最近、暴力団等のパーティーに芸能人が参加して、報酬をもらっていたという「闇営業問題」で、お笑い芸人がどんどん減っていますね。
これはお笑い好きの人たちからすれば大変ゆゆしき問題なのではないでしょうか。
この闇営業問題について、
・闇営業があった場合の出演契約の問題
・闇営業と労働契約
・脱税の問題について
等についてお話します。
中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、新宿・青梅・三郷の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。
1 闇営業があった場合の出演契約の問題
まず問題なのは、芸能人として他の会社と出演契約等をしている際に、その出演契約について違法となるかということです。
これについては、例えば、芸能人側が反社会的勢力とかかわった際は契約を解除できるというような条文があれば、これは有効となり、相手方会社は契約を解除できると思います。
これは「ア暴力団対推進法」の趣旨とも適合する内容だと思います。
私がチェックしたことがある契約書では、このような条項がありました。
相手方会社が被った損害を賠償請求できる旨も記載されていました。
その芸能人の影響力・料金等にもよりますが、この際の賠償額はとても大きくなる場合もあるらしいですね。
2 闇営業と労働契約
芸能会社が、芸能人を解雇することが違法かどうかも問題となってくると思います。
これについては、雇う契約内容によって変わると思います。
前提として、労働契約等は、契約書がなくても、両者の意思の合致があれば契約は成立します。
そこで、契約書がない吉本興業の各芸能人の場合は、どのような契約内容の合致があったと言えるかで結論が変わってくるわけです。
いかにも普通の会社員と同じ「雇用」という感じであれば、闇営業であるという意識がほぼなかったのであれば、解雇まではやりすぎということになるでしょう。
「解雇権濫用論」という理論があり、雇用者を解雇する要件は厳しいからです。
しかし、芸人である彼らは正に労働者!という感じではなく、裁量幅をもって働けるのでしょうから、そのような裁量労働や業務委託のような契約の場合は、労働法に守られていないことになるので、契約終了が認められる場合も多いと思います。
芸能界の場合、反社会的勢力とのかかわりがあるとなると、プロダクション会社のイメージダウンが大きいので、契約終了もやむなしという感じもします。
3 脱税の問題について
この闇営業において、間違いなく違法と思われるのは、会計処理の問題ではないでしょうか。
手渡しで報酬をもらって、収入として計上せず、確定申告をしていない点です。
お約束の脱税法ですね。
これによってその収益分の税金を支払わなくて済むのだから、脱税と言われてもしょうがないですよね。
4 まとめ
まあ、全体として、世間で言われているように、契約書がないことと、芸人等が人気のわりにギャラが少ないことがやっぱり問題なのかもしれないですね。
業界的に、ギャラそのものはあまり多くないが、いわゆる「タニマチ」のような人達が食事とかはふんだんに奢ってくれるようです。
ア特殊な業界なのでしょうが、少しずつしっかりと契約を結んでいった方が、プロダクション側にとっても、トラブルに対して対策できるし、会社としての信用性も増しますし、いいように思います。
最近、中田さん、西野さんら、吉本興業からの独立が急に増えたのも、この契約のあいまいさと、不透明さが影響しているように思います。
(2021.2.3更新)