不当要求は、個人や企業に対して法的に不当な請求や要求を行う行為を指します。
このような要求は、日常生活からビジネスの場面までさまざまな状況で発生し得ます。特に、企業や組織に対して不正な金銭の要求や過剰なクレームが押し付けられることが多く、それが脅迫や威圧を伴う場合もあります。

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櫻井弁護士

日本の景気は、円安の影響等から著しい陰りが見えており、個々の国民の生活も圧迫されていることから、このような要求を行う者が増えているようにも思えます。こうした不当要求に直面したときには、冷静かつ適切に対応することが重要であり、その過程では弁護士の役割が非常に大きいものとなります。

本記事では、

・不当要求とは?その内容と種類
・クレーマー等による不当要求に対する基本的な対応法
・不当要求に対する弁護士の役割

を解説します。

1.  不当要求とは?その内容と種類

不当要求とは?その内容と種類

不当要求とは、一般的に正当な権利や契約に基づかない、法的に根拠のない要求のことを指します。
不当要求は、個人に対しても企業に対しても行われることがあります。たとえば、個人が過去の小さなトラブルを大げさに主張し、過剰な賠償を求める場合や、企業が顧客や取引先に対して誤った請求を行い、支払いを強要するケースが挙げられます。

個人においては、トラブルをチャンスと考え、過大な利益を得ようとする場合は多いでしょう。交通事故の被害による不当要求等はその典型です。軽いむちうちで1年以上も通院して、通院慰謝料を得ようとしたり、ちょっと車の塗装がはげたことで全塗装の塗り替えを要求してきます。

企業においては、悪質なクレーマーや反社会的勢力による不当要求が大きな問題となることがあり、金銭的な被害だけでなく、企業の信用にも深刻なダメージを与える可能性があります。このような不当要求に対処するためには、慎重な対応が必要です。

不当要求にはさまざまな形態がありますが、主なものとして以下のような例が挙げられます。

金銭的な不当要求

 これは、正当な理由なく金銭を要求するケースです。例えば、先程の交通事故の話のように、トラブルがあった際に、そのトラブルを実際よりも過大に主張し、過剰な賠償や慰謝料を請求する場合があります。また、企業が顧客や取引先に対して、何らかの理由をつけて不正な支払いを求める場合も、金銭的な不当要求の一種です。

サービスや商品の過剰な要求

不当要求は、金銭だけでなく、サービスや商品の提供に対しても行われることがあります。例えば、顧客がサービスに対して不満を持ち、それを理由に本来の契約内容を超えた対応や返金を要求するケースです。過剰なクレームを通じて利益を得ようとする顧客も存在します。
しかし、この系統の不当要求は、トラブルに乗じようという故意的なケースよりも、不当要求者本人の理解が足りないことによって、自分がどの程度まで法的な要求を行うことができるかを把握できず、過剰なクレームを続ける場合が多いように感じます。

このような典型的なクレーマーの対応法については、下記の記事を御覧ください。
【カスハラ・モンスターペアレントの撃退法の記事】
カスハラ・モンスターペアレントの撃退法 電話は録音し早めに切ってかけ直さない!【弁護士が解説】

威圧や脅迫を伴う不当要求

不当要求の中でも特に深刻なのが、威圧や脅迫を伴うケースです。反社会的勢力や不正な手段を使う者が、恐怖心を与えて要求を飲ませようとすることがあります。企業や個人がこれに応じてしまうと、加害者を増長させる結果となって更なる要求が続く場合もあり、また要求に応じてしまうことによって、これらの反社会的勢力らとの癒着の事実を疑われるケースもあり、さらなる被害を招く恐れがあります。

2. クレーマー等による不当要求に対する基本的な対応法

不当要求に対する基本的な対応法

不当要求に対しては、冷静かつ慎重に対応することが最も重要です。相手の感情や威圧に応じて感情的に反応してしまうと、状況がさらに悪化する恐れがあります。
ここでは、不当要求に対処する際の基本的な対応法について説明します。

感情的にならず落としどころを見極め冷静に対処する

不当要求に直面したとき、感情的にならず冷静に対処することが重要です。不当要求を行う側は、相手が動揺したり、恐怖を感じたりすることで要求を飲ませようとするため、相手のペースに巻き込まれないようにする必要があります。
どの程度譲歩するべきか等、法的な落としどころを見極め、冷静に対応することで、相手に付け入る隙を与えず、交渉を有利に進めることができます。

メールや録音等、記録を残す

不当要求が行われた場合、やり取りの内容を記録に残すことが非常に重要です。電話でのやり取りであれば、録音するか、会話の内容をメモに残すようにしましょう。また、メールや書面でのやり取りもすべて保存しておくことが推奨されます。これにより、後々の法的手続きに備えることができます。

