加入率60%を超える自動車保険の弁護士費用特約 使い方は?【弁護士が解説】

交通事故事件について

弁護士費用特約とは、損害保険につける特約です。

交通事故に遭った際に自分の加入している自動車保険の保険会社が、事故相手との交渉・訴訟のための弁護士費用を全部支払ってくれます。

最近では損害保険の契約をする方の中での弁護士費用特約の加入率がなんと60%を超えているようです。
その効果もあってか、交通事故に遭った際弁護士を入れる件が3倍以上になっているようですが、まだまだ弁護士費用特約の利用率は高くなく、有効利用できていない現状もあるようです。

弁護士費用特約は、率直に言ってしまえば、使えるときは使っても何の損もありません。

この弁護士費用特約はどのように使えば良いのでしょうか。

・【300万円!?】弁護士費用特約はどこまでの費用を出してくれるか
・弁護士費用特約を利用したら保険の等級は下がるのか

・【弁護士費用特約の使い方】どのようにすれば使えるか
・実際に弁護士によってどのように示談交渉が行われるのか

等についてお話します。

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中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、新宿・青梅の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

 

1【300万円!?】弁護士費用特約はどこまでの費用を出してくれる?

弁護士費用特約は、交通事故に遭った際、弁護士を頼む費用を自分の保険会社が肩代わりしてくれる制度です

保険会社は1回の交通事故について、最大300万円まで出してくれます。

ただし、300万円とは、弁護士報酬について消費税も込みの金額です。また、弁護士が依頼を遂行するための交通費や郵便費等、諸費用も全て込みで300万円です。

とはいうものの、重い後遺症がある件を除き、ほとんどの交通事故の件で、弁護士費用は、初期費用・報酬等を合わせて100万円以下でおさまります。

ということは、ほとんどの交通事故の場合は、自分の保険会社が全て弁護士費用をまかなってくれることになります。

後でお話しますが、怪我をして通院している場合は、弁護士に頼むと、ほとんどの件で得られる賠償金額が上がります。

使わない手はないですね。

 

弁護士費用そのものだけでなく、郵便代等の諸経費や裁判所に納める裁判費用も出してくれます。

また、違う県に事務所がある弁護士であっても、その弁護士の交通費や遠くの裁判所に行くことによる日当までも出してくれます。

ということは、近隣に交通事故を得意としている弁護士がいない場合も、遠くの弁護士に依頼がしやすいということです。

弁護士法人アズバーズでも、これまでに、長野県、栃木県、熊本県、北海道等、違う県からの問い合わせから依頼を受ける件を多く扱っています。

 

更に、どんな小さな件でも特約を使うことができます。

車のバンパーがちょっと損傷して、

「過失割合が30:70では納得いかない!!」

という、賠償額よりも弁護士費用の方がかかってしまうような件でも対応してくれます。

このような物損のみの事故や過失割合のみの争いの場合、弁護士費用特約がないと弁護士費用の方がかかってしまう場合も多いので、泣き寝入りになってしまうことが多いです。
なので、弁護士費用特約がある場合にはぜひ使った方が良いと言えます。

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だ、一般的には、明らかに自分が過失割合100%というような、明らかに加害者であるような事案については弁護士費用特約は適用されない場合があるのでご注意ください。

弁護士費用特約は、1年に「わずか数千円」ぐらいの費用を支払うだけでつけることができます。

これでも、加入している60%の人の中で、弁護士費用特約の存在をきっちり覚えていて使うという人はまれなので、加入者を募ることは保険会社の利益になるということです。

ですので、弁護士費用特約がついているときは使わないとはっきり言って損です。

なお、自分の家族が被害遭ったときに対しても使える場合もあるので、詳しくは自分の加入している保険会社の担当者に聞いてみると良いでしょう。

 

2 弁護士費用特約を利用しても保険の等級は下がらない

なお、思い違いをしている人が多いのですが、交通事故の被害者になって弁護士費用特約を使っても、損害保険の等級は下がりません。

自分の自動車をぶつけてしまった場合に、自分の損害保険で自動車を直す場合、等級が下がって保険料が上がるということ等と混同しているのだと思います

弁護士費用特約は、みんなしかるべきお金を支払って入っています。

むしろ、交通事故に遭った場合、使わないと損だと言えます。

実際、弁護士費用特約ができてからは、交通事故で弁護士に依頼する方は4~5倍に増えたそうです。

堂々と権利を行使することをオススメします。

余談ですが、弁護士費用特約は、保険会社が支払ってくれる弁護士費用の内容が、損害保険会社によって違います。

東京海上火災・三井住友火災・損保ジャパン等の大手損害保険会社は、比較的に必要な費用をしっかり出してくれるので、弁護士としても安心できます。
しかし、明らかに必要な費用でも出してくれない損害保険会社もあり、そのような会社の弁護士費用特約の場合、依頼を必ずお断りするという弁護士もいます。

費用の支払いでトラブルになる場合もあります。

どの損害保険会社の弁護士費用特約が内容としていいか、検索して調べてみると良いかもしれません。

3【弁護士費用特約の使い方】どのようにすれば弁護士費用特約を使える?

