大学内で犯罪が起きたら大学の責任!?退学等の学生懲戒・安全配慮義務【弁護士が解説】

最新時事問題の法的考察

2022年9月、同志社大学のアメフト部4人が、バーで声をかけた女性を連れ込んで性的暴行を働き、逮捕されるというショッキングな事件が起こりました。
同志社大アメフト部の逮捕の4人「バーで声かけた女子大学生に酒飲ませ…性的暴行」か

「大学」という一見平和な空間の中でも、犯罪が発生することはもちろんあります。
いや、中学高校等と違い、外の一般の人がある程度自由に出入りできてしまうことや、社会的に未熟な「学生」を主として構成されていることから、一般社会よりも犯罪等の事件は起きやすいのかもしれません。それは、学生達が「被害者」としても「加害者」としても、です。

大学内でどのような犯罪が起きやすいかを挙げた上、大学内で起きた犯罪ならではの、
学生が被害者となった場合の大学の責任としての安全配慮義務、
学生が加害者になった場合の退学等の懲戒処分問題、
といった特殊な問題を解説します。

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中央大学のインハウスロイヤー「法実務カウンセル」として、学校法人中央大学に起こる法律問題一切を担当している弁護士の櫻井俊宏が解説します。

1 わいせつ犯罪の他に大学内ではどのような犯罪が起きる?

わいせつ犯罪の他に大学内ではどのような犯罪が起きる?

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事務員

本件のようなわいせつ犯罪以外に、大学内ではどのような犯罪が起きやすいのでしょうか?

まず、大学内では、外部と隔離された安全な空間だと思って、自分の物を教室等に置きっぱなしにしてしまうことが多いので、置き引き等の窃盗は非常に良く起こります(刑法235条。10年以下の懲役又は50万円以下の罰金。)。
狙いやすいと思って、大学内での置き引きを専門としている常習窃盗犯もいるぐらいです。部室に侵入しての窃盗も良く聞きます。
中学高校等は管理が教員等の管理や、生徒同士の相互チェックがあるので、そのようなことは比較的起こりにくいですが、大学も同じ気分でいてはいけません。自分の物はいつも手元に置くようにしましょう

また、若い女子学生が多いので、盗撮・痴漢等のわいせつ犯罪は当然多く発生します(迷惑防止条例。1年以下懲役又は100万円以下の罰金。)。これに対抗するため、大学内でも最近は監視カメラ等が増えています。
更に、痴漢等がエスカレートし、被害者の反抗を抑圧するような力をもってすると、強制わいせつ罪という比較的重い犯罪となります(刑法176条。6月以上10年以下の懲役。)。正に、今回報道されたアメフト部の件がそれでしたね。
これも起きにくくなるように、トイレ等が綺麗に改修された大学も増えています。
同じ理由から、交際の末に起こる、ストーカー規制法違反ももちろん多いです(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。
警察から「禁止命令」等が出ているのに更にストーカーを続けると、より重い刑が科されることになります。

まだ社会的に未熟な学生を狙って、内部の学生からも外部の者からも特殊詐欺を行う者達が隙をうかがっています(刑法246条。10年以下の懲役。)。SNS等で声をかけられてアフィリエイト詐欺等で狙われるケースが多いようなので、注意しましょう。
また、最近では、誘われて、1回関わってしまうと、その後に断ろうとしても、「じゃあお前は犯罪者として警察に捕まることになる。」と首謀者達に言われ、足抜けできなくなるということが多発しています。
これが更にひどい場合には、ご存じの方も多いでしょうが、連日報道されていた元大学ミスコンの子のように、強盗等もさせられて、社会復帰が不可能になってしまうので、よくよく気をつけるべき問題です。

若者同士だと、喧嘩がエスカレートして、暴行や傷害も発生しやすいです(「暴行」は刑法208条。2年以下の懲役又は30万円以下の罰金等。「傷害」は刑法204条。15年以下の懲役又は50万円以下の罰金。)。

珍しい犯罪の中で、特に多いのは、恋心等から他の学生の情報が気になり、大学特有のアカウント等について、他人のアカウントにパソコンからアクセスする「不正アクセス禁止法違反」があります(不正アクセス禁止法。3年以下の懲役又は100万円以下の罰金。)。

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櫻井弁護士

これまでに以上のような学校内の事件を担当しております。

2 大学内で学生が犯罪に遭うと学校の責任?|安全配慮義務

大学内で学生が犯罪に遭うと学校の責任? 安全配慮義務大学内で犯罪が起きて、学生が被害者になった場合は、大学の管理責任が考えられます。
これは、その被害学生が、所属している大学に対して在学契約に基づく「民事の損害賠償」を請求しうるかどうかという問題です。

しかし、学生が安全で健康に学生生活をおくることができるよう環境を整える義務(「安全配慮義務」といいます。)は偶発的な犯罪を防ぐような義務までは基本的には発生せず、これは大学に余程の落ち度がない限り成立しません。
学校においては、全学校内で犯罪が起こらないように常に目を行き届かせて配慮するというのは、かなり難しいことだからです。
特に、中学や高校と違い、学生の学内での生活まで管理することは基本的にはない大学という空間においては、安全配慮義務の成立は難しいと言えるでしょう。更に、課外活動外においては、大学所属の者同士であっても、より成立しにくいです。

