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実際に遂行している事案で、市議会議員とその親族である不動産業者が他人の相続に入り込んできているとんでもない事案があります。
依頼者の方の了承を得て、この事案について、実際の事案を少し修正してご説明します。
中央大学の法務全般を担当している中央大学法実務カウンセル(インハウスロイヤー)であり、千代田区・青梅市の弁護士法人アズバーズ、代表弁護士の櫻井俊宏が解説します。
1 事案の内容
「どうせ諸経費を支払うことになったらマイナスになるのだから、相続放棄してAに譲ってください。」
私は、行政書士Bと〇〇不動産からのしつこい電話に困惑していました。
私がこのようになった経緯を説明します。
今年の春、叔母さんが亡くなりました。叔母さんの夫は先に亡くなっており、子供もいません。
そこで、私と、私ががほとんど会っていないおじの兄弟の子供、つまり私のいとこであるAが相続人になるそうです。
Aと私は、相続上、立場は同じですから、私は、相続について公平に分けてもらおうと思っていました。マンションの一室がある他、相続財産があるそうです。
ある日、私のもとに、Aの行政書士を名乗るBという男から電話が来ました。
Bは「Aは、〇〇不動産に頼んでマンションをリフォームするつもりです。マンションはリフォームをしないと300万円ぐらいの価値しかないから、マンションリフォーム代と、マンションの立替管理費を引くと、かえってあなたにはマイナスです。」と言ってきました。
私は、この行政書士がどういう立場で電話しているのかもよくわかりませんし、リフォーム等のことも良くわからないので困惑しました。
「なので、相続を放棄した方がよいですよ。」
とBはいうのです。
どうもBは市議会議員であり、〇〇不動産の社長と親族みたいです。
Bはその後も、私に「特別受益の承諾書」という良くわからない書面を私に書くように迫ってきました。
それ以降も、Bと〇〇不動産から執拗に良くわからない電話がかかってきたり、手紙が送られたりするので、私は困って弁護士に相談にきました。
「Aのマンションの2分の1の持分は、既に〇〇不動産に売られてしまってますね。」
弁護士は言いました。
私はびっくりしました。マンションの持分半分だけでも売れることにびっくりしましたし、他の相続財産はどうなったのかと思いました。Aか誰かが隠してしまったのでしょうか。
いずれにしろ、私だけでは手に負えないので、弁護士に代理を依頼しました。
Aとの相続の件と、〇〇不動産との間では、私と〇〇不動産が2分の1ずつ所有している本件マンションの持分をどちらかが買い取るという交渉です。2分の1ずつの「共有」という状態では価値がないからです。
しかし、弁護士が〇〇不動産に書面を送ると、「私達が2分の1の持分を売る場合は700万円で売ります。私達が2分の1の持分を買い取る場合は200万円で買い取ります。」という返信が来たそうです。
話になりません。
こちらが持分を持っている場合、他の持分を持っている〇〇不動産に対し、共有物分割請求という訴訟を提起できるとのことです。
この事案について、
①相続財産と共有
②非弁行為とは
③共有物分割請求訴訟とは
ということについて、ご説明したいと思います。
2 相続財産と不動産の共有
相続が起こった際、相続人が複数いるときは、相続財産である不動産は「共有」という状態になります。そこで、通常、「遺産分割協議」という話し合いで、どのように相続財産を分けるか決めなくてはならないのです。
共有という状態は、不動産を真っ二つに分けて所有するということでなく、その不動産全体に共有者いずれもある程度の権利が及んでいる状態です。
例えば2分の1の持分を持っているときは、事例のように、他の共有者の同意がなくても持分を売ることができます(持分譲渡自由の原則)。
しかし、2分の1を超える持分を持っていないと貸すことはできません(共有物の管理。民法252条)。
また、大規模なリフォーム等は他の全ての共有者の同意を得なくてはできません(民法251条)。
本件でも、2分の1の持分を他人に売ることはできますが、大規模なリフォームをするには同意を得る必要があります。
なお、共有物件のようないわくつきの物件を専門に買い取る不動産業者もあります。そのような難しい物件の問題を解決することによって利益をあげようとしているのでしょう。
3 非弁行為とは?
弁護士以外の者が、報酬をもらって誰かの代理をすることは「非弁行為」という犯罪になります(弁護士法72条)。
本件でも、行政書士であり市議会議員であるBが、Aから報酬をもらっているようであれば犯罪が成立する可能性があります。
2年以下の懲役又は300万円以下の罰金という重い犯罪です。
4 共有物分割請求訴訟とは
不動産を共有で持っていて、共有者同士でどのように分けるか協議で決まらない場合は、裁判所に共有物分割請求という訴訟を提起することができます。
この訴訟においては、例えば訴訟を提起したAが「~円で買い取りたい。」という内容で提起することもできるし、裁判所で競売をしてもらいたいという内容で提起することもできます。競売とは裁判所が主導となっていわゆるオークションをする手続で(民事執行法)、通常1年以上かかります。
また、裁判所に完全に判断を委ねるということも可能です。
そのような中、裁判所が各事実関係を総合して、柔軟に結論を出してくれます。
裁判手続が進む中で両者の意見が合致するときは、その結論で和解をすることもできます。
なお、競売となる場合には、判決文を使って、また別途競売の申立手続を行う必要があります。
5 まとめ
本件では、その後、共有物分割請求訴訟を提起したのですが、その後、〇〇不動産は、訴訟提起より前に市議会議員Bの経営する「社会福祉法人」に寄付した旨の登記をしました。
こちらは、「訴訟承継」という、相手が被告としての地位を引き継ぐ申立てをし、認められました。
そして、社会福祉法人を被告とした訴訟の中で、相手の市議会議員B(社会福祉法人)も観念して、マンションの2分の1相当の金額でこちらの持分を買い取るということで裁判上の和解が成立しました。
相続の問題は、最もお金が動く手続の一つであり、入り込んでこようとする不動産屋や各士業、ブローカー等の第三者も非常に多いです。本件では市議会議員まで入り込んできています。
相続がこじれているところに第三者が入り込んでくると、ますますややこしいことになるので、注意が必要です。
やはり相続の問題においては、事前に遺言を作っておくことが一番重要です。
認知症になった後では遺言の効力がないこともあるので、簡易なものでも良いから早いうちに作成しておくべきでしょう。
【2022.8.9記事内容更新】