「不用品無料回収」「追加費用なしの定額パック」を謳うチラシを一度は見たことがあるかと思います。要らない物を処分するのにお金はかけたくないと誰もが考えるところですが、思わぬ落とし穴が隠れていることがあるのです。

 本記事では、まず

不用品の処分にかかるコスト

について説明します。

そして、

違法業者の見分け方
トラブルにあったときの対応

についても解説していきます。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-01-460x460.jpg
櫻井弁護士

学校法人中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、千代田区・青梅市の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

1 不用品をゴミとして出すのに「無料」はない

 ゴミである不用品には大型家電、小型家電、粗大ゴミ、家庭系ゴミの4種類が考えられます。

(1)大型家電

エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機・衣類乾燥機の大型家電を処分する個人に対して、特定家庭用機器再商品化法(以下、家電リサイクル法といいます)はリサイクル料金と収集運搬料金を課しています(11、12、19条)。

同法は排出者、小売業者、製造業者等、国、市町村等が協力し合ってリサイクルを押し進めていくことを基本理念とし、排出者である消費者にも費用の負担を求めているのです。

(2)小型家電

大型家電以外の家電(パソコン、スマホ、ゲーム機等)も『使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律』に基づいてリサイクルの対象とされています。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-01-460x460.jpg
櫻井弁護士

こちらは鉄やアルミ、金といった有用な金属を資源として再利用することを目的としています。

またエアコンや電子レンジ、リチウムイオン電池使用機器については『資源有効利用促進法』によってリサイクルの対象とされています。

いずれもリサイクルそのものに料金はかかりませんが、「受益者負担の原則」から手数料という形で消費者自身は料金を支払う必要があります(地方自治法227条)

(3)粗大ゴミ

家具や自転車のような一定以上の大きさのゴミについては『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』(以下、廃棄物処理法といいます)によって規制されています。

こちらも地方自治法227条により粗大ゴミを出す個人が手数料を負担しなければなりません。

(4)家庭系のゴミ

家庭から出るゴミは廃棄物処理法における「一般廃棄物」(2条2項)に分類されます。決まった日時に屋外に出しておけば自治体のゴミ回収車が収集運搬していき、一定量内のゴミであればその都度手数料を支払うことはありません。

もっともその費用は我々が納める住民税から賄われており、決して無料ではないのです。

2 違法業者をめぐるトラブル

不用品回収業者をめぐるトラブルには、料金に関するものと無許可業者による不法投棄によるものがあります。

①「無料」のはずが料金を請求された

消費者センターに寄せられた相談には、トラックで「無料」とアナウンスしながら巡回中の業者を呼び止め、無料であることを確認して廃品回収を依頼したところ、不用品を荷台に積み終えたとたんに6万円を請求されたという事例や、「定額不用品回収」という告知に対して2万円の定額パックを申し込んだところ、積み込み後に60万円を請求されたという事例もあります。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-03-460x460.jpg
櫻井弁護士

いずれも「回収代金は無料だが、積み込み料金は発生する」「別途処分料がかかる」「不用品が重い」等の巧みな言い回しがされており、その時点で不用品は積載済み、いまさら戻せないという状況を作り出して依頼者を困惑に陥れているのが特徴です。

②不法投棄の加担

無許可業者が上記運搬料等を得た後、回収した不用品を不法投棄するケースが後を絶ちません。有害物質による環境汚染や不適正な管理による火災などが大きな社会問題となっています。

捨てた違法業者が責任を負うのは当然ですが、その業者を突き止めることができなければ、処分を依頼した持ち主が責任を負う事態もあり得るのです(廃棄物処理法16条)。刑罰は5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、又はこれらの併科(同法25条14号)と、かなり重いものとなっています。

3 「怪しい?」違法業者の見分け方

不要になった家電や家具等はフリマやネットオークション等を利用して引取手を探す、リサイクルショップで買取ってもらうなどして、消費者自身も有効活用を目指す努力が必要です。

さらに買替えであれば購入店に、引越しであれば引越し業者に引き取ってもらうこともできます。それでもなお処分できない不用品は自治体や不用品回収業者に頼むことになります。

各種「許可」を持つ業者を選ぶ

消費者の不知・不注意につけ込んだ高額請求や無責任な投棄をするといった違法業者を見分けるには、各種廃棄物の取扱い許可の有無を確認することが重要です。

①一般廃棄物処理業許可

家電や粗大ゴミも含めて家庭から出る廃棄物は一般廃棄物にあたり、これを回収できるのは「一般」廃棄物収集運搬許可を持つ者だけです(廃棄物処理法7条)

家庭廃棄物は基本的には各自治体が責任をもって回収にあたるため、民間業者がこの許可をとることは非常にハードルが高く、新規参入を一切認めない自治体も多く存在します。

つまり許可業者はごく限られており、トラックによる巡回やチラシ・ネット広告等で営業を行っている業者は「一般」の許可を得ていないものと考えて間違いないでしょう。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-03-460x460.jpg
櫻井弁護士

