なぜ今家族法改正を議論するのか【弁護士が解説 連載第1回】

法律時事問題を考察

第1 はじめに

昨今、各種報道で取り上げられているとおり、現在、法制審議会において、家族法改正に関する議論が進められています。もっとも、報道の中心は【共同親権】を原則として取り入れるか否かという点であり、他にどのような点が議論の対象となっているのかが明らかではありません。

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櫻井弁護士

そこで、数回に分けて、家族法改正で議論されている内容について、整理していきます。

ちなみに、家族法とは、「家族法」という独立した法律があるわけではなく、民法の中で家族関係について規定されている民法723条以降のことをいいます。

なお、本記事では、家族法改正案のうちいずれの案がふさわしいかという意見を述べることはなく、あくまで改正案の整理を目的としていることをご承知おきください。

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事務員

中央大学の実務講師を担当している、弁護士法人アズバーズの弁護士増田大亮(第二東京弁護士会家事法制に関する委員会委員)と、代表弁護士櫻井俊宏の監修でお送りします。

第2 取り残された婚姻・親子関係に関する規律

我が国の民法は、下の図のとおり、1898年に施行されて以降、数々の改正を経てきました。

民法の主な改正箇所

民法の主な改正箇所の説明図

平成29年、債権法が120年ぶりに大改正されたことは、皆さんの記憶にも新しいかと思います。また、平成30年から令和元年にかけて、相続法の改正も行われました。

これに加えて、令和3年には、共有関係・不動産登記にまつわる法改正がなされ、今年からは成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるなど、我が国の民法は、まさに改正ラッシュを迎えています。

そのような中、家族法は、第2次世界大戦後の1947年、大改正がなされました。家族法は、その後も少しずつ改正がなされた一方、夫婦・親子関係という家族法の中でも最も基本的な部分については、1987年に特別養子縁組が導入されたことを除けば、大きな変化がありませんでした。

もっとも、夫婦・親子関係の規定が改正されない中、世の中は大きく変動していき、これらの規定に関する改正の機運が高まってきました。

民法改正の背景

改正の機運が高まった背景事情として、「父母の離婚を経験した子の置かれている状況、子育ての在り方やそれに関する国民意識の多様化、社会の各分野における女性の一層の参画といった社会情勢、あるいは子に関わる近時の立法の同行や児童の権利条約の批准後の状況等」が挙げられています(部会資料1参照)。

例えば、2019年の年間離婚件数は、20万8496件に上り、親の離婚を経験した未成年者の数も20万5972人となっています(厚生労働省「人口動態調査」)。他方、養育費の取り決め率は、母子世帯で42.9%、父子世帯で20.8%となっております(厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」)。

このような家族法、とりわけ夫婦・親子関係に関する規律の見直しを求める機運が世の中で高まったことを受け、当時の上川陽子法務大臣は、令和3年2月10日に行われた法制審議会第189回会議において、法制審議会に対し、「離婚及びこれに関連する家族法制の見直しに関する諮問第113号」を発しました。諮問の内容は、以下のとおりです。

「父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益の確保等の観点から、離婚及びこれに関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」

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櫻井弁護士

法務大臣の諮問を受け、法制審議会は、「家族法制部会」を新設し、同部会において家族法の改正について審議をすることとし、現在も審議が続いています。

第3 審議状況及び主要論点について

現在、法制審議会家族法部会で改正に関する議論が進められている事項は、下記のとおりです。

第1 親子関係に関する基本的な規律の整理
第2 父母の離婚後等の親権者に関する規律の見直し
第3 父母の離婚後の子の監護に関する事項の定め等に関する規律の見直し
第4 親以外の第三者による子の監護及び交流に関する規律の新設
第5 子の監護に関する事項についての手続に関する規律の見直し
第6 養子制度に関する規律の見直し
第7 財産分与に関する規律の見直し
第8 その他

 法制審議会家族法部会では、令和3年3月30日から令和4年9月1日に至るまで、計19回の会議が行われており、現在、家族法制の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論がなされています。

第4 最後に

次回以降、改正で議論されている内容をいくつかのテーマに区切りながら、現在、どのように議論が進んでいるのかを整理していく予定です。

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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