山口達也さんが否認?故意がないと言えるのか!?【弁護士が解説】

最新時事問題の法的考察
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交通事故事件をこれまでに540件以上解決している千代田区・青梅市の法律事務所弁護士法人アズバーズ,代表弁護士櫻井俊宏です。中央大学のインハウスロイヤー,法実務カウンセルも担当しております。

山口達也さんが,酒気帯び運転の件に関し,勾留請求が却下されて釈放され,否認に転じたとの報道がされました。

一体どういう理由でなのでしょう!?

弁護士の観点から解説していきたいと思います。

 

この記事では,

・山口達也さんの否認の理由として考えられること
・否認が勾留請求却下に影響したのか
・酒酔い運転と酒気帯び運転について

等を中心に解説します。

1 山口達也さんの否認の理由

山口達也さんが否認する理由はどうも今日発表されたところでは,犯罪の故意(犯罪を犯しているという意識)の否認のようです。
これは妥当なのでしょうか?

ベースの事実として,午前9時半頃に事故が起こったことが実際に見られています。
その直前の蛇行運転の動画もあります。
その後,現行犯逮捕されて,呼気検査により,0.7のアルコールの数値も出ています。
前夜12時までに麦焼酎ロックを6杯飲んでいたことを自白しています。

考察してみましょう。

一般的に体重65kgの人だと,2合の日本酒が抜けるまでは6~7時間,3合だと9~10時間だといわれているようです。
酒が抜けるまでの時間に関する記事

本件では,山口達也さんの供述によると,麦焼酎ロックを6杯飲んだとのこと。
6杯だと,入れ方にもよるが,量的には日本酒2合分ぐらいでしょうか。
一般的に,日本酒のアルコール度数が15度ぐらい,焼酎のアルコール度数が25度だとすると,日本酒の1.5倍以上と考えられるので,山口達也さんは,2合の1.5倍で日本酒3合分ぐらいのアルコールを摂取したことが推測されます。

このことから,酒が抜けるまでには9~10時間必要ということになります。
深夜12時までの飲酒だとすると,事故時の9時半まで9.5時間経っており,アルコールは確かに抜けているような時間であったといえます。

そこで,否認も一概に不合理とは言えないことになります。

しかし,ここで思い返してください。
上記のひどい蛇行運転からは,到底,飲んでから10時間寝て,酔いから回復していたようには見えません。

このことから,本件では,今後,

・飲んでいた量
・飲み終わった時間

が,検察と弁護側が争う重要な争点となります。

このことから,釈放と同時に家宅捜索が行われ,どれだけの量を飲んだか,いつまで飲んでいたかの証拠が探されたのでしょう。

 

2 否認が勾留請求却下に影響したのか

各社の記事の書き方からすると,否認に転じたから勾留請求が却下されたかのように見えます。
否認したことが勾留請求却下に影響したのでしょうか。

結論として,影響はなく,勾留請求はどちらにしろ却下された事案であったと思います。

勾留請求とは,逮捕の身柄拘束3日に続いて,10日間の身柄拘束を検察官が要求する手続です。
勾留の「理由」(証拠隠滅のおそれ等)と「必要性」(犯罪の内容等から被疑者に与える不利益よりも勾留することにより得られる利益が大きいかどうか)が要求されます(刑事訴訟法60条)。

否認したことは,この「理由」の中の証拠隠滅のおそれがあることの方向に考慮されます。
このことからすると,否認したことはどちらかといえば勾留が認められる方向に考慮されます。

それにも関わらず,今回は勾留が認められなかったのだから,否認したことは勾留請求が却下されたことには結果的に影響を与えなかったといえます。

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なお,一般的に酒気帯び運転という軽い罪では勾留はされないことが多いです。
別件犯罪を探すための勾留として利用される可能性があったのであり,本件の結論はおかしくはないと言えます。

3 なぜ酒気帯び運転だったのか

酒気帯び運転とは,呼気中のアルコール度数が0.15以上の場合をいいます。
0.15~0.25の場合とそれ以上の場合で罰則が少し違います(道交法65条)。

酒酔い運転とは,アルコール濃度の検知値には関係なく,「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」である場合をいいます(道交法117条の2)。

具体的には,

・直線の上を歩かせてふらつくかどうか,
・視覚問題ないか,
・運動・感覚機能が低下していないか,
・言動,

などから判断・認知能力の低下がないかなどの点が総合的に判断されることになります。

本件では,山口達也さんは,酒気帯び運転の場合の5倍近いアルコールが検知されたことになりますが,それ以外の酒酔い運転の立証が難しいので酒気帯びとなったのでしょう。
ただ,他の検査もするべきであったのでは,と思います。

4 まとめ

ここまでのお話はあくまで推測であり,続報が待たれます。

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しかし,私は,山口さんのような芸能人にとって一番大事なのは,犯罪が成立しないことよりも「信頼」ではないのかと思います。

本件では,前夜飲んだ事実があり,明らかな蛇行運転があり,それによって事故が生じた事実がある以上,否認をすることは少なくともイメージダウンは免れません。

これまでにいろいろとやってしまっていることもあり,ファンのためにも,今回は素直な態度を見せるのが大局的には良かったのではないかと思ってしまいます。

 

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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