「メルカリ」「ラクマ」などのフリマアプリを利用者すれば、個人でも不用品等の売買がしやすくなりました。しかし、中には何も知らずに犯罪を行ってしまっているケースもあります。そして、捜査や裁判の場面では「法律を知らなかった」という言い訳は通りません。

PS5など、常に品切れ状態なので、転売するだけで1~2万円儲かってしまうような状況が続いている状況だそうです。このようなことは問題とはならないのでしょうか。

本コラムでは実際にあった逮捕例をいくつか挙げ、メルカリ上の転売が禁止されており、犯罪となる場合を出品者・物品・態様別に、関連する法律に沿って解説していきます

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櫻井弁護士

学校法人中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、千代田区・青梅市の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

1 すべての転売が禁止されていて犯罪となるわけではない

俗にいう「転売ヤー」、人気商品を買い占めたり高額転売で利益を上げたりするなど、イメージはよくありません。しかし、イメージの問題だけではなく、犯罪を理由に逮捕されることもあります。

⑴ 過去の逮捕例

インターネット上のフリーマーケットを利用した物品の販売で、過去に逮捕された事例をいくつか挙げます。

日付 職業 物品
2017.12.11 古物商
絶滅危惧種「マライセンザンコウ」の剝製1体を7500円~1万円で販売
2018.11.14 無職
スヌーピーに類似したロゴや絵をプリントしたスマホカバーと小銭入れ、キーケースの3点を計4950円で販売
2019.2.1 無職
緊急避妊薬「アイピル」計6箱を計1万9540円で無許可販売
2019.6.13 大学生
スポーツ用品「アディダス」の商標に似たロゴ入りの靴を正規品と偽り3万9000円で販売
2020.2.20 無職
宝塚歌劇団の公演チケット3枚(定価計1万3800円)を3万5400円で販売

⑵ 「転売=犯罪」ではない

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事務員

上記の逮捕例をみると、数千円の出品でも逮捕されてしまうのではと不安になります…いらなくなったものを売ったことは何度かありますが大丈夫なんですか?

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櫻井弁護士

実際に逮捕された容疑者は他にも多くの転売を繰り返しており、中には2200万円以上の物品を売りさばいていた者もいます。刑事手続き上、基本的には問題なく、余程のことがなければ逮捕されませんので、その点はご安心ください。

そして、「不要なものを他人に譲り対価を得る」という行為は誰もが考え経験するところであり、憲法で保障される経済的自由権の健全な行使です。したがって、すべての転売が禁止されていて、犯罪となるわけではありません。

※注意※
ただし、転売する物品や方法、価格によっては犯罪となり、検挙され、場合によっては逮捕されることもあります。

以下、出品者、物品、転売態様別に犯罪となる場合について解説します。

2 出品者によっては禁止されていて犯罪となる場合

物品を販売する際、販売者が限定される場合や一定の義務を果たさない販売者が罰則の対象となる場合があります。

⑴ 古物商許可を取得しない者

古物を販売するには、公安委員会(所管の警察署)に申請して古物商の許可を取得しなければなりません。無許可で営業をした場合は以下の刑罰が科せられます。

懲役3年以下もしくは100万円以下の罰金、又はこの両方

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事務員

では、どのような物が「古物」で、どういった商売が「古物商」にあたるのでしょうか?

① 古物

古物商とは「古物」を取り扱う商売です。古物営業法2条1項では次の3種類を古物として定めています。

・一度使用された物品
・使用されない物品で使用のために取引されたもの
・これらの物品に幾分の手入れをしたもの

このうち問題となるのが「使用されない物品で使用のために取引されたもの」です。

新古品、つまり一度も使用されていない物品であっても、いったん人手(消費者)に渡れば、すべて「古物」に該当します。

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櫻井弁護士

つまり、押し入れに眠っている結婚式の引き出物や中元歳暮といった未使用の品物も「古物」ということになります。

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事務員

そうすると…これらをメルカリで出品するには古物商許可を取得しなければならないということですか?

