こんにちは。YouTubeチャンネル運営も行っている弁護士法人アズバーズの代表弁護士櫻井俊宏です。
YouTubeは人気のチャンネルであれば、広告収益で多大な利益を得ることができます。
そのような時代になってきたので、チャンネル登録者が多いYouTubeチャンネルが売買されるということが増えてきて、そのような件も対応するようになってきました。
・YouTubeアカウント売買は違法か?
・YouTubeアカウント売買について気をつけること
等について解説し、更にYouTube広告の収益化についても説明します。
千代田区・青梅市の弁護士法人アズバーズの代表であり、中央大学の法務全般を担当する法実務カウンセル、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。
1 YouTubeアカウント(チャンネル)売買は違法か?
最近良く行われているYouTubeアカウント売買は違法でしょうか?
結論として、違法ではないと思われます。
YouTubeの規約の中に、アカウント売買を禁じる規定は特にありません。
そこで、売主と買主の間の売買当事者間だけでなく、グーグルとの間でも、特に売買の効力を無効とされる要素はなさそうです。
民法では【契約自由の原則】という大原則がありますし、一般の法律上も、特に売買の効力を妨げる法律はないと思われます。
実務上、売買も頻繁に行われていることからも、今のところ、違法であるということはないと言ってよいでしょう。
この点、YouTube側は、柔軟に対応できるように、売買ができるかどうかの点について、明言は避けているようですね。
*弁護士法人アズバーズ代表弁護士櫻井俊宏がYouTube幻冬舎ゴールドオンラインチャンネルにおいて著作権等について解説しております。
2 YouTubeアカウント売買で気をつけること 表明保証
YouTubeアカウント売買について気をつけることはどのようなものがあるでしょうか?
まず、そもそも、そのような売買は、まだ行われ始めて間もないものなので、正当な売買をしている人ばかりではない可能性があります。
そこで、契約書を作成しないで振込を要求される等の場合は、ほぼ間違いなく詐欺であるので、騙されないように気をつけましょう。また、前払いを要求された場合も、振込んだ後、音沙汰がなくなるという詐欺の場合もあるので気をつけた方がよさそうです。
更に、契約書が作成されても、例えば、チャンネル登録者をお金で買って水増しされている場合や、何度も同じ番組を見ることで視聴者数を水増ししている恐れもあります。
それを防止するために、そのチャンネルの客観的価値を判断できる人に検討してもらうのが良いと思われます。
更に、もし、故意(わざと)ではなかったとしても、違法なチャンネルである可能性があります。
例えば、他人の著作権を侵害しているチャンネルが考えられます。
YouTubeのチャンネルは流行りがあるので、あるチャンネルがやっているからと真似をする動画がたくさん生まれます。あるチャンネルがやっていて削除されないから違法とは限りません。
このようなことが許されているのは、もともとの作品の制作者も違法に使われているとはいえ、それにより拡散されていることにメリットを感じているからである可能性が高く、いつ、責任を問われるかはわかりません。
例えば、漫画のコマを動画にそのまま載せて、ずっとある漫画について解説するのは、当然違法です。漫画のコマを動画に掲載するには、引用(著作権法32条)等の適法になる要件を満たす必要があります。
すなわち、その動画の中で、漫画のコマがほんの一部であること(主従関係)、どの部分が引用かわかるようにすること(明瞭区別性)、出典を記載すること、等が必要です。
引用の仕方は、下記記事で詳しく解説しています。
また、音楽の著作権を侵害しているチャンネルである場合もあります。
このようなチャンネルは収益化できません。つまり、いくら視聴者がいても、グーグルからお金がもらえないのです。
音楽の著作権の場合には、替え歌でも違法となるので注意してください。
【参考】YouTubeにおける替え歌(アレンジ曲の著作権)
このようなアカウントを買ってしまった場合、せっかく高額で購入したチャンネルが削除されてしまう恐れがありますね。
最悪の場合は、賠償請求や著作権法上の刑罰を受ける場合もありえます。
以上のように、他の人の権利を侵害しているチャンネルでない必要があるので、これを防止するために、契約書に、売主から「第三者の権利を侵害していないチャンネルである。」ということを記載してもらうと良いでしょう。「表明保証」といいます。
この内容を入れておけば、購入したチャンネルが違法なチャンネルだった場合には、損害賠償請求や解除等できることになります。
