舞妓に未成年飲酒・混浴強要はどのような犯罪が成立するの?強制わいせつ罪?【弁護士が解説】

元舞妓さんが、京都の花街の舞妓の実態について、お客さんから飲酒を強要されたり、混浴を強要されたりしているという実態をツイッターで告発しました。
未成年飲酒、混浴強要「舞妓の闇」告発に反響

舞妓さんは、中学卒業ぐらいから住み込みで働き始めるのが通常であり、もしこのようなことがあれば【未成年者虐待】とも言えるような内容です。

それは犯罪行為ではないのでしょうか?

・舞妓に飲酒を強要するとどのような犯罪が成立するか?
・舞妓に混浴することを強要するとどのような犯罪が成立するか?
・舞妓の歴史と実態

について詳しく解説します。

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櫻井弁護士

学校法人中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、千代田区・青梅市の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

1 舞妓に飲酒を強要するとどのような犯罪が成立する?

未成年者飲酒禁止法違反

「未成年者飲酒禁止法」という法律があります。
しかし、この法律は、未成年者の親権者(すなわち親)や監督代行者(例えば部活の飲み会に同行した監督等)の他、酒の販売業者を対象にした法律です。
そこで、意外に思われるかもしれませんが、この犯罪は、舞妓さんの客には成立しません。
もっとも、舞妓さんは、住み込みで預けられていることが多いことから、店側の者が同席していた場合には、監督代行者として、この犯罪が成立する可能性があるといえます。

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櫻井弁護士

なお、成人年齢は「18歳」に法改正がされましたが、これは、契約の主体等に関する「成人年齢」であり、飲酒に関しては依然20歳未満は規制されているのでご注意ください。

 

強要罪(刑法223条)

飲酒の強要は、人に義務のないことを行わせる強要罪(刑法223条 3年以下の懲役)が成立する可能性があります。
この場合、脅迫や暴行を用いることが要件となっているので、無理やりおさえつけて飲ませる等の場合はもちろん成立しますが、そうでない場合は、例えば、
「わしの酒を飲まなかったらこの色街にいられると思うな。」
等といった脅迫的な言葉と共に行った場合、成立するということです。

 

傷害罪(刑法204条)

なお、このように、違法に飲酒させたことにより、舞妓さんが急性アルコール中毒になった場合は、傷害罪(刑法204条 15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が成立する可能性があります。

民事上の損害賠償責任が認められた裁判例もあるので注意が必要です(大学において、新入生に部活の飲み会でイッキ飲みを強要し、酔いつぶれたその新入生を放置し死亡させたケースにおいて、上級生や顧問の教授に1000万円を超える賠償責任が負わされた事例。福岡高判平成18年11月14日裁判例。)。

 

2 舞妓に混浴を強要するとどのような犯罪が成立する?

強制わいせつ罪(刑法176条)

強要罪は、前述のように、脅迫を用いて行った場合には成立します。
それを超えて、強制わいせつ罪(刑法176条 6月以上10年以下の罰金)は成立するのでしょうか。

もちろん、脅迫を用いて混浴をし、更に、身体に触れる等した場合には、強制わいせつ罪は成立しうるでしょう。

これに対し、身体に触れなかった場合はどうなるのでしょうか。

強制わいせつ罪の「わいせつ」とは、徒に性欲を興奮または制激せしめ、かつ普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること、と難しい定義付けが判例上されています(最高裁昭和26年5月10日判例)。
この点、混浴の前提としての衣服を脱がさせる行為は、特に未成年に対する場合は、それもあいまって、善良な性的道義観念に反するので、「わいせつ」と言えるでしょう。

しかし、強制わいせつ罪の要件として、わいせつな「行為」とあります。
このことから、直接、客自身が舞妓さんの服を脱がさせた場合はこの犯罪が成立する可能性はありそうです。
これに対し、脅迫を用いて、舞妓さんがやむをえず自ら服を脱いだ場合には、成立しないようにも思えます。
間接正犯等の難しい問題も生じそうです。

 

未成年者保護育成条例違反

各都道府県の未成年者保護育成条例においては、通常、
青少年に対し、淫行又はわいせつ行為をしてはならない、
という内容が置かれています。
このことから、万が一、舞妓さんの方において嫌がるような事情がなく、混浴において身体に触られていたような強制わいせつ罪が成立しないような場合においても、未成年者保護育成条例に違反することになります。

もっとも、同条例は、18歳以下の者を酒席に侍させてはならないというものもあり、そもそもそれに違反しているのではないかと思われます。

この点については、次の項で説明致します。

3 舞妓の歴史と実態

上記のように、本来的には、18歳以下の者に対し、酒席に侍する業務をしてはならないことになっています。
では、舞妓、芸妓の業務はなぜ許されているのでしょうか?

この答えとしては、舞妓・芸妓の場合、見習いであり、労働者ではないという建前のようです。
ソープランドがお風呂に一緒に入るところ、という建前であるのと同じような感じですね。
【参考】ソープランドって違法なの?

もともと、芸妓は、そのルーツをたどると、多額の前借金契約と共に契約がなされ、親に前借金が支払われ、芸妓自身は前借金が支払い終わらないと終了できない人身売買のようなものが始まりのようです。

下記の外部記事に、芸妓というものについてかなり詳しく書かれています。
【参考】芸妓という労働の再定位

道義的に疑問の生ずるところから発生した慣習が、実際的な顧客からのニーズもあり今でも形を変え続いているものの、現代において、このままで良いのか、法律的に問題がないのか再検討を迫られているということなのでしょう。

しかし、やっている方も、今問題となっているAV新法下の女優達と同じように、そのシステムが崩壊するのは困ると思っている人もいるのかもしれません。
今後慎重に議論を進める必要がありそうですね。

相続、交通事故、離婚・不貞等の男女問題等の法律的な問題でお困りの際は、弁護士法人アズバーズ(03-5937-3261)まで御連絡いただければと思います。

 

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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