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櫻井弁護士

その点について次は詳しく解説していきましょう。

② 古物営業

では、古物を取り扱う古物営業とはどのようなものでしょうか?古物営業法2条2項では次の3種類を定めています。

・古物の売買・交換、又は委託を受けて売買・交換
・古物市場の経営
・古物競りあつせん業

このうち問題となるのが「古物の売買」です。

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櫻井弁護士

「古物」を「買って売ること」が古物営業にあたるため、古物の仕入れを行わずに売却だけする場合は古物営業とはいえません。つまり、古物営業には古物の仕入れ・売却という連続性が必要ということになります。

たとえば、自分が使用した物や無料でもらった物を売却する行為は、古物の仕入れがない以上古物営業にあたりません。ハンドメイド品の売却も中古品の材料で作成していなければ古物営業になりません。また、問題となった『マスク転売』のように、仕入れ行為があっても対象が新品である場合は「古物」の仕入れでないため、やはり否定されます。

このように「古物」及び「古物営業」で古物商の要件が絞られるため、不要物を出品するというフリマアプリの本来的な利用であれば許可はいりません。

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櫻井弁護士

しかし、古物を仕入れて売却しそれを繰り返す場合には、もはや古物商です。無許可で行えば犯罪となります。

⑵ 特定商取引法における販売業者

特定商取引法の販売業者に該当する場合は、事業者情報(氏名、住所、電話番号)を消費者に向けて表示しなければなりません1特商法11条5号、特定商取引に関する法律施行規則第8条)。表示しない場合は、主務大臣から業務改善の指示や業務停止命令が出され、それでも従わない場合には以下の刑罰が科せられます。

懲役3年以下もしくは100万円以下の罰金、又はこの両方

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事務員

では、「販売業者」とは具体的にどのようなものでしょうか?

① 販売業者

特商法にいう販売業者とは販売を業として営む者をいい、「営利の意思」と「反復継続」の有無によって判断されます。この判断は個別事案ごとに客観的になされ、「自分は消費者にすぎない」との思い込みは通用しません。

具体的な基準については、消費者庁がガイドラインにおいて一定の目安を示しています。

【同一の新品を複数出品している場合】

過去1ヶ月に 200 点以上又は一時点において 100 点以上の商品を新規出品している
(トレーディングカード等の趣味の収集物を処分・交換するための出品は除外)
落札額の合計が過去1ヶ月に 100 万円以上である
(自動車等の高額商品であって1点で 100 万円を超えるものについては、同時に出品している他の物品の種類や数等の出品態様等を併せて総合的に判断)
落札額の合計が過去1年間に 1,000 万円以上である

 この他、特定のカテゴリーや商品についても各別の目安が示されています。詳しくは『インターネット・オークションにおける「販売業者」に係るガイドライン』をご覧ください。

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櫻井弁護士

特商法の販売業者に該当すれば、事業者情報を表示しなければならないだけではなく、クーリングオフ等の消費者を保護するルールにも服することになります。消費者庁のガイドラインを確認の上、販売業者として責任ある取引を心掛けたいものです。

② 古物を出品する場合

販売業者が古物を出品する場合は特商法と古物営業法の両方の適用を受けます。したがって特商法に基づく表示だけでなく、古物営業法に基づく表示(氏名、公安委員会名、許可番号)も必要です。

3 物品(古物以外)によっては禁止されていて犯罪となる場合

古物以外にも物品によっては法律によって転売が禁止されていたり、許可が必要であったりするものがあります。

【転売が禁止されているもの】

物品 法律 罰則
偽ブランド品
商標法
個人:10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、又はその両方
法人:3億円以下の罰金
不正競争防止法
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金刑、又はその両方
チケット チケット不正転売禁止法
1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、又はその両方

【許可が必要なもの】

物品 法律
無許可販売の罰則
個人輸入した化粧品・医薬品 医薬品医療機器等法
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、又はその両方
酒類 酒税法
1年以下の懲役又は50万円以下の罰金

【一時的に転売が禁止されたもの】

現在は解除されていますが、2020年8月まで国民生活安定緊急措置法施行令によって、マスクやアルコール消毒製品の転売が禁止される措置がとられていました。

4 態様によっては犯罪となる場合

転売態様が犯罪を構成する場合もあります。

行為 法律 罰則
ダフ屋:チケット等を買い込み客に高値で転売し、利益を得る 迷惑防止条例
東京都の場合:6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
詐欺:転売目的を隠して他の販売元から物品を購入した 刑法 10年以下の懲役

5 まとめ

以上、メルカリ上の転売が犯罪になる場合を説明してきましたが、「これをすれば必ず捕まる」「こうすれば絶対大丈夫」という明確な線引きはできないのが現状です。冒頭で余程のことがない限り逮捕はされないとお伝えしましたが、逮捕されなくても検挙・書類送検される可能性は十分あり、実際、警視庁はサイバーパトロールを強化しています。

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櫻井弁護士

皆がやっているから問題ない、と安直に判断するのは危険です。少しでも不安に思う場合は弁護士法人アズバーズにご相談ください。弁護士が法律に基づいて的確なアドバイスを行います。

【2023.4.18記事内容更新】

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