(刑法224条。3月以上7年以下の懲役)にあたる場合があるので(最高裁平成17年12月6日決定)、慎重になった方がよいです。

3 関係が悪くなったときに自分から出ていった方がよいのか?

関係が悪くなったときに自分から出ていった方がよいのか?

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事務員

関係が悪くなって、無視されたり、家事をしてもらえない等の状況になり、精神的にまいってしまった場合、自ら家を出た方が良いのでしょうか。

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櫻井弁護士

これは、精神衛生上の問題もありますが、もしできるのであれば、自分から出ない方が良いと思います。

例えば、夫が自分から家を出た場合、その家が夫が契約している10万円の賃貸物件だったとします。
この場合、妻に対して支払う婚姻費用の妥当額が15万円だったとして、妻は賃料10万円の家に住んでいても、15万円から10万円をそのまま差し引けるわけではなく、差し引ける金額は、諸事情を考慮して、ある程度の額になってしまいます。
例えば、15万円ー3万円=12万円
ということがありえますが、自分の別居先の賃料が例えば10万円だとしたら、合計22万円の出費は結構きついですね。
これに対し、自分が家に残り、妻が出ていった場合には、妻の住居費も込みで婚姻費用15万円を支払えば良いのであり、自分は家に住み続けるのだから、上の自分が出ていくケースより出費は少なくなるということになります。

また、自分から出ていった場合に、エキセントリックな相手方の場合、最後まで家に居座ろうとして、家の存在を交渉の条件として使われてしまう場合があります。

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事務員

一度、離婚が成立しても妻が夫の持ち家を出ようとせず、明渡訴訟まで行ったケースもありました。そのような場合は大変ですよね。

なお上のケースでは、妻の立場に立っても、出ていった場合には、婚姻費用15万円の中から賃料を支払わなくてはならない反面、出ていかなかった場合には、家に住み続けながら12万円を受け取った方が得であることがわかると思います。

しかし、そうだとすると、関係が悪くなりながらも、無理に同居を続けることになります。
先程のようなエキセントリックな相手方の場合、例えば、暴力を振るわれる、部屋にゴミを放り込まれる、いちいち嫌なことを言われる等の嫌がらせをされる場合もあるでしょう。
暴力を振るわれた場合は、できれば録音をしておいた上で、すぐに警察を呼んで、その通報履歴を残しておけば、その後の離婚の争いでも有利になるでしょう。
録音は、いちいち嫌なことを言われる場合も有効で、録音できていると思えば、「後で証拠として示せる。」という安心感があるので、それほど精神的には答えません。精神的に耐えられなくなってきた場合は、「あなたのモラハラを録音している。」ということを伝えれば、もう言ってこなくなるでしょう。
一番やっかいなのは、部屋にゴミを放り込まれる、洗濯した物を濡らされる等のネチネチとした音に出ない嫌がらせです。

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櫻井弁護士

この場合は、メモを細かくとると共に、写真に撮って残しておくしかないと思います。

4 モラハラ夫との別居をするには?

モラハラ夫との別居をするには?

では夫にモラハラをされている妻の場合はどうでしょうか?

このような場合、妻は、経済的に支えてもらっている上に、精神的にも支配され、どうしてよいかわからなくてパニックになっている場合が多いです。

結論としては、この精神的支配状況を脱するために、まずは別居をして、夫との物理的距離をおいた方がよいです。そうすることによって、はじめてまともにどの後のことと向き合えると思います。

ただ、もちろん、経済的な問題があります。
自分が、家庭の家計を任されていて、自分の預金口座にお金がある場合には、そのままそれを持って出ていったとしても、何ら問題はありません。
このようなケースはまれだと思うので、そうでない場合には、実家を頼らざるをえないでしょう。
例え、実家が遠い地であったとしても、そのようなモラハラ夫に耐えられない場合は、実家が受け入れてくれる場合は、実家に戻った方が良いと思います。
実家で居住をしたとしても、ある程度の婚姻費用も同時に請求できます。
実家も援助が難しい場合には…まずは弁護士に相談してみるしかありません。何か打開策があるかもしれません。

無事に家を出られた場合には、もちろん、住所を知らせる法的義務というものはないので、このようなモラハラ夫の場合は、何をされるかわからないこともあり、住所を知らせない方がよいでしょう。
もっとモラハラがひどいケースの場合は、いわゆるシェルターを頼るとよいでしょう。
民間シェルター 内閣府男女共同参画局

その後、大事なことは婚姻費用の請求です。婚姻費用の請求は、必ずしも同居時に請求することができないわけではないのですが、別居をした後の方が、金額が定まりやすく、また支出してもらっていないことが当然の前提になるので、請求しやすいです。
婚姻費用の請求は、家庭裁判所の調停で請求していくことになります。
原則として、この婚姻費用分担請求の調停の申立月からの分を基本的に請求できることになるので、早めに弁護士に頼んで、調停を申し立てることをおススメします(なお、調停を提起する前に内容証明郵便を送ったときからの婚姻費用の請求を認めたケースもあります。東京家審平成27年8月13日。判例タイムズ1431号248頁)。

婚姻費用分担請求については下記の記事が参考になります。
【参考記事】別居後の婚姻費用の分担請求で気になる点4つ

婚姻費用が決まれば、モラハラ夫は、婚姻を続けていると、ただお金を支払わなくてはならないという状態に陥るので、妻としては、条件の良い離婚を求めて離婚の調停を進めていくことができることになります。
ちなみに、婚姻費用の調停と離婚の調停は、同時に提起することが可能です。

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櫻井弁護士

モラハラ夫との離婚の争いは先程述べたように、精神的支配下におかれている人が多いので、なかなか離婚に踏み切るという決断がしにくいというケースが多いです。

 5 本記事のまとめ

離婚するにあたって、別居するという行為一つをとってみても、いろいろ法的に工夫のしようがあります。
うまく進めた場合には、その後の交渉の有利さに影響を与えます。
弁護士法人アズバーズでは、離婚の準備段階から顧問契約をし、アドバイスをしながら進めていくという契約もいくつかお受けしております。

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櫻井弁護士

特に、財産分与の財産が多い等の理由で離婚を慎重に進めたい等の場合は、まずは無料電話問い合わせ(03-5937-3261)をいただければと思います。


【2024.1.14記事内容更新】

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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