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離婚について夫婦間の話し合いでうまくいかない場合には、裁判所に「離婚調停」というものを提起することになります。
離婚調停は弁護士を就けないでも行う人はそれなりに多いですが、その際、有利に進めるために気をつけることも多いです。
この離婚調停とはどのようなものか説明の上、離婚調停は弁護士に依頼して同席してもらうべきか、もし自分で行う場合に気をつけるべきこと等、
・離婚調停とは?
・離婚調停を弁護士に依頼せずに申し立てる方法、
・離婚調停において弁護士が同席するメリット、
・離婚調停の期間は長い?
についてお話します。
中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、新宿・青梅・三郷の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。
1 離婚調停とは?
離婚調停とは、裁判所に申し立てて行われる、家庭裁判所内での話し合いの手続です。
1か月半から2か月に1回ぐらいの割合で行われます。平日昼にのみ行われます。
裁判所が強引に日程を決めるわけではなく,両者の空いている日をくみとってくれるので、その点、ご安心ください。
一つの部屋に調停委員という裁判所に選任された離婚手続について知識ある人2人がいて、調停の当事者である夫婦が、調停委員と入れ替わりでお話をし、徐々に両者の意見をすり合わせていきます。
相手方は別室に待機しているので、基本的に顔を合わせることはありません。調停委員もそのように配慮してくれます。
調停は、大抵1回2時間程度であり、30分ずつ2交代を目途に話し合います。
この調停委員は、離婚調停の場合、通常男女1人ずつです。
なお、調停委員の2人は、裁判官の管理のもと調停を追行していきます。担当裁判官も調停で明らかになった事情は随時調停委員からの報告で把握しているということです。
離婚に関する条件について、両者の意見が一致しないと調停による離婚は成立はしません。
調停が成立せず終わった場合(「不調」といいます。)には、離婚裁判をするしかありません。
なお、裁判を調停より先にすることはできず,調停→裁判の順に行わなくてはなりません。
これを調停前置主義といいます(家事事件手続法257条)。
家族のことはできるだけ争うことなく当事者同士の話し合いで解決すべきであるという必要性から、裁判からではなく、先に話し合いである調停から行うようになっています。
どれぐらいの人が離婚調停を行い、どれぐらいの人が離婚調停ではまとまらず裁判まで行うのでしょうか。
だいたい、私の感覚では、離婚調停を行う件は離婚の件全体の10分の1ぐらい、離婚調停で話がまとまらず裁判になる場合も10分の1ぐらいのイメージです。
2 弁護士に依頼せず離婚調停を申し立てる方法
離婚調停を申し立てるには、戸籍謄本が必要です。
その上で、裁判所の基本書式に、その人のプロフィールや申立ての理由等、必要な情報を記載すれば、離婚調停を申立てることができます。
弁護士がいなくても申立はそれほど難しくありません。
手書きでもOKです。
申し立てる裁判所は、相手の住所地を管轄する、すなわち相手の住所地から近くの家庭裁判所です。
遠くの都道府県の家から別居してしまった場合は大変ですが、弁護士に依頼すれば「電話会議」調停等を実行することも可能です。
婚姻費用分担請求調停という生活費を支払うことを求める調停や、面会交流という子供に会うための調停も一緒に申し立てることができます。
離婚調停を申し立てる際は、これも合わせて申し立てることを忘れずに検討しましょう。
当面の生活費がないと現状の生活が難しく、緊急性が高いので、離婚自体よりも婚姻費用分担の調停の方が優先して検討されることになります。子供のことも早めに決める必要性があるので、同様に面会交流の方が優先して検討されることが多いです。
なお、良く混同されますが、「養育費」というのは「婚姻費用」とは別です。
婚姻費用は結婚中の生活費で、子供の分と子供をみている者の分も入っており、合わせて養育費より一般的に金額が多いです。
この養育費の請求も離婚調停の中で主張していくことができます。
3 離婚調停において弁護士が同席でない場合に気をつけること
1 主張書面の取り扱い
まず,あまり書面を書いて提出しない方が良いと思われます。
「主張書面」という事実の経緯等を記載する書面を出すことができるのですが、あまり調停の時点で、相手方の主張内容が良くわからないうちに書面で事実の経緯を出し過ぎると、後で裁判の際に矛盾した主張をしてしまうことになったり、不要に情報を与えることになりかねません。
一度、相手方である夫の代理人が、こちらの手持ちの証拠では立証するのが難しい状態である夫の不倫について、主張書面で認めてしまったケースがありました。
相手方は「有責配偶者」と言って、自分から離婚をしにくくなる立場に追いやられ、こちらの妻は、離婚をしたくないという立場だったので、非常に調停を有利に進めることができたのを良く覚えています。
逆にいうと、離婚調停は、書面をあまり書かなくても良いので、上記のように、弁護士を代理人として立てなくてもできる手続ではあります。
ただし、弁護士がいると、以上の点につき、どのような書面をどのようなタイミングで出すべきか見定めることができるというメリットがあります。
2 調停委員からの説得
また、相手方に弁護士が就いていて、こちらが弁護士を就けていない場合には、調停委員はこちら側を強く説得してくることが往々にしてあります。
弁護士をつけてない側の方が説得しやすいと考えるからです。
弁護士を代理人にせず進める場合には、その意識を持ちながら強く粘り強く、自分の意見を貫いて主張していく必要があります。
4 離婚調停の期間は通常長い
離婚調停は、本人で行うと、ついつい感情的になってしまうので、ポイントを押さえず話を延々と続けてしまうことも多いです。前述のように、1回2時間しかないこともあり、全然話が進まずその日の期日が終わってしまうこともしばしばです。
なので、離婚調停は、3カ月程度ではなかなか終わりません。
半年はかかるのが通常、1年かかることも多いです。
このことから、離婚調停の際は、早期の解決のために調停委員が聞いてきたことについてポイントを絞って話す必要があります。
この点も弁護士がいると、ポイントが絞りやすいと言えるでしょう。
また、両者の意見が完全に合致しないと調停は成立しないため、落としどころを見極め、ある程度のところで相互に歩み寄る必要があります。
5 まとめ
離婚調停は、必ずしも弁護士が必要というわけではなく、自分で行う人もそれなりにいます。
しかし、そこでの振る舞い方次第では、調停がまとまらずに裁判に移行した場合には既に不利な状況になることが考えられます。
また、これまでの出来事の蓄積がこの離婚調停に結びついているのであり、当事者のみで行うと感情的になってしまい、ついつい理性的に追行できないということも多いです。
どのような件であっても、最終的に弁護士に依頼することになるのであれば、話がややこしくなっていない最初のうちに依頼するに越したことはありません。
(2021.2.3更新)