許可の有無は各自治体の一般廃棄物処理業者の一覧で確認することができます。

例)新宿区一般廃棄物処理業の許可業者一覧

②古物商許可

上記1では家庭ゴミを処分するにはお金がかかることを解説しましたが、では「なぜ無料が可能なのか?」という疑問が生じます。それは中古品の買取・販売という商売が成り立っているからです。実際に多くの不用品回収業者は再利用を前提とした買い取り目的の回収を行っています。

そして、消費者自らが使う目的で購入した商品はたとえ新品であっても古物営業法上の「古物」として扱われ、それらを取引して営利を図ろうとする者は「古物商許可」を得る必要があります(同法3条)

もしネット上にホームページを持っている業者であれば、その番号や氏名等を表示しなければならないため(同法12条2項)、依頼する際にはまずホームページでこれらを確認しましょう。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-03-460x460.jpg
櫻井弁護士

チラシについては法律上は記載の義務はありませんが、記載していることが少なくとも良心的な業者であることの目安にすればよいと思います。

4 「詐欺かも⁉」と思ったときの対応

では、見積もり金額を大幅に上回る金額を請求された場合の対応について確認しましょう。

(1)クーリングオフを利用する

クーリングオフとは、強引なセールス等によって十分に考える余裕のないまま消費者が申込や契約をしてしまった場合に、一定の期間内であれば無条件で申込の撤回や契約の解除ができる制度です。

不用品回収業者がインターネットから、あるいは電話勧誘によって申込を受けたり、自宅を訪ねて物品を買取ったりすることは、特定商取引法にいう「通信販売」「電話勧誘販売」「訪問販売」にあたります。

そして消費者が契約の撤回や解除をするには、業者からサービス内容や金額、クーリングオフに関するに関する事項について記載された法定書面の交付を受けた日(その日を含む)から8日以内に解除する旨の通知(ハガキや電子メールでもよい)を発すればよいことになります(同法9条、24条、58条の14)。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-01-460x460.jpg
櫻井弁護士

これにより既払金の返金はもちろん、事業者に引き渡した荷物も事業者の負担で原状回復することができるのです。

(2)消費者センターで相談する

自動車や洗剤・化粧品といった政令で指定されている消耗品のうち既に消費された分、消費者が自ら店舗に足を運んで契約した場合など、クーリングオフについては対象物や取引態様によっては様々な適用除外があります。

「自分の場合はクーリングオフができるのか?」「クーリングオフの仕方を知りたい」といった相談は、最寄りの消費者センターに問い合わせるとよいでしょう。

消費者ホットライン(全国統一番号)188

(3)弁護士に相談する

クーリングオフ期間を経過した場合やそもそも法定書面をもらわなかった場合でも諦める必要はありません。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-03-460x460.jpg
櫻井弁護士

ただし簡単にできるクーリングオフとは異なり、以下の手段をとるには法的な主張や証拠を整える必要があるので、弁護士によるサポートを得るのが賢明です。

①消費者契約法

 「『無料』と言っていたのに後から代金を請求された(虚偽告知)」「帰ってくれと言っているのに居座られ、無理に契約をさせられた(不退去)」「高齢者等に対して不安をあおるなどして契約させた(判断力低下の不当な利用)」といった場合などには、依頼者は契約を取消すことができます(同法4条)。

この取消権は追認をすることができる時から1年間で時効消滅、契約後5年を経過した場合も消滅します(同法7条1項)ので、それまでに取消の意思表示をしなければなりません。

②錯誤・詐欺取消

契約内容について依頼者に錯誤(勘違い)があった場合や、騙されて契約した場合には契約を取消すことができます(民法95条、96条1項)。

この取消権は追認をすることができる時から5年間で時効消滅、行為をおこなった時から20年を経過した場合も消滅します(同法126条)ので、それまでの取消権行使が必要です。

③内容証明・被害届

取消の意思表示を証拠として残すために内容証明郵便を用いるのが通常ですが、その書き方はもちろん、相手の住所がわからないといった場合にも弁護士にご相談下さい。電話番号や振込口座から照会をかけることで住所が判明する場合があります。

また「騙された」「脅された」といった事情で刑事処分を求める場合には警察へ被害届を出すことができます。その場合にも予め弁護士と相談して法的な要点をまとめた内容にすることでスムーズな受理が期待でき、また警察からの質問には弁護士が立ち会うこともできます。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-01-460x460.jpg
櫻井弁護士

いずれにしても一人で悩まずに当事務所にご相談下さい。

幻冬舎GOLD ONLINE 身近な法律トラブル

人気記事




関連記事

特集記事

最近の記事

  1. 闇バイト強盗に狙われる家と巻き込まれる人!被害に遭わないための心理と対策は?~闇バイト強盗の犯罪責任も弁護士が解説

  2. スポーツ中の事故|誰が誰に対してどんな賠償責任を負う?保険に入る等の対策は必要?

  3. スポーツ法務|スポーツ選手と企業のスポンサー契約を成功させるには?雛形と注意点も解説

TOP