【弁護士が争族を解説】親の貯金を使い込んでいた! 成年後見人選任等の相続に向けた対応策

成年後見人
櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」千代田事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し11年目を迎える。


親の死亡によって多額の相続が発生したとき、親族兄弟間で相続争いが度々起こります。これを争う相続で「争続」と呼ばれたりもします。勝手に貯金を引き出し使い込んでしまう強引なケースもあります。

この記事では、亡くなった親(被相続人)の貯金を兄弟が勝手に使い込んでいたとき、それを遺産分割で差し引くことができるのか、また具体的にどういった対処法があるのかについて解説します。

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櫻井弁護士

学校法人中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、新宿・青梅・三郷の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

親の貯金の使い込みをやめさせるには

1 親の預貯金の使い込みをやめさせるには

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例えば、認知症等で財産が管理できていない親の貯金を、その親と同居している兄Aが無断で使い込むのをやめさせたい時、どのようにすれば良いのでしょうか?

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Aが、被相続人の貯金を使い込んでいることが、Aの金づかいから明らかといえるような場合は、まずは、警告書等を送ると良いでしょう。

とにかく、Aが使い込んでいることを危惧して、警告をしていた等の「足跡」を残しておくことが重要です。もし、書面で送ることまでは仰々しいと思うのであれば、録音をしつつ、電話で警告する等でも構いません。

ただ、Aの使い込みが明らかで、言ってもやめようとしないような状況の場合は、より強い方策を執る必要があります。まずひとつは、弁護士に依頼して、警告の書面を送る等の方法が考えられます。

明らかに使い込んでいる場合には、刑事犯罪としての横領罪(民法251条)にあたります。その旨を伝えて警告すると良いでしょう。

また、親に成年後見人を選任するよう裁判所に申し立てることも有効です。

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成年後見人は下記の記事で詳しく勉強しましたね!成年後見人を選任することでどんな効果があるんですか?

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まず成年後見人が選任されると、成年後見人が親の財産一切を預かって管理するようになるので、使い込みができなくなります。また、成年後見人は、預金通帳等の資料等を添えて、毎年、成年後見業務について報告をするので、記録が残ります。

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なるほど!それならその後相続の争いが起きても預金通帳等の資料開示が容易になりますね。

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ただ、成年後見人は、本人(成年被後見人)が亡くなるまでは、相続の問題には立ち入らないので、その点は念頭に入れておいてください。

なお、成年後見人の申立は、候補者を立てない場合は、家庭裁判所の成年後見人業務を行う者の名簿から選任されます。これは、弁護士や司法書士等の専門家によって構成されます。

一方、成年後見人候補者を立てることもできます。親族を候補者としても、親族同士争いがありそうな場合や、本人の財産が多い場合は、紛争が起こることを避けるため、やはり裁判所の名簿の中から、客観的立場の専門家が選任されます。

また、専門家を候補者に立てる場合も、最近では、家庭裁判所の名簿に掲載されているものしか選任されない傾向がありますので、ご注意ください。

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なお、私、弁護士櫻井俊宏は、この成年後見人等の家庭裁判所名簿に登載されております。

ただ、使い込みの証拠まではないにも関わらず、犯罪だと言い切ると、逆に民事上等訴えられる恐れがあるので、「もしそのようなことをした場合には横領等にあたるのでご注意ください。」というような感じで「もし(仮に)」というような書き方にした方が良いです。

一つは遺産分割には当事者の協議によって分割する方法、二つ目に協議ができない、もしくは決裂した場合は家庭裁判所の調停又は審判によって分割する方法があります。

しかし、協議を始めるには証拠集めが必要になってきます。証拠の取得方法とその後の協議について解説します。

2 使い込みをされた後の事後的な主張方法

  証拠の取得方法

親が亡くなった後に、兄弟が親の貯金を使い込んでいることを主張するには、確実な証拠が必要です。一番確実な方法は、親の銀行口座の取引履歴を調べることです。取引履歴は、相続人であることが証明できる戸籍謄本一式を銀行窓口で提示することで開示請求することが可能です。

履歴を見て死亡前後で高額・多頻度の引き出しが無いか、他人の口座に振り込まれていないか等、チェックしてください。

  遺産分割協議

証拠が見つかったら、遺産分割協議に入ります。協議で、相手方に自らの相続相当分以外の遺産を返還するよう求めます。

遺産分割の方法は、現物分割、代償分割、換価分割の3種類があります。それらの分割方法について紹介していきます。

3 遺産分割の方法

  現物分割

現物分割は、不動産などの財産をそのまま相続する遺産分割の方法です。(現物をそのまま配分(共同相続人の間で現物を配分)する方法。)

・メリットは、他の遺産分割の方法に比べてシンプルで、相続手続きも相続人が所有権移転の登記をするだけで済む点です。
・デメリットは、他の相続人の取得分が少なくなったり不公平になりやすかったり相続人が納得しにくいところです。

  代償分割

現物を特定の者が取得し、取得者は他の相続人にその具体的な相続分に応じた金銭を支払う遺産分割の方法です。

・メリットは、遺産をそのままの形で残せることと、相続人同士の公平性を保てることです。
・デメリットは代わりに渡せる財産がないと不可能であることと、納税資金を別途用意する必要があること、遺産の価格評価でもめる可能性があることです。

  換価分割

換価分割は、遺産の中の財産を売却し、その代金を配分する遺産分割の方法です。

・メリットは、1円単位で現金をわけることができ、柔軟な割合で分割ができるところです。
・デメリットは売却に手間がかかることと、所得税などの税金が発生する場合があることです。

4 遺産分割における調停・審判

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こういったケースのように一方に不穏な行為の気配がある場合ってすんなり話がまとまらない事が多いですよね?

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そうですね。兄弟が保有する財産が使われる等して散逸することを防ぎ、後に回収しやすくするためにも、早めに弁護士に間に入ってもらうことをおすすめします。

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遺産分割において、協議によって解決できない場合には、調停等の裁判所の手続を執る必要があります。

調停とは、裁判所において行われる手続です。

一般の知識ある人から選ばれた2人の調停委員と、争う当事者が、入れ替わりで話し合い、争う当事者の意見を一致させて結論を出す手続です。調停委員を裁判官がサポートします。

調停は、1か月~2か月に1回行われます。1年ぐらいで解決する場合が多いです。ただし、当事者が多い、紛争がこじれている等の場合は、3年以上かかるような場合もあります。

この調停は、正式な裁判書面を作らなくてはならないわけではないので、弁護士を選任しないで当事者だけでもできなくはないです。ただ、専門的な書面を作成して示した方がスムーズであること、調停委員が弁護士を就けていない当事者を強く説得して話をまとめる傾向があることから、弁護士を就けた方が良いと思われます。

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弁護士法人アズバーズでは、相続財産の総額等によって、初期費用22万円からお受けしております。

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遺産分割調停がまとまらない場合は、「不調」となり、「審判」という裁判類似手続自然と移行します。この審判は、裁判官が主導となるので、専門的な書面を作成できる弁護士は必須と言えます。

審判においては、当事者同士が折り合えなくても、裁判官が、諸事情を総合して結論を出してくれます。

5 まとめ

相続の紛争は、もともと親族関係であることにより、いろいろとしがらみがあるのか、他人同士の争いより紛争が激化することが多いです。

そこで、弁護士に依頼する場合に一番大切なのは親身に耳を傾けてこれまでの事実関係と心情を汲んでくれるかということです。弁護士法人アズバーズではこれまでに120件以上の遺産相続案件を解決しております。ぜひ、ご相談ください。

https://as-birds.com/media/inheritance-problem-4/

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