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櫻井弁護士

秘密で行われた録音も、民事の裁判等で証拠能力があるので、相手方に録音をしていることを伝えなくても大丈夫です。録音をしていることを伝えた方が威迫的なことを言わなくなることもあるので、被害側のメンタルを保つために、あえて録音していることを伝えるのも有効です。

直接的な対応は避ける

特に脅迫や威圧を伴う不当要求に対しては、個人や企業が直接対応するのは避けた方が良い場合があります。このような不当要求をする者は、責任を認めることを強引に言わせようとする等、対応することも難しい場合が多いです。
相手との交渉や対応を専門家に任せることで、冷静かつ適切な解決を図ることができます。これは、感情的な対応を避けるためにも有効です。

法的措置の準備

不当要求が続く場合や、相手が悪質であると判断される場合には、法的措置を検討することが必要です。警察や弁護士に相談し、適切な対応を取ることで、相手の不当要求を止めることができます。また、必要に応じて不当請求や脅迫に対する損害賠償請求などの民事訴訟を起こすことも考えられます。

一方、不当要求に対する最も効果的な対策は、事前の予防策です。特に企業においては、日常業務の中で不当要求が発生しないように、下記のルール作成や研修等、対策を講じることが必要です。

ルールの明確化

企業では、顧客や取引先との契約内容やサービスの利用規約を明確にし、曖昧な部分をなくすことが重要です。これにより、正当な要求と不当要求の区別が明確になり、トラブルを未然に防ぐことができます。
また、従業員に対しても、不当要求が発生した際の対応ルールを明確に指導することが必要です。対応マニュアル等を用意するべきです。

外部専門家との連携

不当要求が発生した際に迅速に対応できるよう、弁護士や危機管理の専門家と連携しておくことが推奨されます。これにより、万が一のトラブルが発生した場合にも、早期に対応を開始することができます。

定期的なリスクマネジメント

企業は、定期的にリスクマネジメントの見直しを行い、不当要求に対する防止策を強化することが大切です。これには、従業員の研修等による教育や外部の専門家によるコンサルティングを活用することが含まれます。

3. 不当要求に対する弁護士の役割

不当要求に対する弁護士の役割

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櫻井弁護士

不当要求に直面した際、弁護士に相談することは非常に効果的です。弁護士は法律の専門家として、冷静かつ適切なアドバイスを提供し、法的手続きに関するサポートを行います。


不当要求が特に悪質である場合や、相手が反社会的勢力である場合など、個人や企業が直接対応するのはリスクが高いため、弁護士の助けを借りることでトラブルを未然に防ぐことができます。

法律的な助言

弁護士は、不当要求が法的にどういった立場にあるかを分析し、適切な対応方法を助言します。これにより、企業や個人が法的に有利な立場を維持しながら問題に対処することができます。
たとえば、相手が違法な要求を行っている場合、「それは脅迫にあたると思うのですが。」というように、その違法性を指摘し、相手に対して警告することも可能です。

交渉の代理

弁護士は、相手との交渉を代理することができます。不当要求を受けた場合、直接交渉することは心理的な負担となり、感情的なトラブルに発展する恐れがあります。弁護士が代理で交渉にあたることで、冷静かつ法的に正しい方法で解決を図ることが可能です。弁護士が介入することで、相手もより慎重な対応を取ることが期待されます。
代理人となることができるのは、司法書士や行政書士ではできず、弁護士のみです。
明らかな不当要求の場合は、弁護士が間に入っただけで、それ以上不当な要求をすると自分に犯罪が成立してしまうことを危惧する等して、要求の連絡が一切なくなることも少なくありません。

訴訟手続きのサポート

不当要求がエスカレートし、法的手段が必要となった場合、弁護士は訴訟手続きをサポートします。
弁護士は、訴訟に必要な証拠の収集や、法廷での代理を行い、最終的な解決に向けて法的手続きを進めます。特に、企業が不当要求によって損害を被った場合、損害賠償請求を行うことも可能です。

反社会的勢力との関わりを防ぐ

反社会的勢力による不当要求は、特に危険であり、個人や企業が直接対応することは避けるべきです。反社会的勢力は、法を無視して威圧的な手段を用いることが多いため、弁護士を通じて対応することで、トラブルが深刻化するのを防ぐことができます。反社会的勢力との関わりを避けるために、弁護士が窓口となって交渉や対応を行うことは非常に重要です。

4. まとめ

不当要求に対して適切に対応することは、個人や企業にとって非常に重要です。
冷静な対応、記録の保存、専門家の活用が基本となり、特に悪質なケースでは弁護士の助けを借りることが推奨されます。

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櫻井弁護士

弁護士は法律的な助言、交渉の代理、訴訟手続きのサポートなどを行い、問題解決に向けた強力な支援を提供します。また、不当要求の発生を未然に防ぐための防止策も併せて講じることで、トラブルのリスクを最小限に抑えることができます。

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