交通事故で意識障害等により成年後見人が必要な場合【弁護士が解説】

法律時事問題を考察

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交通事故事件を540件以上解決している,新宿・青梅・三郷の弁護士法人アズバーズ,代表弁護士の櫻井俊宏です。


成年後見人の件も10件以上経験しております。

交通事故に遭って,被害者が遷延性意識障害(意識が戻らなくなっている,いわゆる「植物状態」)や高次脳機能障害で,法律的な意思を有効に表示することができないような状態になっている場合,その意思表示が有効でなくなるので,相手方(保険会社)と示談をするにあたって,成年後見人をたてることになります。
成年後見人について説明した後,交通事故事件において成年後見人を立てる場合に考えることを解説します。

1 成年後見人とはなにか

成年後見人とは,本人が法律的な意思表示をできなくなってしまっている場合に,本人に代わって本人の財産を管理し,本人に代わって意思表示を行う者です。

本人の親族等が裁判所に成年後見人をたてる旨の申し立てをし,裁判所が成年後見人を任命します。
申し立てた人から「候補者」が立てられているときは,候補者がその事案において適切であるかどうか,書類と裁判官との面接で判断します。

候補者が立てられていないときや,候補者が,本人との関係・財産状態・知識等の点から適切でないとされたときは,裁判所にある成年後見人の名簿から,裁判所が適切と考える成年後見人が立てられます。

2 交通事故における成年後見人

交通事故があった場合,治療後,症状固定(これ以上はあまり回復が望めないという状態)となり,後遺障害認定がされます。

交通事故の後遺障害の連載記事はこちら
この場合に,上記のように,遷延性意識障害等で法律的な意思表示を有効に行うことができない場合は,成年後見人をたてることになります。
今までに私達の弁護士法人アズバーズでは,このような件を3件遂行しております(遷延性意識障害で後遺症等級1級の件が2件。他の1件は,法律的な意思表示をする能力が不十分という場合で,「保佐人」になった事案です。)。

これまでは,本人の財産が大きい場合には,成年後見人は被害者の家族が就くことがなかなか認められず,弁護士等の専門家でなければ認められませんでした。

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これは,客観的な第三者でない家族が成年後見人になると,財産の横領が頻発していたからです(ご存じのように,弁護士でも横領を行う者も多く,情けない限りではありますが…これでも家族による横領の事例の方が遥かに多いのです。なお,弁護士が横領する場合に備えて,成年後見人の名簿に掲載される弁護士が保険に入る制度ができました。下記の記事に詳しく書いております。)


このことから,多額の損害賠償請求権が見込まれる遷延性意識障害等の交通事故の事例においては,家族を成年後見人候補者に指定しても認められない事例が多かったはずです。

しかし2019年に厚労省で行われた第二回成年後見制度利用促進専門家会議において,最高裁判所は,
本人の利益保護の観点からは、後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合は、これらの身近な支援者を後見人に選任することが望ましい
として,家族による成年後見人を奨励する見解を示したそうです。

まだ,この運用は浸透していないと思われますが,今後各裁判所の運用がどうなっていくか,注目されます。

3 裁判所ごとの成年後見人に関する運用

この成年後見に関する裁判所の実際上の運用は,地方によって随分違うようです。

例えば,候補者について,
「第一に家族の○○,それが駄目なら第二に弁護士の△△」
というような予備的な記載ができるかどうかも場所によって変わってくるかもしれないので,先に担当する裁判所に問い合わせてみるのもいいかもしれません。

実際に家族を成年後見人に設定することができれば,弁護士が代理人として必要なときも,成年後見人となった家族が,本人のお金をもって弁護士に依頼することもできるので問題ありません。
もちろん,その成年後見人となった家族が自分で保険会社と交渉することも可能です。
下の記事を参照してください。

なお,弁護士を候補者に立てる場合,以前は,裁判所の成年後見人名簿に載っていない弁護士の場合でも任命される場合はあったのですが,最近は,成年後見人名簿に載っていない弁護士を候補者に指名しても,任命されない裁判所が増えているようです。

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また,そもそも,弁護士が成年後見人名簿に載る要件も厳しくなってきており,成年後見人業務をできる弁護士は意外と少ないです。

4 まとめ

以上のように,交通事故で,いわゆる植物状態等のとき等は,家族がそのまま保険会社と示談できるわけではないので,注意が必要です。
難しい問題なので,自分達で解決する場合であっても,一度は弁護士等の専門家に相談してみるのが良いでしょう。

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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