2024年7月7日の都知事選は、その事前の選挙運動等において、いろいろなことが起きましたね!
小池都知事、蓮舫氏の他にも、安芸高田市の石丸元市長、NHK党の複数の候補者、田母神氏、ネットで有名な暇空茜氏等、バラエティに富んだ立候補者でした。
小池都知事の勝利と、石丸氏の2位躍進は「やはり」と言った感じでした。小池都知事はさすがに盤石、されども、ネット戦略の石丸氏は時代に乗ってその地位を脅かしたといえます。

公職選挙法の問題でも、蓮舫氏の事前活動や、ポスターの掲示板にわいせつ物が貼られたこと、異様な政見放送等、いろいろ話題になりました。

  • 蓮舫氏の事前活動は選挙運動として違法ではないのか? 公職選挙法129条
  • ポスター掲示板はどのような場合に違法になるのか?
  • 品位のない政見放送は違法でないのか? 公職選挙法150条と150条の2
  • その他公職選挙法の問題点

等について注意する点をお話します。

1 蓮舫氏の事前運動は選挙運動として違法とならないのか? 公職選挙法129条

蓮舫氏の事前運動は選挙運動として違法とならないのか? 公職選挙法129条

今回、蓮舫氏は、選挙運動期間である6/20~7/6より前の6/2に、有楽町で行った街頭演説会で、
「七夕に予定されている都知事選に蓮舫は挑戦します。皆さんのご支援、どうかよろしくお願いします」
と呼び掛けを行ったということです。

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事務員

これをそのまま受け取ると、明らかに選挙期間以外に運動を行っているように思えますね。

この点については、公職選挙法129条が、選挙運動は選挙の公示・告示日から選挙期日の前日までしかすることができない旨を規定しています。
この公職選挙法129条の違反となると、公職選挙法239条により、1年以下の禁錮または30万円以下の罰金となります。
すなわち、この「選挙運動」の定義が問題となります。

これについては、最高裁の判例上「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接的に必要かつ有利な行為」 が、選挙運動とされています。(最高裁昭和38年10月22日決定)。
この要件を分析すると、以下のとおりとなります。

  1. 特定の選挙に関するものであること
  2. 特定の候補者を当選させる目的であること
  3. もう投票を得る、または得させるために直接・間接に必要かつ有利な行為であること

このうち、3の要件は、あいまいなので、解釈が難しいですね。
今回の件のような口頭での呼びかけで、しかも、例えば「投票してください」というような具体的な内容でなければ、儀礼的な挨拶等の範囲にとどまるので、選挙運動とは取られないことが多いようです。

文書等で自らへの投票を呼びかける文書を送った場合で、実際に有罪となったケースとして、令和3年の衆議院議員選挙のケースがあります。

このような選挙期間の違反等については、選挙が終わった後に動き出すのが通常です。
勝った方には捜査が及ばず、負けた方が一網打尽にされるという、まさに「勝てば官軍」という場合が多いです。

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事務員

この後、蓮舫氏らがどうなるか気になるところですね。

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櫻井弁護士

いずれにしろ、選挙に関する法律の適用は、与党側に恣意的に有利に適用される可能性が高いといえるので、公職選挙法129条の「選挙運動」等の要件は、より明確にしてほしいものだと思います。

 

2 ポスター掲示板はどのような場合に違法となるのか?

スター掲示板はどのような場合に違法となるのか?

今回の都知事選選挙においては、各自治体におかれるポスター掲示板の問題については更にカオスです。
8名の逮捕者が出たとのことです。
ポスターを破る等の行為につき、公職選挙法225条(自由妨害)や、刑法上の器物損壊罪等で逮捕されました。

それ以上に、ニュースでも話題となりましたが、候補者の河合ゆうすけ氏は、ほぼ全裸のポスターを掲示したとして、風営法上の警告を受けました。
子供達の目にとまる場所にわいせつ的なポスターがあるとして、子供の福祉上問題があるとの声があがっていました。
「ほぼ全裸のポスター物議の候補者、ネット演説で熱弁「表現の自由が狭められてしまった」

更に、女子キックボクサーぱんちゃん璃奈の写真や、動物の絵等、全然選挙と関係ないポスターがかなりのスペースに貼られるという事態もありました。
選挙に関係のあるポスターはまれで、関係ないポスターがいっぱいの選挙でした。

これは、立花孝志氏擁する「NHKから国民を守る党」が、1枠25,000円で寄付と引き換えにポスターを貼る権利を譲渡していたことによるものだとのことです。
まるで動物園?NHK党、今度は「ほんわか動物ポスター」で掲示板ジャック

この他、NHK党は、この後の3で後述する、内野愛里氏も焚き付けていたようです、、

なお、立花氏は、4年前の都知事選でも「ホリエモン新党」というものを立ち上げて、ホリエモンこと堀江貴文氏はいないのに、同氏しか写っていないポスターを掲げているということをやっていました。
公職選挙法86条の6、86条の7では、党の代表や立候補者の氏名、またはそれを類推する党名は認められないですが、このホリエモン新党は堀江氏は参画していないので、公職選挙法的に問題ないということでした。
【参考記事】ホリエモン新党のやり方の法的な問題は?