逆に、売る側は、表明保証をした場合、ほんの1つの動画が凍結されただけで、チャンネル全体が違法で解除されるとなると、とても不安定な状態に置かれることになります。
そこで、契約書は、現在の民法と同じように、売買全体について解除できるのは軽微な違法でない場合に限るような内容にしておいた方が良いと思います。
例えば、売主としては、下記のような文章にすると、1つ2つ動画が凍結されただけでは解除されないので、良いのではないでしょうか。
第〇条 甲は、本アカウントの動画において、アカウント全体が凍結される、又はアカウント運営し支障を来すような著作権侵害等の問題が存在しないことを表明して保証する。
実際、YouTube売買については、まだ歴史が浅いので、結構数多く法律相談や契約書チェックのご依頼を受けているのですが、仲介している会社によってその内容は様々です。
3 デュー・デリジェンスの必要性
デュー・デリジェンスとは、企業間の合併等のM&Aにおいて、事前に売買対象につき、法的に問題ないか等を専門家にチェックしてもらうことを言います。
M&Aにおいては、デュー・デリジェンスは必須ですが、YouTubeアカウント売買においてはどうでしょうか。
結論として、お金が許す範囲では行った方が良いと思います。
具体的には、そのチャンネルの動画が、他人の著作権や肖像権を侵害しているかどうか、チャンネル登録者や視聴者を水増ししていないかというところのチェックが必要です。
なぜなら、チャンネル登録者を水増ししていても、一見ではわからないからです。旧ツイッター等のSNSでも、チャンネル登録者をお金で買って、信用性があるようにしている人は多かったですし、YouTubeのチャンネル登録者もやはりお金で買えるようです。
また、違法なパクり動画等でチャンネル登録者を増やしておいた後、その違法な動画を消している場合も考えられます。
そこで、できる範囲では事前のチェックをした方が良いと言えます。
とは言え、YouTubeのアカウント売買は、企業の売買と違い、代金500万円以下ぐらいの場合がほとんどなので、あまりデュー・デリジェンスをお金をかけてやると旨味がありません。
できる範囲でやるということがポイントと言えるでしょう。
4 YouTubeの広告と収益化について
YouTubeの広告というのは、YouTubeを見ているときに、番組の途中で5秒~15秒程度流れる広告です。YouTubeが生活に普通に入り込んでいる皆様においては、目にされたことがある方も多いでしょう。
ちなみに、月額1180円のYouTubeプレミアムに加入した場合には広告は流れません(なお、スマホで、他アプリを見ながら音楽だけ聴けるという機能も得られます。これ、意外と便利です!)。
テレビ離れが進んでいる最近では、テレビよりもYouTubeの方が広告の効果があるとも言われているそうですね。
YouTubeの場合、見ている番組と関連した広告を流しやすく、より効果が高いということもあるでしょう。
例えば、ゲーム実況の番組中に、ゲームソフトの広告が流せるということです。
この広告は、各チャンネルが広告を流したい旨を希望すると、そのチャンネルに広告を流したい企業が選んでくれた場合に、YouTubeを運営する「グーグル」が両者を結び付けて、広告を流してくれることになります。
芸能人のCMのように、人気のチャンネルである程、一広告の単価も高いです。
昨年は、コロナの巣ごもりでYouTube利用者が多かった上、電車の吊り広告等の広告が撤退されていたこともあり、YouTube広告が最高潮の頃は、チャンネル登録者10万人レベルで月額100万円ぐらいの高額広告収入が得られていたようです。
ただし、広告を流してもらうようになるためには、各チャンネルも最低限のクオリティに達しなければなりません。具体的には、
① チャンネル登録者1000人以上
② チャンネル合計で年間4000時間視聴されていること
が要件とされています。(2021.11.5現在) 特に、①のチャンネル登録者1000人というのは、なかなか大変です。
私も、箱根駅伝の中央大学に特化した解説番組など、番組によっては1つで7000人以上視聴してくれたものもあるのですが、まだコンテンツは30ぐらいしかないので、チャンネル登録者は900人程度です。YouTubeでチャンネル登録者や視聴者を伸ばすには、やはり地道な毎日投稿が良いと言われています。
4 まとめ
YouTubeは、幅広い番組を見られる、一般の人でも動画を広く発信できるツールとして、生活に浸透していっています。 YouTube関連の法的問題に悩むときには、弁護士法人アズバーズにご相談ください。
しかしながら、まだ新しいツールなので、今まで出てこなかった法的問題もたくさん出てきています。
【2023.12.12記事内容更新】
↑は代表弁護士櫻井俊宏が自作で編集しているYouTubeチャンネルです。