家事をしないことは離婚原因になる?専業主婦(夫)と共働きで違いはある?モラハラへの対応策

離婚・男女法律問題

「家事をする」と言って結婚後に専業主婦になったが家事をしない妻、勤務時間は同じなのに家事をまったくやろうとしない夫。
家事分担をめぐっては大なり小なり不満を抱える夫婦は多いのではないでしょうか?不満が高じて離婚問題に発展することがあります。

本記事では、相手が家事をしないことを理由に離婚できるのかについて説明した上で、専業主婦のモラハラ対応策についても解説します。

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櫻井弁護士

千代田区・青梅市の法律事務所、弁護士法人アズバーズ代表弁護士の櫻井俊宏が解説します。

*弁護士法人アズバーズ代表弁護士櫻井俊宏が、YouTube幻冬舎ゴールドオンラインチャンネルで、離婚問題について解説しております。

1 家事の分担

まず、夫婦の家事についての統計を見てみたいと思います。

2018年に国立社会保障・人口問題研究所が行った第6回「全国家庭動向調査」によりますと、1日の平均家事時間は、妻は平日263分、休日284分、夫は平日37分、休日66分でした(妻の年齢が60歳未満の世帯を集計)。

全国家庭動向調査 結果の概要

⑴ 夫婦それぞれのかたち

上記の平均家事時間が「長い」か「短い」か、感じ方はそれぞれだと思います。

家事の分担について法律は何ら干渉しておらず、各夫婦で決めるしかありません。

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櫻井弁護士

たとえば「双方がきっちり折半とする」、あるいは「一方はまったく家事をしない」など、お互いが納得しているのであれば何の問題もありません。

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事務員

問題は夫婦のいずれかが不満を持っている場合ですよね。

⑵ 夫婦の義務

まずは「不満」の正体を確認しましょう。

民法752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と夫婦の義務を規定しています。

  • 同居義務結婚後の夫婦は一緒に住む義務があります。
  • 協力義務夫婦が協力して、日常生活の維持、病者の監護、子どもの保育などあらゆる場面で支え合う義務です。
  • 扶助義務夫婦相互が同じレベルで生活できるように助け合う義務です。
    経済的な援助を意味し、実際には各自が収入に応じた婚姻費用を分担することによって実現します。

一般的に、家事労働を含め生活費の拠出などに夫婦間で偏りがあり、これを是正しようと努めない態度は、扶助義務および協力義務に反します。

つまり、妻(夫)が家事をしないことの不満は、夫婦の協力扶助義務違反が原因です。

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2 家事しないことを理由に離婚できる?

では、家事をしないことを理由に離婚することができるのでしょうか?

⑴ 協議離婚

日本では国際的にめずらしい夫婦の合意による離婚、協議離婚制度があります。

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櫻井弁護士

夫婦が合意するのであれば、いかなる理由であっても離婚できます。もちろん、家事をしないことを理由に離婚することは可能です。

⑵ 裁判離婚

夫婦の一方が離婚に応じない場合には、裁判所に訴えを起こして判断を求め、法定の離婚原因(民法770条1項)に該当すると判断したときに限り裁判所は離婚を認めます。離婚原因は5つありますが、そのうち問題となり得るのが「悪意の遺棄」および「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」です。

①悪意の遺棄(2号)

「悪意」とは、夫婦関係の破綻を積極的に企図し、もしくは破綻しても構わないという意思のことで、「遺棄」とは、正当な理由なく同居・協力・扶助の義務を継続的に怠って夫婦の共同生活の維持を拒否することです。

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櫻井弁護士

具体的には、正当な理由なく同居を拒む、相手に収入がないのを知りながら生活費を一切入れないなど、行為それ自体に夫婦関係を破綻させる意思が認められる場合です。

これに対して、家事をしないのは協力扶助義務を怠ってはいますが、その事実だけでは積極的に夫婦関係の破綻を企図もしくは容認する意思まで見て取れるとはいいがたく、また「仕事が忙しい」「体力がない」などの正当理由を持ち出す可能性もあります。

したがって、家事をしないという事実だけで裁判所に「悪意の遺棄」を認めてもらうことは難しいと考えられます。そこで、離婚原因としては次の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」も合わせて主張するのが通常です。

②その他婚姻を継続し難い重大な事由(5号)

一般に、婚姻が破綻していて回復の見込みがない場合をいいます。夫婦双方が婚姻継続の意思を失っているのであれば協議離婚をすればよいわけですから、ここでの婚姻破綻とは、夫婦のどちらか一方が婚姻継続の意思を失っている状態です。しかし、相手は離婚に応じない状況です。

そこで「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、相手が離婚されてもやむを得ないだけの、つまり、もし同じ立場なら誰でも婚姻継続の意思を失うであろう程度の事情が要求されます。

