【余命宣告】大切な人のために遺言を諦めない|急ぎの状況に応じた遺言を解説

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」千代田事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し11年目を迎える。


患者の知る権利や情報開示の考え方が浸透した現在、余命宣告はめずらしいものではなくなりました。

余命宣告を受けた方は深く思い悩むでしょうが、生前に準備できることについては熟考の上で自ら決め、それを遺言として残すことは、ご自身にとっても大切な作業となります。

本記事では、まず

・急ぐ場合の遺言選び(遺言の種類)

について説明します。

そして、

・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・死亡危急時遺言

それぞれの内容と注意点について解説します。

1. 急ぐ場合の遺言選び

急ぐ場合の遺言選び

遺言書には複数のタイプがあります。

遺言書の種類

遺言書には平常時に作成できる「普通方式遺言」と、緊急時に作成する「特別方式遺言」があります。

さらに普通方式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類、特別方式には「危急時遺言」「伝染病隔離者遺言」「在船者遺言」「船舶遭難者の遺言」の4種類があります。

どの遺言書を選ぶか

余命宣告を受けるなどして遺言を急ぐ場合、自書できる状態であれば、応急的に「自筆証書遺言」を、その後改めて「公正証書遺言」を作成します。

自書は難しいが言葉や動作で意思表示ができる状態なら「公正証書遺言」を作成します。

公正証書遺言を作成している時間的余裕がない場合は「危急時遺言」ですが、その場合でも「自筆証書遺言」を作成しても構いません。

このように、本人の状態や環境に合わせて遺言を選択していきます。

2. 自筆証書遺言(民968条)

自筆証書遺言(民968条)

まずは、すぐに作成できる自筆証書遺言についてです。

使い勝手が良くなった自筆証書遺言

以前は全文を自書する必要がありましたが、平成30年に民法が改正され、遺言に相続財産の目録を添付する場合に、その目録は自書しなくてもよいことになりました。つまり、パソコンで打ち込んだり他人に作ってもらったりした財産目録でもよいということです。

また、同改正と同時に公布された「法務局における遺言書の保管等に関する法律」により、法務局の遺言書保管所に自筆証書遺言を預けることができます。これにより遺言書の紛失や偽造といったリスクが大きく改善されました。

法務局に預けた場合は、死後の検認手続(民1004条1項)が不要になり、相続人を煩わせることなくスムーズな相続手続が実現するといった点も大きな進展です。

作成上の注意点

遺言書本文及び「遺言」というタイトルも含めて、すべて自書しなければなりません。また目録はパソコンで作成しても構いませんが、目録の全ページに遺言者本人の署名押印が必要です(民968条2項)。

さらに訂正部分は二重線で消し、印鑑を押すなどの細かな決まりごとがあり、体力気力が低下した方にとっては周到に遺言を書き上げるのは難しいかもしれません。

そして最大の難点が、人知れず自筆証書遺言を作成した場合は、作成当時の状態を証明する方法が限られてしまい、後日遺言能力をめぐって争いになるおそれがあることです。

公正証書遺言との合わせ技

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櫻井弁護士

自書できる状態であれば、ひとまず自筆証書遺言を作成します。遺言書は何度も書き直すことができ、複数の遺言書がある場合は日付の新しいものが有効として扱われるため、構えずにトライして下さい。

そして、体調を見ながら適当な時に自筆証書遺言で示した内容を、公証人の手を借りつつ公正証書遺言として表わすという方法をお勧めします。万が一、公正証書遺言完成までにお亡くなりになったとしても、自筆証書遺言があるため、遺族にとっての指針となります。

3. 公正証書遺言(民969条)

公正証書遺言(民969条)

次に、公証人に作成してもらう公正証書遺言です。

遺言の中では最強

後の遺産争いを避ける観点から、公正証書遺言がお勧めです。

公正証書遺言は、公証人が本人確認のうえ遺言者の精神的な状況を見極めながら作成します。そのため自分で作成する自筆証書遺言や後述する死亡危急時遺言と比べると、作成当時の遺言能力が疑われたり遺言書の偽造が主張されたりする等の、紛争を予防することができます。

さらに公証役場に保管されるため紛失・偽造の心配がなく、面倒な検認手続きも必要ありません。

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櫻井弁護士

確実かつ速やかな相続を実現するには公正証書遺言が最も望ましい方式ということになります。

公証人出張による公正証書遺言作成

公正証書遺言を作成するには遺言者が公証役場まで足を運ぶのが通常ですが、身体の調子が悪く自分から出向くのが難しい場合には、公証人に出張してきてもらうことができます。

以下、公証人出張による作成の流れを確認しましょう。

【作成の流れと注意点】

①公証役場に電話で予約する

まずは作成してもらいたい公証役場に電話等で予約をします。その際、遺言書の作成者、誰に何を遺すのかということをおおまかに説明すると必要な書類を教えてくれますので、それを準備します。

