事実婚の増加とその理由 手続やその証明は?財産分与や相続等はあるの?

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 先日、有名ブロガーの事実婚解消のニュースが話題となりましたが、家族のかたちが多様化した現在、若年層だけではなく中高年からも事実婚を容認する声が上がっています。事実婚をするにしてもやめるにしても、後悔はしたくないものです。
 本記事ではまず「事実婚の定義やその内容」を確認した上で、事実婚を選択する場合の

手続・証明方法
子ども
相続

 そして、事実婚を解消する場合の

解消方法・財産分与
慰謝料請求
別居期間

について解説していきます。

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櫻井弁護士

学校法人中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、新宿・青梅の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。


1 事実婚とは


事実婚とは、婚姻届けを出さずにお互いが婚姻の意思をもって生計を共にしている関係をいいます。

事実婚の背景には夫婦別姓の実践や家意識への抵抗、戸籍制度で管理されることへの疑問等、様々な事情がありますが、当事者が主体的に婚姻届けを出さない点に特徴があります。

(1)「内縁」「同棲」「別居婚」との違い

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事実婚とよく似たものに内縁・同棲・別居婚があります。法律上明確な区分はありませんが、一般的には以下のように理解されています。


  内容 事実婚との違い
内縁 夫婦としての実質をもちながらも、婚姻の届出がないため法律上の夫婦と認められない関係 婚姻届けを出したくても出せない事情がある
同棲 婚姻関係にない男女が一緒に暮らすこと 婚姻の意思がない
別居婚 婚姻届けを出し法律上の夫婦となるも、同居しない状態 ・婚姻届けを出している
・別々に暮らしている

(2)事実婚は自己決定権(憲法13条)の行使

 本来個人には他人に害を及ぼさない事柄については自分で判断し、自らの責任において行動できるという自己決定権があり、これは憲法13条で保障されています。どのような家族を形成して家庭生活を送るかも自己決定権の一つであり、事実婚という選択も然りです。かりに事実婚を選んだことで著しい経済的不利益を受けたり道徳的に闘わなくてはならなかったりすると、自己決定権を保障した意味がなくなります。
 そこで事実婚などの生活形態が望ましいかどうかの評価とは離れて、国家は家庭生活の実体に即した法的処理や生活保障を行うべきで、事実婚の場合は内縁と同様の法的保護が与えられます

2 法的保護の内容


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内縁と同様の共同生活関係のある事実婚では、内縁に準じて以下の法的保護が及ぶのが原則です。


(1)関係解消時の財産分与

 財産分与とは、離婚した夫婦の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。夫婦の協力によって形成された財産は、たとえいずれか一方の名義になっていても、財産分与の対象となります。

事実婚でも関係を解消する際には、双方が協力し合って築いた財産について財産分与に関する民法763条が類推適用されます。

(2)不当破棄の損害賠償

 事実婚でも当事者には婚姻の意思がある以上、婚姻関係上の義務、すなわち同居・協力・扶助(752条類推)、そして貞操義務が認められますこれらの義務を一方的に破棄し相手の信頼や利益を害する場合には、慰謝料等の損害賠償請求権(709条、710条類推)ができます

(3)事故死の損害賠償

 第三者による不法行為によって生命を侵害された場合は、事実婚のパートナーはその第三者に対して、近親者に準じる立場から損害賠償請求をすることができます(711条類推)

(4)社会保障上の権利

 事実婚においても一方が他方を扶養する場合があります。事実婚では社会保険上の権利が認められており、健康保険の被扶養者になったり、国民年金の第三号被保険者になったりすることが可能です。また遺族年金を受け取ることもできます。

これに対して、税法上の配偶者控除を受けることはできません

3 後悔しない事実婚


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法律婚を原則(739条)とする我が国で、あえて婚姻届けを出さずに事実婚を選ぶのであれば、そのメリット・デメリットをしっかりと理解する必要があります。

(1)事実婚には主体性と実体が不可欠

 事実婚が成立するには、2人の間に婚姻意思という「主観」と共同生活の事実という「客観」があることが必要です。
 事実婚における婚姻意思とは、社会生活上夫婦と認められる関係を作ろうとする意思のことです。単なる「同棲」の延長ではなく、夫婦として生活を共にするという意識が必要なのです。
 そして2(3)のような一定の法的保護が認められているのは、夫婦としての内実があり、社会からも夫婦と認識されているからです。したがって当事者の主観だけではなく、夫婦としての客観も必要です。

(2)事実婚の証明手続き

客観を示す代表例が婚姻届けですが、これを利用しない事実婚では何らかの方法で自分たちの婚姻意思を表明しなければなりません。そこで婚姻届けに代わる公的な証明方法には以下のものがあります。

〇住民票記載

同居を始めるにあたって、住民票を同一にする方法があります。予め事実婚であることを申出た上で、住民票には1人を世帯主として続柄欄にはもう1人を「夫(未届)」又は「妻(未届)」と記載してもらいます。

〇事実婚契約書を作成、公正証書にしておく

夫婦の関係性や生計について話し合ってその内容を契約書とし作成し、これを公正証書として残す方法もあります。公正証書とは、公証人という公的資格を持つ専門家が個人の権利義務について作成する書面で、公文書として強い証明力が認められます。

