こんにちは。弁護士法人アズバーズの所属弁護士、菊川です。本日は事故後の通院ついてお話します。
本稿の趣旨
・事故にあったら可及的速やかに病院(整形外科が望ましい。整骨院ではない)へ!
・痛みや症状はその時感じているものを軽微であってもできるだけ細かく伝えること。
・追加の症状が出てきたら直ちに病院へ。
・治療内容や医師そのものに違和感があれば,早期の転院を検討すること。
1 まずは病院へ
交通事故に遭ったとき,即座に警察に連絡し,実況見分をとるなど協力することがあります。
このとき,警察に協力するのであればそれで構いませんが,もし痛みがあれば,すぐに病院に行ってください。救急搬送も検討して構いません。
事故から通院・受診までの期間のタイムラグがないほど,その事故と痛み・傷害との因果関係が認められやすくなり,ひいては後遺障害(後遺症)が認められることに繋がります(もちろん詐病はいけませんが)。
たまに,事故から数日の期間後に初めて病院に行く方もいらっしゃいますが,2,3日程度であればともかく,1週間も空いてしまうなどすると,後遺障害どころか治療費すらも渋られる恐れが出てきますので,ご注意ください。
病院では,自分の症状をすべて,軽度のものであっても全て話してください。
事故直後は神経が昂ぶっていて,痛みを感じないこともありますが,違和感がある部位は全て申告しておいてください(ただし軽度な追突なのに全身が痛いとか通常関係ないような部位まで痛いというとそれはそれで問題です)。
一度,私が体験した事案では,事故のその日に病院に行った際,あまり痛くないので,その旨を告げた後,その日の夜から膝に激痛が走ったのですが,2,3日病院に行かなかったことによって,保険会社が,詐病だと疑い,賠償の対応をしない事案がありました。
その件は,結局,時効直前に裁判を提起し,数百万円の賠償を認めてもらいました。
このことから,痛みがある場合は,できるだけ早めに病院で申告する必要があります。
また,初回の診断で痛みを申告しなかった場合でも,新たな痛みを感じたら直ちに病院に行ってその旨申告してください。
事故からの期間の間隔が短ければ短いほど,その部分についても認められる可能性が高まります。
2 その後の治療 整骨院への通院は?
そして,交通事故に遭ったあと,いちばん大事なのは「医師の指示に従って治療を継続すること」です。
治療の必要性やその内容は,専門家である医師以外には判断できるものではありませんので,その指示・助言を重視してください。
また,傷害の程度にもよりますが,あまり重篤ではないもの(むち打ち症や捻挫等)の場合は,可能であれば診察する医師が毎回変わる大規模な病院ではなく,個人や小規模でやってらっしゃるような病院を選ぶ方がいいと考えます。
医師も他人ですから,被害者の痛みや症状は被害者の口から語られないと適切な助言が受けられないこともあります。
そのため,痛みについてはきちんとありのままを説明するようにしてください。
場合によっては,被害者の方から整骨院を利用したい旨や,治療方法についての提案をすることも検討すべきです。
なお,医師の許可や勧めなく整骨院を利用した場合,その治療費は事故との因果関係が否定され,治療費などの支払いが渋られる可能性があります。
整骨院の利用にあたっては,念の為,医師の助言を得て行うべきです。
また,あまりに頻度が多い場合,裁判でもその施術費全額が認められないことがありますので,そこは注意が必要となります。
3 転院しても良いの?
医師によってはあまり熱心に治療してくれなかったり,話を聞いてくれなかったりすることがあります。
このような医師は,往々にして保険会社から早期の治療中断の申し入れがあったような場合に,漫然とその要請に応じた書類を作成してしまう等し,後々の支払いに問題が生じるケースがあります。
このような場合,難しい判断ですが,事故後できるだけ早期に転院し,別の医師にかかることをおすすめします。
事故から数ヶ月経ってからの転院となると,それまでの経過をよく知ると判断される,あまり熱心ではない前の医師の診断や書類が重視される可能性がありますので,後々の判断に大きな影響を与える場合があります。
(2020.8.8更新)
代表弁護士櫻井俊宏が交通事故事件について解説しています。