具体例としては、暴行・虐待、犯罪行為、浪費癖、勤労意欲低下、性行為不能、性格の不一致、親族との不和などです。

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櫻井弁護士

「悪意の遺棄」と比べると対象となる事実は幅広くありますが、その事実が「誰でも婚姻継続の意思を失う」ものかという評価が必要になるのが特徴です。

判例を見てみましょう。

・東京地裁平成17年6月14日

夫(美容整形外科医)から妻(同医院勤務)への離婚等請求事件です。

「被告(妻)は、原告(夫)と婚姻した後も前記美容外科医院での勤務を継続していたのであり、原告もこれを積極的に評価していたのであるから、被告が当然に家事全般を行わなければならないものということはできず、原告の洋服の片付けや靴磨きは原告自身が行えば足りることであって、これを一方的に被告に押し付けようとする原告の考え方は、身勝手というほかない」として請求を棄却しています。

・東京地裁平成15年4月21日

夫から妻への離婚等請求事件です。

妻は結婚当初から家事をほとんどせず、精神不安から自殺願望が強くたびたび深夜に救急車を呼んだりしていました。夫は仕事を休んで看病せざるを得ず、消費者金融から160万円の借入れをしています。

その後、妻は英会話スクールの割賦金弁済のためコスプレカフェに勤務し、その店長と不貞行為に及んでいますが、あいかわらず家事はしていませんでした。

裁判所は「被告(妻)の家事を拒否する態度という婚姻を継続し難い事由により(婚姻は)破綻したものと認められる」として離婚を認めています。

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⑶ 専業主婦(夫)と共働きで違いはあるか?

・共働き

共働き夫婦の場合、一方が家事全般を担うとの合意がない限りは、家事についても協力・分担し合う義務があります。合意がないのに一方がまったく家事をしない場合には「婚姻を継続し難い事由」に該当する可能性があります。

・片働き

「夫が稼いで、妻は専業主婦をする」という夫婦であれば、少なくとも夫の勤務中は妻が家事をやるという合意があると考えられます。専業主婦の妻がまったく家事しないようであれば、やはり「婚姻を継続し難い事由」に該当する可能性があります。

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事務員

では逆に、専業主婦の妻が働く夫の非協力を理由に離婚を求めるのは難しいでしょうか?

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櫻井弁護士

その場合は難しいでしょうね。なぜなら、夫が生活費を全面的に負担し妻が家事労働を一手に担うという形式は「誰でも婚姻継続の意思を失う」とまでは言えないからです。

3 専業主婦(夫)の場合は裁判離婚できないのか?

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事務員

えぇ…専業主婦は家事をしない夫とはどうやっても裁判離婚できないってことですか?離婚したいほど愛情が尽きている夫のために家事をし続ける人生…つらすぎませんか??

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櫻井弁護士

ここまでの解説の流れだとそう思うかもしれませんが、実は夫の言動によっては裁判離婚できる場合があるんです。

⑴ モラハラ(モラルハラスメント)

モラハラ(モラルハラスメント)とは倫理や道徳による嫌がらせです。

  • 「家事なんか外の仕事よりずっと楽だろ」
  • 「俺が手伝う?家事はお前がやれよ」
  • 家事や育児に協力してほしいと言うと、無視する、威圧的な態度をとる、大きな音を立てて部屋から出ていく

これらの言動が度重なるようであればモラハラにあたります。

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櫻井弁護士

モラハラは多種多様ですが、精神的暴力といっていいほどのレベルであり、もはや婚姻関係が破綻しているといえる場合には「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして裁判離婚できます。

⑵ 対応策

DVと異なって身体に傷が残らないため、モラハラを示す客観的な証拠が重要です。

モラハラの様子の録音・録画データが証拠として強力ですが、モラハラ被害を継続的に記録した日記なども証拠として一定程度役に立ちます。

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櫻井弁護士

そして、自分がモラハラ被害を受けていることを認識することが何より大切です。相手と比べて経済的弱者であるため「自分が至らない」と思いがちですが、互いに思いやり支え合うのが夫婦です。

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事務員

経済的に弱い立場でも家事育児は立派な労働です。それを評価もせずモラハラしてくるなんて怒りが湧きますね!!勇気を出して行政の相談窓口や弁護士に相談しましょう!!

DVされて離婚する場合に有利に進める対処法3つを弁護士がお話します

4 まとめ

家事分担のかたちは夫婦それぞれですが、それだけにわだかまりも発生しやすいものです。

関係改善に向けて話し合いを持ちたい場合には夫婦関係調整調停(円満)という方法もあります。
私達の弁護士法人アズバーズでは調停のお手伝いも行っております。お気軽にご相談ください。
(2021.11.29内容更新)

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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