離婚において、「財産隠し」をする相手方に困るケースは多いです。
先日、これに対抗するために、相手方の財産を凍結させる仮差押を立川の裁判所に申立てて、認められました。
この仮差押について、
①仮差押とは何か
②離婚の問題における仮差押
③立川の裁判所の仮差押等の取り扱い
ということについて、ご説明したいと思います。
中央大学の法務全般を担当している中央大学法実務カウンセル(インハウスロイヤー)であり、千代田区・青梅市の弁護士法人アズバーズ、代表弁護士の櫻井俊宏が解説します。
1 仮差押とは?
「仮差押」とは、相手方に対して訴訟を行って金銭を請求していく際に、結局相手方に金銭がなくなって回収できなくなることを防ぐために、相手方の財産を動かせなくする手続です(民事保全法)。
正に、財産隠しを防ぐために有効です。
訴訟と同じような資料一式を作って裁判所に申立てをします。
弁護士なしには難しいでしょう。
相手方に知られずに行わないと、結局財産を隠されてしまい、意味がないので、相手方に気づかれない形で進めることになります。この迅速性と密行性が保全手続の特徴です。
そこで、相手方の意見を聞かずに認めるかどうかを決定することから、ひょっとすると財産隠しとはいえない状況である際はその相手方(「債務者」といいます。)に損害を与えてしまう恐れもあるので、申立人は、担保として、裁判所の決めたお金を事前に納付する必要があります。
動かせないようにしたい相手方の財産の金額の10~30%程度が通常です。
つまり、1000万円分の預金を凍結させるためには、100~300万円ぐらいの担保金が必要ということです。
2 離婚の問題における仮差押
離婚の問題における仮差押はどのようなときに行うのでしょうか。
相手の財産隠しの恐れについて、離婚調停中であれば、「調停前の仮の処分」という手続を申立てることができます。
しかし、この手続には強制力はありません。
調停委員会が、隠そうとしている当事者に対し、何らかの処分を行うだけの手続です。
そこで、1で説明した、一般的な民事上の仮差押を行う必要があります。
財産隠しに対抗するため、財産の分与請求権を守るために仮差押を申立てるのが通常であると思います。
ただ、私達が行った件では、
・相手方が著しい不貞を行っており、
・財産も査定が難しいものが多く含まれていて、すぐに財産分与請求権を守るための仮差押の書類を作成することが難しい状況でした。
そこで、急ぐ必要もあったことから、不貞に基づく慰謝料請求権を守るためという目的で、仮差押の申立てを行い、認められました。
大きく慰謝料が認められるようなケースは、迅速性を重視して、このようなやり方も有効であると思います。
3 立川の裁判所の仮差押等の取り扱い
立川の裁判所は、立川駅から多摩都市モノレールで1駅、高松駅から徒歩4分のところにあります。
以前は八王子にあったものが、10年ぐらい前に機能が移転しました。
建物が綺麗です。
東京全体の3分の1ぐらいの人口がいる東京市町村の件を全て引き受けているのですが、それにしては霞が関の東京地方裁判所よりずいぶん規模が小さいと思います。
霞が関の東京地方裁判所では、50以上ある民事部のうち、巨大な9部というところが、仮差押等の保全について一手に引き受けています。
しかし、立川支部では、4部が、保全・強制執行・破産等をまとめて引き受けています。
なかなか大変かと思います。
なお、今回行った保全は、家事部が兼務して引き受けています。
そこで、事件の処理が大変であるということもあるのでしょうが、霞が関の東京地方裁判所の9部では、仮差押の申立をし、とりあえずその日に面接というのが通常の流れでした。
しかし、今回は、申立書類一式を見てもらって、その後連絡をいただき、修正するところや補完するところを指定され、それを行った結果、申立てが認められました。
1000万円の請求権につき、担保金は200万円でした。
ひょっとすると、コロナの影響で、直接の面接を避けた結果かもしれません。
4 まとめ
仮差押は財産隠しを防ぐには有効です。
ただ、それなりの金額の担保金が必要なので、ご注意ください。
通常財産分与の権利を保全するために行いますが、迅速にやらないと隠されてしまうので、慰謝料請求権が発生しそうなときは、慰謝料請求権を保全するために行うのも有効です。
なるべく早く申立てが認められるように、最初の資料集めをしっかりやりましょう。
【2022.8.9記事内容更新】
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