ここまで述べてきたように、この選挙のポスター掲示板は、現状、ただインフルエンサーになるために目立つためや、人に知られるため、ビジネスのために利用されることになってきております。

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櫻井弁護士

現状、ポスター掲示板に関する法的規制はほとんどありません。公職選挙法は、選挙と関係ない内容のポスターは貼れない、ポスターを貼る権利は譲渡できないといったようにする等、法整備が求められることになりそうですね。

 

3 品位のない政見放送は違法ではないのか? 公職選挙法150条と150条の2

品位のない政見放送は違法ではないのか? 公職選挙法150条と150条の2

今回の選挙では、政見放送においてもいろいろ起きました。

前述の「内野愛里」氏は、「かわいい私の政見放送を見てね」という党を立ち上げ(?)、政権放送において上着を脱ぎ、露出度が高いまま、政治と関係ない話を終始しました。放送事故とも言えるレベルです。

また、迷惑系YouTuberとして有名なへずまりゅう氏は、政見放送内で手話通訳を行う人に対し、威嚇的な態度をとりました。

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事務員

このような政見放送における暴挙がスルーされてよいのでしょうか?

この点、政見放送は公職選挙法150条において、「政見放送はそのまま放送しなければならない。」となっています。
しかし、同150条の2は、次のような条文になっています。

(政見放送における品位の保持)

第百五十条の二 公職の候補者、候補者届出政党、衆議院名簿届出政党等及び参議院名簿届出政党等は、その責任を自覚し、前条第一項又は第三項に規定する放送(以下「政見放送」という。)をするに当たつては、他人若しくは他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけ若しくは善良な風俗を害し又は特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をする等いやしくも政見放送としての品位を損なう言動をしてはならない。

今回の都知事選で出たような内野氏やへずま氏のような事案が「善良な風俗を害し」「政見放送としての品位を損なう言動」といえないのでしょうか。
今回は、150条の2違反にはならなかったようです。

以前の事案では、1983年の障害者に対する差別用語を使った政見放送の事案で、この条文が適用されているようです(政見放送削除事件)。

今回の都知事選のように、自分を宣伝できれば良いという風潮が強くなってきている現状においては、この公職選挙法150条の2も、適用しやすく改正する必要があるかもしれません。

 

4 その他の公職選挙法等の問題

その他の公職選挙法等の問題

それ以外にも、今回の都知事選では、56人もの立候補者が現れたことから、供託金300万円を支払えば立候補できるという公職選挙法92条も問題となっております。とはいえ、この56人のうち20人以上が「NHKから国民を守る党」なので、結局同じところが問題となっているとも言えるのですが、、

結局、300万円で宣伝効果が得られるのであれば、いくらでも立候補者が現れてしまうわけです。
前回都知事選あたりからその傾向が強くなっており、この公職選挙法92条も今後の大きな議論の対象となりそうです。

また、今回の選挙は、元安芸高田市長の石丸伸二氏の躍進が目立ちましたが、実際に投票に行った際に、目の前にある立候補者一覧に写真がなく、名前の一覧しかないのを見て、あることに気が付きました。
今回選挙は我々の業界で有名なアディーレ法律事務所の石丸幸人氏も立候補していたのですが、石丸伸二氏に入れようと思っていた人が、間違って石丸幸人氏に入れてしまうことが多いのではないかと。現に、石丸幸人氏の方が目につきやすい場所に記載されていました。
というか、今回選挙に立候補することにつき、石丸幸人氏にメリットはなく、活動もほとんど見えなかったので、石丸伸二氏の票を分散させるために、ライバル陣営からこっそりと立候補を要請されたのではないかとすら思いました。

で、やはり、実際、X等で、間違えて投票したとポストしている人がいました。
現にあまり活動していなかった石丸幸人氏が、8位で10万票近く得ているので、結構多くの人が間違えた可能性はありそうです、、
「じゃない方」の石丸幸人氏 一時6番手まさかの躍進

このあたりの投票所のシステムにも改善の余地がありそうです。投票用紙記載の場所に、写真付きの一覧を置けばよいだけですから。

なお、石丸伸二氏についての実際の選挙上の感覚ですが、今回選挙で石丸伸二氏をX等で非難する人の意見は、まったく具体的でなく、雰囲気がやばいとか、石丸氏の支持が多い都は終わっているとか、とかく根拠のないヘイトが多いように感じました。

いろいろと述べてきましたが、今回都知事選は、いろいろと、活動としても結果としても、政治に変化の兆しが見える興味深いものでした。
しかし、投票率がまだ60%程度というのは信じられないです。
これほどに、国がまずい状況であるのに、選挙すらいかない人が4割もいるとは、、

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櫻井弁護士

特に、若者のみなさんには、高齢者優先でない政治を行ってくれる候補者を探し出して、選挙に行ってほしいですね。そういう意味では、なんといってもネット投票の導入が一番重要だと思います。

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