⚠️注意点⚠️
出張を依頼する場合には、その区域に注意が必要です。
遺言者本人が出向く場合はどこの公証役場でも構いません。しかし、公証人が出張する場合には、各公証人はその所属する法務局・地方法務局の管轄内でのみ職務を行うという制約があります。したがって、都内病院に入院中の方が埼玉県内の公証人に出張してもらうことはできません。

なお、管轄内であれば自由に公証役場を選ぶことができます。遺言を急ぐ場合は、何か所かに電話で問い合わせをして混み具合を確認するとよいでしょう。

公証役場一覧 | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)

②日程調整

公証人と相談しながら必要書類を揃え、遺言内容が固まった時点で作成日時を決めることになります。日程調整には遺言者、付添の方、証人と公証人の都合が合う必要があるため、関係者の都合も確認しておきます。

⚠️注意点⚠️
公正証書遺言の作成には2人以上の証人が必要です。証人には未成年者、推定相続人及び受遺者とその配偶者(嫁や婿等)及び直系血族(孫等)はなれません。

証人を自分で準備できない場合には、公証人に相談すれば紹介してもらえます(有料)。

③作成時の環境調整

公正証書遺言作成時には、公証人がその内容を遺言者や証人の前で読み聞かせますが、当然プライバシーに関する事柄が含まれます。そこで病院等の施設では他の利用者の耳に入らないよう、ミーティングルームのような個室を用意する配慮をしたいものです。

④口がきけない場合の特則

公正証書遺言の作成にあたっては、遺言者が遺言の趣旨を公証人に「口授」することが求められます(民969条1項2号)。

この「口授」については、平成11年民法改正により「通訳人の通訳による申述又は自書」に代えることができるようになりました(969条の2第1項)。

具体的には、通訳人を介した手話や遺言者自ら筆談するなどして遺言内容を公証人に伝えることが考えられます。これにより、脳梗塞で倒れた方や病気のために気管に穴を開けるなどして話せなくなった方でも、公正証書遺言を作成することができるようになりました。

また、録取した遺言内容を公証人が遺言者や証人に「読み聞かせ」る際には、通訳人による通訳のほか「閲覧」、つまり遺言者に直接読んでもらうという方法も可能です。耳が遠い方でも録取内容を見ることによって確認することができます。

4. 死亡危急時遺言

死亡危急時遺言

最後に、緊急時に作成できる特別な方式、死亡危急時遺言です。

時間がなくても遺言をあきらめない

遺言書を自書する体力がなく公証人に作成を頼む時間的余裕がない場合でも、遺言する方法があります。しかも、普通方式遺言の要件を少し緩和した方式(特別方式遺言)で行います。この特別方式遺言のうち最も多く利用されているのが、死亡危急時遺言です。

以下、死亡危急時遺言について解説します。

死亡危急時遺言の作成

民法976条1項では次の場合に遺言することができると定めています。

①遺言者に疾病その他の事由で死期が迫っている

生命の危険が急迫であることが前提ですが、その原因は問いません。また、死亡の危急は必ずしも客観的である必要はなく、遺言者が自己の死亡の危急の迫っているものと自覚することで足ります。

②証人3人以上が立会う

公正証書遺言の場合と異なり、3人以上の証人が必要です。比較的多くの者が立ち会えば、遺言が正しく行われたことの蓋然性が高まるからです。

証人の資格については公正証書遺言の場合と同様、未成年者や推定相続人はなれません(民982条、974条)。

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櫻井弁護士

もっとも、3人の証人適格者のほかに不適格の者が証人として立ち会ったとしても、不適格者が口述を筆記したり他の者に読み聞かせたりなどの主導的役割を担ったような場合でなければ、遺言の効力に影響しないものと考えられます(大阪高決昭37.5.11)。たとえば、遺言者の子が死亡に際して枕元に呼ばれ臨終に立ち会うことは人情に沿うものと言えるからです。

③遺言者が証人の1人に遺言の趣旨を口授し、その証人が筆記、遺言者や他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させる

口授によって遺言の内容を伝える必要があり、単に首を振って答えた程度では口授とはいえません(大判大7.3.9)。また直接的な対話を予定しており、電話や録音データも不適法と考えられています。

筆記については肉筆である必要はなく、パソコンで打たれたものでも構いません。

④各証人の署名押印

筆記が正確であることを確認した証人は、遺言書に署名押印をします。押印は拇印でも構いません。

⑤家庭裁判所による確認

遺言を作成した日から20日以内に、家庭裁判所に対して確認の審判の申立てをする必要があります普通要式遺言よりも要件が緩和された分、その後に裁判所の手続にのせることによって、遺言作成の真正を確保します。

さらに検認手続きも経なければなりません。

この死亡危急時遺言の作成は珍しいですが、私達の弁護士法人アズバーズでは、3回担当したことがあります。もし必要な方はお問い合わせいただければと思います。

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櫻井弁護士

以上、急ぐ場合の遺言の方式について解説しましたが、遺言書に「何をどう書くか」が重要です。当事務所では急ぐ場合の遺言の原案についても相談に応じています。ご気軽にお問い合わせ下さい。

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