本社へ異動による実質リストラ!? パソナと損保ジャパン【弁護士が解説】

新宿・青梅・あきる野の弁護士法人アズバーズ代表であり,中央大学の労務全般を担当する法実務カウンセル,弁護士の櫻井俊宏です。

このたび,パソナ社が,都心から遥か遠く,兵庫県の淡路島に本社を移すという報道がされました。
なぜ淡路島なの?パソナが主要機能移転のワケは?

これに関し,解雇にしたい従業員に本社異動を命じるのではないかとまことしやかにささやかれています。

日本の労働法における解雇について説明した後,この噂について,似たような事案である損保ジャパンのケースも比較して解説します。

 

1 解雇の困難性と異動の不当性

前の記事でも説明しましたが,日本では,労働者が働き続ける権利は終身雇用制の歴史から強く保護されており,よほどの理由がない限り,解雇は濫用であるとされ,認められません。
これを「解雇権濫用論」といいます(労働契約法第16条)。

この余程の理由というのは,犯罪行為に匹敵するような事情が必要です。
これより軽い事情の場合は,そのことに関して使用者側が注意を繰り返し,それでも違反を続けていたというような事情が必要になります。
解雇の難しさについてはこちら

ただ,「異動」に関しては,「このようなへんぴな所への異動は許せない。」と良く相談をいただくのですが,不当な異動というのは労働法上,よっぽどの不当な理由が明らかになっていない限り成立しません。

 

2 パソナの本社機能移転

パソナが本社機能を移転したのは,もちろん,コロナ禍においてリモート化が進行したことで,本社を都心におくことの無意味さからでしょう。

  • 都心よりも郊外の方が箱代(オフィスの賃料)がかかりません。
  • 都心の方が密でコロナの危険があります。
  • 郊外の方が通勤ラッシュを避けることができます。
  • このように非常にいいこともいっぱいあります。

    しかし,いざ淡路島本社に異動を命じられると,家庭,人間関係から,困るのが普通でしょう。

    そこで,リストラしたい従業員は,確かに,本社異動を命じられれば,辞める可能性が高いので,実質的なリストラになると言えます。

    もしそのような意図があるとすれば,恐ろしく合理的な手法です。
    これをやられると,不当な異動というのは考えられないので,労働者としてはなすすべがありません。

    さすが給付金事業のときもいろいろ言われていた会社です…

     

    3 損保ジャパンのワタミ介護事業買収

    これを聞いて損保ジャパンのケースを思い出しました。

    損保ジャパンは,あの「ワタミ」の介護事業部門を買い取りました。

    このときも言われていたのが,損害保険というものに携わりたい人が,介護部門に突然移されても,どうにもやらないし,辞めるしかない。
    そうだとすると,介護部門への異動命令は実質的なリストラではないかと。

    もしそうだとすれば,パソナは地域的距離を生かして,損保ジャパンは業種の違いを生かして,という違いはあるものの,「実質リストラ」の構図はほぼ同じといえるでしょう。

    実際かなりの人数が介護部門に移ったそうですが,その後,どうなっているのでしょうか。

     

    4 まとめ

    結局,このような裏技的方法が現れているとすれば,それは,解雇を異常にしにくい法律が現代にそぐわなくなっているのでしょう。

    大手でも給与が年功序列でなくなっている等,終身雇用制は崩壊し,仕事に人をつけるジョブ型雇用制に変わっていくだろうと言われています。

    解雇権濫用論は見直しを迫られているのかもしれません。

     

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