花粉症の時期がやってきました。弁護士の菊川です。
アレロックに助けられながら,ここから半年は花粉症と戦っていく所存です。
さて,先日,「過去の不貞相手に対して離婚慰謝料を請求できるか」という論点について,最高裁の判断が出されました。
結論としては,「特段の理由のない限り,不貞相手に離婚慰謝料は請求できない」ということです。
離婚慰謝料とは,夫婦が離婚するにあたってその一方に責任がある場合等に,その責任を根拠として認められる慰謝料です。
これに対して,不貞慰謝料は,不貞行為という不法行為によって生じた損害の賠償としての慰謝料となります。
これまでは,離婚慰謝料と不貞慰謝料の境界線は曖昧に捉えられてきた節がありますが,この判決によって,両者は別の請求権に基づくものであることが明示されました。
つまり,不貞相手は,不貞行為を行ったことそのものを理由とする損害賠償を支払う義務はあるものの,離婚に伴って発生した慰謝料については必ずしも責任を負うものではない,という判断です。
判決では明言されていませんが,この理屈の延長で考えると,これまで不貞行為が原因となって夫婦が離婚した場合もそうでない場合も「不貞慰謝料」として一緒くたにされてきた請求につき,離婚慰謝料と不貞慰謝料の部分に分けることができる(むしろそうすべき)と考えることができます。
ただ,この考えを前提とすると,裁判上で不貞相手に対して認められる慰謝料請求額がこれまでより減額(厳密に言うと異なりますが)されるように思います。
要するに,不貞相手に対して行った請求のうち,不貞慰謝料部分と離婚慰謝料部分が峻別されることによって,不貞慰謝料部分については共同不法行為責任を負うが,離婚慰謝料部分については配偶者のみの責任=不貞相手は責任を負わない,という結論が帰結されるわけです。
理論上は正しいものと思いますが,不貞されたいわば被害者にとっては,配偶者より不貞相手にきちんと責任をとってほしいと望むのが一般であり,社会常識だと思います。
今後,特に不貞慰謝料請求に関して,下級審レベルでどのような判断がされていくのかを含め,画期的な判決であるのは間違いありません。