クレーム、カスハラと法的問題

菊川 一将

健康診断を予定しているので朝からほとんど何も食べられない弁護士の菊川です。
午後遅い時間からの健康診断は理不尽すぎる。ラーメン食べさせてください(切実
空腹が限界に達しているからか、タイトルのクレーム、カスハラをクレープ、カステラに空目してしまっています。おいしそう。

はい。

さて、「クレーム」とは、必ずしも悪い意味の言葉ではありません。
コトバンク先生によりますと、クレームとは、「購入した商品・サービスに意見や不満をもつ顧客が、それを提供した企業に対して問題点を指摘したり、苦情を述べたり、損害賠償を要求したりする行為。または、その内容のこと。」だそうです。
単なる文句というわけではなく、自社のサービス・商品を修正・改善すべき点を知る端緒になることもあります。

「カスハラ」とは、しばらく前に放送協会か何かの番組で放送されてから少しずつ認知が進んでいる言葉でしょうか。
カスタマーハラスメントの略で、度を越えたクレームが典型ですが、それ以外にも、顧客である立場を利用して、サービス提供者に対して不当・理不尽な要求をし、対応を求める行為を広く指すものと理解してかまわないでしょう。

「お客様は神様です」という言葉が間違った形で広く認知されてから、日本では顧客の要望に応えることを絶対の是とするかのような動きがとられてきました。ITの普及もあり、ある意味では仕方ない側面もありますが・・。

さて、このカスハラやクレーマーがクレームをすることによる、顧客側の法的リスクを簡単に解説したいと思います。
サービス提供側の対応のお話は代表弁護士の櫻井が別記事を執筆しておりますので、興味があればそちらもご確認ください。

まず、度を越えたクレームは脅迫罪や強要罪に該当する可能性があります。これらの犯罪には懲役刑もあります。

また、民事上、クレーマーによる不当・理不尽なクレームによって担当者が精神を病むなどした場合には、損害賠償責任が発生しえます。治療費や休業損害、逸失利益など、数百万円に及ぶ可能性もあり得ます。

さらに、不当なクレーム対応に追われたがためにほかの業務を行えないとか、専門の対応部を設けていてもある顧客だけからのクレームの数が尋常でないような場合には、業務妨害罪の成否やそれに伴う損害賠償責任問題が生じるおそれがあります。

他にも、サービス提供側の名誉を棄損するような書き込みなどをインターネット上で行った場合にも損害賠償責任が発生しえますし、その旨サービス提供側に伝達すること自体も同様の危険がありえます。

このように、何も考えなしに、サービス提供側が自分の言い分を聞いて当然だろうという誤った認識のもと行われる不当なクレーム・カスハラには、結構シビアな法的問題が潜んでいます。
もちろん、クレームの内容やその正当性、サービス提供側の過失、クレームの頻度など諸般の事情を考慮されることになりますが、しつこいクレームや、客観的に正当な理由のないクレームはやめておくべきでしょう。

最近、カスハラに対する弁護士費用を補填する保険商品が販売されていると聞きます。
この保険が一般化すれば、これまでは費用面で弁護士に頼れなかったようなクレームに対しても、サービス提供側からは毅然とした対応がされる可能性が高まります。

サービス提供側に対して、十分なサービスがなされないこともあるでしょうが、それに対する自分の行動が正当なものであるか、そうすることでどのようなリスクがあるかを認識したうえで、社会通念上適切な行動をとるべきでしょう。

最後までクレームがクレープに、カスハラはカステラに空目しつつ記事を書き終えました。青梅においしいクレープ屋さんありますので行ってきます。

青梅はお菓子もラーメンもうまい、良き。

 

菊川 一将

菊川 一将

「弁護士法人アズバーズ」青梅事務所所長弁護士。 小・中・高校の10年間、バスケットボール一筋。2017年に弁護士法人アズバーズに入所。

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