このような管理責任が認められた裁判例として、大学ではないですが、高校において、休み時間中に男子生徒が鉄パイプをバット代わりにして野球のようなことをしていたところ、手からすっぽ抜けて女生徒に当たり、負傷させた事案で、学校が教室内で鉄パイプ等があるのを発見したときは、直ちに撤去等するとともに、日頃からこのような危険なことをしないよう指導する必要があったとして、安全配慮義務違反の損害賠償を認めた千葉地裁昭和63年12月19日裁判例があります。

更に、今回の同志社大学アメフト部のような、学外での行為については、通常、学校に安全配慮義務まではないと言えます。
アメフトの試合後、監督やコーチ等も一緒に酒を飲んで、その直後、勢いのついた学生達がこのような犯罪を犯したような、学校の活動と関連性が強い場合でない限りは、学校の安全配慮義務はないと認定されると思います。

3 学生が加害者の場合の停学・退学等懲戒処分の問題

学生が加害者の場合の停学・退学等懲戒処分の問題学生が犯罪の加害者となった場合は、戒告・停学・退学等の学生懲戒が検討されます。
その内容は、おのおのの大学の規程に明示されています。
なお、中学校・高校は義務教育なので、「停学」という処分はないのが通常です。大きな問題が起こった場合は、学校としては、注意にとどめるか、退学にもっていくかという、重さに差がある処分で対応するという難しい問題の解決を強いられます。

この点、刑事手続は、有罪となるまでは、無罪推定の原則(事実が真偽不明となった場合は無罪となること)なので、まだ国家の刑事手続上有罪となっていないのにも関わらず、例えば長期の停学等の懲戒を行うのは懲戒処分としては重いと言えます。

逆に、有罪となった場合は有期停学ぐらいで処分することは特に問題ありません。
有期停学の処分において、それが重いとして裁判上無効となった裁判例というのは、私が探した限りでは見つかりませんでした。

しかし、無期停学や退学の処分は、妥当でないときは裁判で無効となることもあります。
例として、無期停学処分が無効となった裁判例として、京都地裁平成23年7月15日裁判例があります。
このことから、1回の刑事問題で無期停学や退学処分等の重い処分にすることは、大学側としては慎重に検討しなければなりません。

また、懲戒の問題として、学生が4年生で問題を起こしたときに、卒業間近で、懲戒処分を時間的にできるかどうかが良く問題となります。
これについては、学生が卒業し「在学状態」にないにも関わらず、過去の在学状態にあったときのことについて懲戒処分をすることは基本的にできません。
これは、自主退学した場合も一緒です。そこで、このような場合は、急いで学内プロセスを経て懲戒処分をするしかありません。
逆にいうと、学生としては、「懲戒処分」という不名誉な状況で退学するよりは、自主退学してしまった方が良い場合もあるということになります。

4 学生同士の犯罪等があった場合の大学のアプローチ法

学生同士の犯罪等があった場合の大学のアプローチ法学生が他の学生に対し加害を加えた場合、被害学生の側は、往々にして、
大学が加害学生に対して賠償させるよう説得してください。
というように、大学に対して行動を求めてきます。

しかし、大学ができることはあくまで前述の懲戒処分が主です。
大学は、加害学生とも「在学契約」を結んでいるので、被害学生の代理としての動きをしてしまうことは、コンフリクト(利益相反。法的関係のある者の相手方の代理をしてしまうことによって,法的関係のある者の利益を損なってしまうので違法)となりかねません。
そこで、大学は過度に関わろうとしないべきです。せいぜい「今後このようなことを起こさない。」等の内容を記載した誓約書を提出するように加害者にうながすぐらいです。

このことから、被害に遭った学生は、加害者に懲戒が課されることを超えて、自らの権利を回復するためには、自分から民事の損害賠償交渉をする等、動かなくてはならないことを認識して行動する必要があります。

なお、外部の者に犯罪をされた場合は、加害者が内部学生である場合と違って、大学が警察に働きかけてくれる場合もあります。
ただ、大学には「大学の自治」という憲法23条が制度的に保障しているものがあります。
このことから、大学は大学の自治を維持するため、これまでに大学の自治を脅かしてきた警察組織を頼ることには多少の抵抗感がある傾向もあることは頭に入れておくと良いでしょう。
大学の自治が問題となった最高裁判例として、参考までに、東大ポポロ事件があります。

5 まとめ

大学内で起きた犯罪は、大学という特殊な空間での事件であるがゆえに、一般の犯罪とは違った考慮要素がいろいろあります。
万が一そのようなことに巻き込まれたときは、その要素を意識して行動していくことが大切になります。

大学内で犯罪に遭った場合の賠償請求、大学在学中に犯罪をしてしまった方の弁護活動等、もし弁護士の助力が必要になった場合には、学校法務に詳しい、私達の弁護士法人アズバーズにお問い合わせください。
【2024.2.11記事内容更新】

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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