〇パートナーシップ制度

 異性間であれば、あえて法律婚を回避し事実婚を選択することに合理性を見出すことができますが、同性同士のカップルではそもそも婚姻届けが出せません(憲法24条1項)。そこで多くの自治体で導入されているのがパートナーシップ制度です。必要書類を揃えて役所に申請し、審査が通れば各自治体から証明書が交付されます
 なお、千葉市では異性カップルも利用することができ「パートナーシップ証明書=同性愛者」という一括りにしない取り組みが行われています。

4 事実婚の限界


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ここまで家族の多様化を背景に法は価値中立的に事実婚を保護している旨説明してきましたが、法律婚と全く同じに扱われるわけではありません。とくに問題となるのが子どもと相続です。

(1)子ども

事実婚の夫婦に生まれた子どもは、父が認知しない限り母の単独親権となります。つまり法律上、父は親権をもたないのです。子は父を相続しませんし、事実婚解消時には養育費をめぐるトラブルの原因にもなります。

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よって事実婚夫婦は父親による子どもの認知を確実に行いたいところです。


(2)相続

事実婚夫婦は法律上の家族ではないため、夫婦の一方が亡くなっても、その財産を他方が相続しないのが原則です。
 例外的に、法定相続人がいない場合(全員が相続放棄をした場合も含む)であって、故人と特別な関係があった者(特別縁故者)が遺産の全部又は一部を受け取ることができる場合があります(958条の3)。もっともこの手続きは複数の裁判手続きを経る必要があり、しかも必ず自分が特別縁故者と認められるという保障もありません。
 そこでパートナーに財産を確実に遺すには、遺言書の作成や生前贈与、家族信託を適宜活用する必要があります。弁護士等の専門家からアドバイスを受けつつ、夫婦の関係性や財産の内容に応じた相続対策をしておくべきでしょう。

5 後悔しない事実婚の解消


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法律婚とは似て非なる事実婚ですが、解消する場合も法律婚とは異なる特徴があります。

(1)事実婚の解消方法

 法律婚における離婚意思とは「離婚届を出す」意思で足りるとするのが判例の立場です。事実婚は戸籍管理されていないため特別な方式は不要で、同居状態を解消させることで足ります住民票を公的証明書代わりとしていたのであれば転居届を出せば済みます。

(2)内縁関係調整調停

  法律婚の協議離婚では共同生活を解消する意思までは不要と考えられており、事実婚でも関係解消を双方が納得していることまでは要求されません。しかし一方的な関係破棄は相手の利益を害するため慰謝料請求の根拠になり、衝突が続く場合は子どもや次のステップに悪影響を及ぼしかねません。
 そこで事実婚を解消するかどうか、するのであればその条件等、家庭裁判所が話合いの橋渡しをしてくれる調停を利用するとよいでしょう

(3)不倫慰謝料請求するには事実婚の証明が必要

 事実婚にも貞操義務があり、一方がこれを守らずパートナー以外と不貞行為に及んだ場合には、他方は両当事者に慰謝料請求することができます。

ただしパートナーからは「事実婚ではない」、浮気相手から「事実婚とは知らなった」と反論されることが予想されます。それに備えて事実婚であることの証拠を数多く揃える必要があるでしょう。証拠となり得るものには、上記の住民票や公正証書以外にも以下のようなものがあります。

〇事実婚の証拠となるもの

続柄欄に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載された賃貸借契約書
妻(夫)が被扶養者になっている健康保険証
妻(夫)を被扶養者としてカウントしている給与明細
結婚式場の証明書、披露宴等の実施を証する書類
連名の郵便物
公共料⾦の領収書
⽣命保険の保険証
知人の結婚式等に出席した時の写真
墓石に名を並べて刻んでいる
周囲の人の証言 など

〇慰謝料の相場

  法律婚と同等で、100~300万円が相場です。ただし事実婚ではいつ破綻したのかが判然としないことが多くあります。最後に別居との関係を判例で見てみましょう。

(4)事実婚と別居

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事実婚夫婦が別居後、関係解消に伴う慰謝料請求に関する判例を2件紹介します。

〇東京地判H17.11.24

・6年間同居し内縁関係を続けていた
・その間長女をもうけ、夫もこれを認知
・関係悪化後夫は家に戻らなくなるも、時折訪問し連絡は取れていた
・夫は別居後3年近く養育費や家賃を支払っていたが、その後は支払わず連絡も途絶えた
・連絡を絶った原因は夫の女性関係の疑い
・別居期間は4年間

妻側からの慰謝料請求(300万円)が認められた

〇最判H16.11.18

・別居しながらも16年間パートナー関係を続け、その間2人の子どもをもうけた
・両者は生計も別、共有財産もなく、子育ての協力関係もなし、関係存続の合意もない
・男性側が別の相手と結婚するために一方的に関係を解消

女性側からの慰謝料請求は認められなかった

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事実婚についてのご質問ご相談は当事務所までお気軽にお問い合わせ下さい。


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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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