【マコなり社長】リストラ社員と炎上系YouTuberらに犯罪等は発生する!?【弁護士が解説】

最新時事問題の法的考察

あのビジネス系YouTuberの走りでもある、100万人登録者以上「マコなり社長」が炎上しているそうです。

なんでも、マコなり社長が経営する「株式会社div」が経営難であるそうであり、そこで大量解雇をしなくてはならず、その際の社員に向けたスピーチの内容が問題となっているそうです。
そのスピーチの内容については他の動画で見てもらえばと思いますが、法律的に問題なのは、この動画が、div社の元社員から流出し、第三者のYouTuberがその動画をアップしながら批判を加えていることです。

①div社の元社員に賠償責任は生じないのか
②流出した動画をアップした第三者に責任は生じないのか
③div社の会社価値等が低下した場合に、その損害につきdivやその株主から賠償請求されることはないのか

等についてお話します。

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櫻井弁護士

中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、
新宿・青梅の「弁護士法人アズバーズ」代表、
弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

1 div社の元社員に賠償責任は生じないのか?

この問題の内容、私は正直びっくりしています。ビジネス型YouTuberは、新しいタイプのYouTuberとして、2019年~2020年は、「ファーストペンギン」の先行者利益で、凄まじい広告費をもらっていたとのことでした。

聞いたところでは月100万円や200万円はザラで、人によっては1000万円近いようでした。

しかし、昨年のコロナ禍で、広告費はまず削られる経費として、You Tube広告は大きく減少していたようです。

そして、今年に入り、マナブさんはYou Tubeを離脱し(最近は音声メディアVoicyで頑張っていらっしゃいます。)、イケハヤさんもYou Tubeを離脱しかかっていたところ仮想通貨TITANに関する件で炎上し(「イケハヤ 仮想通貨」で検索してみてください。)、ビジネス系YouTuberも全体的に下火になっていました。
そうであるにも関わらず、マコなり社長は依然You Tube動画をアップし続けていてすごいな、と思っていた矢先のことだったからです。

それはともかく、情報を流出したdiv社の元社員は、もちろん民事上の賠償責任を負うことになるでしょう。
会社内の社長のスピーチは言うまでもなく会社の機密情報であり、それを流出することは雇用契約(民法627条~)に違反することから、債務不履行(民法415条)になりえます。これは、既に会社を辞めた後の元社員でも変わりません。

ことによっては、背任罪(刑法247条。他人のために事務を処理するものが、委託信任関係に背いて、図利加害目的で、任務違背行為をし、相手に財産上の損害を加える犯罪)にあたる場合もありうると思います。
ただ、財産上の損害が生じたというところが一番難しいかもしれません。株価低下等が理由になるのでしょうか。

2 流出した動画をアップしたYouTuber達に責任は生じないか?

これも、名誉毀損的な行為なので、民事上の不法行為(民法709条)として、損害賠償を請求される可能性はあると思います。
これは、div社が経営難に陥っていることが真実であるとしても、それによって賠償責任が生じないということにはなりません。

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櫻井弁護士

この不法行為責任は、通常は慰謝料であり、せいぜい数十万円ぐらいになるのではないでしょうか。マコなり社長が信用を失ったことについての損害等を請求するのはなかなか難しいように思います。

また、他人の動画を許可なく公にさらすことは、「肖像権」を侵害する恐れもあるように思います。これも不法行為の対象になりえます。

You Tubeの表現の仕方によっては、もちろん名誉毀損罪が成立することもあるでしょう。

3 div社の会社価値が低下した場合に、その損害につきdiv社やその株主から損害賠償請求されることはないのか

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事務員

YouTube動画のせいでdiv社の会社としての価値が下がった場合、div社から損害賠償請求されることはありえますか?

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櫻井弁護士

これについては、その元社員やYouTuberの動画アップと、損害の因果関係が認められるような関係性があれば、債務不履行や不法行為により責任を負うことがあります。

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事務員

なるほど。この件おそらく株価にも影響してますよね。株主からの賠償請求はどうでしょうか?

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櫻井弁護士

株主から、会社への賠償請求は、株主代表訴訟という制度としての責任追及が認められています。
しかし、第三者に対しての請求はそのような特別な法制度はなく、第三者の行為で株価が下がりそれによって株主が損害を受けたということに関して因果関係が認められるのは、より簡単ではないでしょう。よっぽどしっかりした主張と証拠が求められます。

まとめ

本件では大量リストラや退職勧奨が行われたということなので、元社員の方が法的に攻めるのであれば、その解雇の無効等を労働法的に主張するべきでしょう。

今回、マコなり社長についての動画をアップしているYouTuber達は、最近、メンタリストDaiGoさん等を中心に「名誉毀損訴訟」等が見直されていて頻発していることも考慮し、もうちょっと慎重にされた方が良いのではないかと思います。

そのような訴訟を積極的に手掛ける弁護士も増えてきているので。

このdiv社の件、マコなり社長側はどのように対応するのでしょうか。少なくとも、争うための潤沢な資金を持つ支援者がいるように思いますが。
今後の動向に注目です。

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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