私こと弁護士櫻井俊宏も、最近はユーチューバーもしていますが、近ごろ副業、本業で私的にユーチューバーをする人が増え、著作権等の問題を気にする方も多いのではないでしょうか。
漫画や動画等の著作物を使ったコンテンツの場合、そのまま動画内で使って良いのかどうか、考えてしまうと思います。
場合によっては、損害賠償を請求されたり、犯罪が成立する場合もあるので、注意が必要です。
- YouTubeに漫画やアニメ等の他の画像をアップする場合の著作権
- 侵害とならない方法「引用」について
- 動画内で他人の動画作品を利用する場合の「引用」は?
- 画像にアレンジを加えることは侵害となるか
等について、注意する点をお話します。
↓私が自作で作成した全日本学生駅伝の予想動画です
https://www.youtube.com/watch?v=ZydtwOyWmfM
1 YouTubeに漫画やアニメ等のアップをする場合の著作権
漫画等の画像をそのままアップする場合は、当然、著作権侵害となります。
画像そのままのコピーペーストは、いろいろある著作権の中の、複製権(著作権法21条)侵害といいます。
しかし、「著作権制限」といって、他人の著作物を利用しても著作権侵害とならない場合があります。
著作権者による著作権の行使を制限する、という意味です。
例えば、典型的なものとして以下の場合が該当します。
- 2、3人程度で勉強会を行う際に本のコピーを配布しても侵害とはならないという「私的使用」(著作権法30条)
- 大学等の講義で本のコピーをオンライン上で映しても侵害とならないという著作権法35条
そして、その著作権制限の中でも圧倒的に利用価値が高いものとして「引用」(著作権法32条)があります。
これは、世間の書籍等でも良く使われており、YouTubeでも利用しやすいです。
2 侵害とならない著作権制限「引用」の書き方
「引用」とは、正に他から引用していることを示す方法で、簡単に言うと、
①利用した他人の画像が自分の作品の中でほんの一部に過ぎず(主従関係)
②自分の作品の中で、どの部分が他から引っ張ってきたものか枠線等で明確にわかるようになっていれば(明瞭区別性)
出典を明らかにすることによって、他人の画像を使っても「引用」が成立し、著作権侵害が成立しません。
更に出典は記載する必要があります。
【〇〇〇より引用】というような書き方です。みなさんも見たことがあるのではないでしょうか。
特に重要なのは①明瞭区別性と②主従関係です。
3 引用要件の「明瞭区別性」の書き方は?
引用の要件の一つである「明瞭区別性」とは、その引用する部分だけ他から引っ張ってきた部分であるということがわかるようになっているか、ということです。
引用する部分だけ枠線等で囲う書き方、明瞭区別性を表現します。
下記の画像のうち、上のように枠線があれば明瞭区別性があるとなり、下のように,他の部分との境界がわかりにくい場合は、明瞭区別性がないということになりやすいです。
4 引用要件の「主従関係」の書き方は?
「主従関係」とは、引用してきた部分が、あくまで自分が書いている作品の中でほんの一部であるということになっているかどうかということです。
引用する部分が、下記の画像のうち上のもののような分量であれば、主従関係はあると判断されやすいです。
しかし、下の画像の書き方のように、引用している部分が2分の1ぐらいの分量が引用であると、明らかに「従」に過ぎないとは言えないです。
全体の内容等も合わせて判断することになりますが、通常、引用している部分が3分の1ぐらいの分量でも微妙であると思われます。
主従関係ありとなりやすい場合
主従関係なしとなりうる場合
よく見ると、各ユーチューバーは、YouTube動画内で「引用」の書き方をしっかり行っています。
書籍もしかりです。
注意して見てみましょう。
そして自分でも使ってみましょう。
なお、音楽等について、歌う場合は「引用」の技術は当然使えません。
YouTubeで音楽を使う場合はまた別途の考慮が必要です。
【参考記事】YouTubeにおける替え歌(アレンジ曲)の著作権
5 You Tubeで他人の動画を「引用」するやり方は?
なお、YouTubeの動画内で、更に他人の動画作品を流す場合も問題となってきます。
この場合、その動画の中でモニターとして他人の動画を流すぐらいであれば、主従関係を満たし、違法とはなりにくいと言えるでしょう。
この場合でも、明瞭区別性の要件を満たすために、モニターを囲い、出典を明らかにすると安心でしょう。
例えば下記のようにします。
櫻井俊宏作「2022箱根駅伝予選会中央大学予想」より引用
これに対して、引用している他人の動画が、自分の動画と同じ大きさの全画面で流す場合はどうでしょうか。
このような場合、主従関係を満たさなくなる場合が多くなると思われるので、流した他人の動画部分が「従」の部分であると主張しやすいように、他人の動画を流すとしてもほんの短い時間が良いと思われます。
この、動画内で他人の動画を流すということの問題は、実際にはYou Tube内でも数多く利用されているものの、まだこれといった裁判例等も見当たらないので、今後の事例の蓄積に注目したいところです。
6 画像にアレンジを加える場合は著作権侵害となるか
なお、画像そのままでなく、ちょっとアレンジを加えたパクリやパロディも、元の作品が想起されるようなレベルのものであれば、翻案権(著作権27条)侵害と言い、著作権侵害となります。
また、著作権を持っているものに限らず、他の人に著作権を売った場合でも、もともとの創作者にも「翻案権」と同様に「同一性保持権」(著作権法20条)という権利があり、アレンジに対して侵害を主張することができます。
この場合は、引用の要件を満たしても、違法となるので注意が必要です。
なお、下記の記事では漫画やアニメの「キャラクター」のパクリについて、著作権法違反となるかどうか、解説しております。
7 他人の容貌の画像を使った場合に違法となるか 肖像権
他人の容貌の画像を使った場合に違法となる場合はあるでしょうか?
例えば、写真を動画内で利用した場合に、その人の容貌が映り込んでいる場合には、憲法13条に由来する「肖像権」を侵害することになります。
この場合も、損害賠償等を請求される恐れがあります。
また、その映り込んでいる人が有名な人であった場合は、パブリシティ権といって、より違法性が高くなるので、注意しましょう。
*弁護士法人アズバーズ代表弁護士櫻井俊宏がYouTube幻冬舎ゴールドオンラインチャンネルにおいて著作権等について解説しております。
8 まとめ
収益を得ていない私的なYouTubeアカウントにおいて他の作品を趣味で載せる場合、元の作品が全くの無名なものである場合等で、著作者が「法的手続に訴える!」等と何か主張しても、賠償等が実際に得られるのは難しいので、そのような可能性は低いとは思いますが、気をつけるに越したことはありません。
そのような場合で、相手方が何か言ってきた場合には、まずはすぐに相手の言うことを聞いて、削除しましょう。
最近では、YouTubeチャンネルの高額売買等も頻繁に行われていますが、違法なチャンネルであった場合、後で損害賠償を請求される恐れもあります。
また、悪質性が高いと判断されるような場合は、犯罪となることもあります(著作権法119条)。
「引用」等によって適法な書き方をしましょう。
【参考記事】YouTubeのチャンネル(アカウント)売買は違法!?
私もYouTubeにおいて、中央大学のことやラーメンのこと等、下記のアカウントでアップしております。
よろしければご覧ください。
【2023.10.22記事内容更新】