中央大学の法務全般を担当している法実務カウンセル(インハウスロイヤー)の弁護士櫻井俊宏です。論文の著作権等、著作権問題にもよく関わっています。
私自身もYou Tubeのチャンネルを開設しているのですが、You Tubeでは「なぜ音楽を遠慮なく使っても、違法とならない」のか、疑問に思っている方も多いと思います。
また、替え歌をYouTubeにアップすることは、著作権を侵害しないか、心配している方もいると思います。
この記事では以下の3点について解説したいと思います。
・YouTubeに音楽を含んだ動画をアップする場合
・JASRACについて
・アレンジした音楽(替え歌)をYouTubeにアップする場合 同一性保持権
1 YouTubeに音楽を含んだ動画をアップする場合の著作権 JASRACの取り扱い
音楽の著作権は、ご存じのようにJASRAC(一般社団法人日本著作権協会)という団体が一括して管理しています。
管理している作品は、JASRACのページで検索できます。
これを検索すれば、使おうとしている曲についてお金を支払ったりする必要があるかどうかがわかります。
音楽の著作権にも、文章や絵等の「引用」(著作権法26条)と同じように、「著作権制限」と呼ばれる、著作権を有する者から著作権侵害と言われることを防ぐことができる場合があります。
例えば、対価をもらわず上演する「営利を目的としない上演」(著作権法38条)等があります。
https://as-birds.com/media/intellectual-property/
このような場合は、音楽の著作物を使って上演することは違法ではありません。
しかし、例えば漫画内で歌の歌詞を載せるときは、お金を支払って、JASRACに許諾を得ていることを記載して載せるのです。漫画のコマ外に「JASRAC」の記載を見かけますよね。
1曲につき、せいぜい数千円ぐらいのようです。JASRAC 料金規程
このJASRACですが、YouTube、つまりこれを取り扱っているGoogle社(なお、今アメリカでGoogleを取り扱っている会社は「アルファベット」という名前になっております。)との間では、全面的に音楽を自由に使っていいという提携契約を結んでいるようです。
ただし、市販のCD等をそのまま使うのはだめで、自分で歌唱、演奏等をしたものに限られるようです。
また、アカウント所持者が収益化によりYouTubeで人気を博すると収益を得られるようになっている場合は、そのアカウント保持者に収益が支払われるのではなく、その著作権を持っている会社に収益が流れるようになっているようです。
You Tube等の動画投稿についてのJASRACの記載
You Tubeの収益化は、1000人以上のチャンネル登録者がいて、年間4000時間以上見られていないとできません。
この収益化、特にチャンネル登録者1000人というのはなかなか厳しい要件ですね
2 アレンジした音楽(替え歌等)をYouTubeで使用する場合の著作権 同一性保持権
音楽がフリーに使えることからすると、アレンジ曲についてもそのままアップして大丈夫なように思えます。
しかし、著作権そのものではない権利で、「同一性保持権」(著作権法20条1項)という権利があります。
「自分のせっかく作った著作物を自分が好まないようにアレンジして世に出してほしくない」という製作者の気持ちを保護する権利です。
この同一性保持権は、そのような気持ちを保護する存在理由から、その人独自のものであり「著作者人格権」といって、著作者自身だけが持つ権利です。
著作権そのものと違い、「人格権」という名前通りその人独自の権利なので、基本的に誰か他の第三者に譲渡することはできません。
このことから,YouTubeで原曲そのものを使うことは良いのですが、替え歌等アレンジを加える場合は、本来の著作者が有する同一性保持権を侵害する結果となってしまいます。
そこで、アレンジ曲をアップするときは、原曲のアレンジではない独自の著作物と言えるかどうか、注意が必要と言えるでしょう。
もちろん、歌詞のみならず、リズムのアレンジも問題となるので注意しましょう。
もっとも、著作者人格権である同一性保持権は、そのような著作者自身の権利であるので、著作者が亡くなっている曲については、同一性保持権の問題はなくなるということになります。
本来の著作権が相続できるのとは違うということです。
なお、本来の著作権も著作者が亡くなって70年経つと消滅します。
*弁護士法人アズバーズ代表弁護士櫻井俊宏がYouTube幻冬舎ゴールドオンラインチャンネルにおいて著作権等について解説しております。
3 まとめ
以上のように、YouTubeにおいては、音楽をそのまま使うのは認められているのですが、音楽をアレンジするときには、少し気をつける必要があります。
とは言え、元の曲がよっぽど有名であったり、アレンジの内容がひどくて原曲の持ち主の気持ちをよっぽど傷つけるようなものでない限り、いちいち法的手続をとったりするものではないでしょう。
とりあえず、著作権等の知的財産に関するクレームがあった場合は、誠意を持って迅速に対応すれば良いかと思います。
ただ、最近では、YouTubeチャンネルの売買契約等も高額で頻繁に行われているようですが、違法なチャンネルでは売却できない場合もあり、慎重に対応する必要がありそうです。
【参考】YouTubeアカウント(チャンネル)の売買契約は違法!?
それにしても、私もYouTubeもやっているのですが、You Tubeというものは、チャンネル登録者を伸ばすのが大変ですね。
箱根駅伝等、中央大学についてのことを中心とした動画を作成していますが、今後は法律問題のチャンネルも作っていきたいです!
【2023.8.29記事内容更新】
中央大学藤原監督の凄さについて解説する動画です!