千代田区・青梅市の弁護士法人アズバーズ、代表弁護士の櫻井俊宏です。私は、裁判後等の相手方財産への強制執行はかなりやっているのですが、以前から、日本の強制執行の制度が実行力が低いことに悩みを感じていました。
例えば、支払いを怠った債務者の銀行の預金口座の支店までわからないと差押さえられません。
また、債務者が勤務する会社の給与を差し押さえても、債務者が会社を移ってしまうと、また差押え直さなければならないのですが、新しい会社がわからないことが多いです。
これでは逃げ得ではないかと思っていました。
しかし、民事執行法の改正により、差押が少し実効的になりました。
1 預金口座の調査と差押
例えば、相手方に対する「AはBに対し200万円支払え」という勝訴判決があれば,裁判所に申し立てて、相手方Aの預金口座を差し押さえることができます。
これは、公証役場で作成してもらった公正証書があって、相手方が不払いになった場合でも可能です。
(なお、公正証書には「執行認諾文言」を必ず入れましょう。これがないと、裁判をし直さなくては強制執行ができません。)
しかし、この場合、その預金口座の金融機関・支店の情報が必要です(口座番号までは必要ありません)。
この預金口座の情報に関しては、判決が出た後であれば、弁護士会を通した23条照会という手続を行うことができます。
23条照会を申し立てると、例えば三菱UFJ銀行に対し、弁護士会から、その債務者の預金口座の支店・口座番号等の情報を開示してもらうよう照会をしてくれます。これに対し、銀行は、大抵の場合は応じてくれます。
不思議なことではありますが、ゆうちょ銀行に関しては、支店の情報まで把握していなくても差し押さえることができます。
2 勤務先への給与差押
相手方の勤務先の給与を差押さえることもできます。
この場合、給与が44万円以下の場合は、通常その4分の1(養育費の場合は2分の1)までしか差押さえることができないことになります(民事執行法152条)。
給与のうち、44万円を超える部分に関しては、差押の対象になります。
このような制度になっているのは、差し押さえられた者の生活に必要な分は確保させるためという趣旨です。
なお、給与は一度差し押えることができると、毎月、勤務先の会社において、差押分を差し引いて差押さえられた者に給与が支給され、差押えられた分は差押えた者に対して支払われます。
しかし、前述のように,差し押さえられた者が会社を辞めてしまうと、差押は効力を失います。他の会社に移ったとしても、もう一度新しい勤務先を調べ直し、差押をし直す必要があります。
3 不動産等の差押
更に、不動産に対する強制執行や自動車に対する強制執行等もできます。
不動産に対する強制執行の場合、差押をした者がそのまま差押をした物をもらえるわけではなく、不動産競売というものが行われます。いわゆるオークションですね。
裁判所が、不動産に住んでいる者を追い出して、不動産競売を主催します。
競売によって対価として得られたお金から、差押えた者に対する返済が行われるわけです。
早くとも6ヶ月以上はかかります。
4 財産開示の手続
各強制執行方法のお話をしてきましたが、結局この強制執行の対象を探し出すのが一番難しいのです。
昔は探偵を雇って預金口座の情報を探すこともありました。しかし、現在は、個人情報保護が厳しくなっており,預金口座の情報を探すことは困難になっています。
裁判所を利用した法的方法としては財産開示という手続があります(民事執行法196条以下)。
これは、一度強制執行の申立をしてもうまくいかなかったときは、債務者を裁判所に呼び出して裁判所の主導のもと,財産内容を報告させる手続です。
この財産開示手続は、債務者が裁判所に来なかったり、虚偽の事実を話しても罰則が弱かったので,実効性が乏しい制度でした。
しかし、法が改正され、罰則が強くなりました。
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