弁護士費用特約は、保険に入ったときはあまり意識せず勧められたから入った方が多いので、いざ事故に遭うと加入したことを忘れてしまっているお客様が多いです

前述のように、加入率が60%を超えるということは、結構多くの人が入っていることになります。

事故に遭ったら、自分の保険会社の担当者に電話をして、

「私は弁護士費用特約に入っていますか?」

と率直に聞いてみましょう。

入っている場合には、保険会社の担当者に「使います。」とお伝えし、インターネット等で弁護士を探して相談をしましょう。
その保険会社が紹介する弁護士でなければならないという縛りもありません。自由に選ぶことができます。
初回の弁護士相談料も支払ってくれます。

依頼をするとなったら、その「弁護士の住所と名前」を保険会社の担当者に伝えてください。

後は担当する弁護士が手続をしてくれます。

なお、弁護士費用特約を使うということは、その保険会社が費用を負担するということなので、この負担を嫌がって、担当者が何かしらの理由をつけて弁護士費用特約を使わせないようにする場合も体験したことがあります。
特に、相手方が加入している保険会社も同じ会社である場合に多いです。
保険会社に弁護士費用特約の利用を断られるような場合があったら、弁護士に問い合わせてみるのも良いでしょう。

4 弁護士によってどのように交渉が進むのか?

ここからは、実際に弁護士費用特約を使って弁護士を入れた場合に、どのように交渉が進むのか解説します。

1 交渉の開始

交通事故に遭って通報があると、事故現場で警察の手により「実況見分」が行われます。
この際,当事者に怪我等のない「物損事故」か、怪我がある「人身事故」であることが認定されます。

その内容に沿って、後日、警察により「事故証明書」というものが発行してもらえることになります。

いずれにしろ、加害者が損害保険に入っている場合は、事故日以降その保険会社に連絡すれば交渉が開始することになります。

この加害者の保険会社の担当者は、被害者であるあなたの味方ではないことはよく認識しておいてください。保険会社ができるだけお金を支払わなくて済むように進めようとしてくるということです。

 

2 どのような賠償を請求できるのか?

基本的に賠償請求できるのは下記の項目の賠償請求です。

・治療費
・通院交通費
・通院慰謝料
・休業損害
・文書料

治療費については、明らかにその交通事故により怪我が生じたと相手方保険会社が認めたときは「一括対応」といって、治療が終了しただろうと思われるときまでの治療費を、相手方保険会社が,直接病院に支払ってくれます
通院している病院を保険会社に伝えてください。

逆にいうと、一括対応をしてくれない事案は、相手方保険会社が、あなたの怪我は事故により発生した怪我ではないと疑っている場合が多いので注意が必要です。

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このような場合の事故を保険会社側は「モラル事案」と呼んで警戒しています。


賠償を得るためには裁判までする必要があるかもしれません。

通院している場合は、その通院している病院に相手方保険会社が治療状況を問い合わせられるようにするため、被害者に対し、通常、治療状況を問い合わせるための「同意書」を作成するよう要求があります。
これについては、作成して提出しても特にこちらに不利になるようなものではありません。
むしろこの同意書がないと、相手方は対応ができなくなるので、速やかに提出する必要があります。

整形外科だけでなく、整骨院や鍼治療等にも通いたい場合は、医師にそのような治療が必要であると診断してもらい、それをもって相手保険会社と交渉をすれば認めてもらえる場合もあります。

通院を続けてある程度時間がたって、そろそろ怪我が治ったか、回復の見込みがもうないと保険会社が判断すると、保険会社が治療の打ち切りを打診してきます。
通常、むちうちの症状であれば3ヶ月~6ヶ月ぐらいで打診があります。

これについて、終了ということで良ければ、医師に症状固定(これ以上怪我の回復が見込まれない状態)であることを伝え、保険会社の治療費支払いは終了となります。
それ以降は、通院するとしても自分で費用を支払うことになります。

 

3 通院慰謝料について 

「通院慰謝料」というのは、通院していることによる精神的負担についての慰謝料です。
正確に言うと、入院の場合も含んだ「入通院慰謝料」です。「傷害慰謝料」とも呼ばれます。

保険会社は、保険会社独自の基準で支払いを提案してきます。
これは、弁護士の基準よりかなり低い金額です。

これに対し、弁護士の基準である「裁判基準」は、これまでの交通事故に関する裁判例が積み重なってきた基準です。

弁護士が皆持っている「赤い本」という交通事故のマニュアル本で金額が定まっています。
どれぐらいの期間の通院・入院したかで、事案によって少し違いますが、例えば1か月だと19万円というように決まっています。

弁護士を就けて、高額の裁判基準の方の金額を提案すれば、保険会社は、この本の基準に沿ってその金額の8~9割ぐらいを支払ってくれます。

4 休業損害について

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「休業損害」とは、事故による入通院又はその症状のために仕事を休まざるを得なくなった場合で、それによって本来得られるべき収入等が減額された場合のその減額分をいいます。

通常、休業や減額の証明を別の手段でしなければなりません。
職場に保険会社の決まった様式の「休業損害証明書」を渡して作成してもらい、それをもとに相手方に請求します。
これは、雇用主が休業した期間を証明し、その休業期間内に減額したかどうかを明らかにするものです。

また、休んだからと言って直ちに全額が損害として認められるわけではありません。
「事故によって休まざるを得なくなった」場合の休業のみが損害として認められるのであり、休む必要がないのに休んだ場合には損害としては否定されます。

自営業者の場合でも休業損害は請求できます。
しかし、休業損害証明書による証明ができませんから、被用者の場合と比べて立証に難がある場合があります。

取締役や社長のような役員の場合は、休んだからと言って直ちに報酬が減額される関係にはないため、休業損害の請求が困難です。
この場合、取締役等としての業務のうち、役員報酬として上乗せされている分と、実質的に雇用関係にあることに対する対価分とを、様々な事情から判別し、雇用関係にあることの対価分のみを請求していくことになります。

主婦の場合でも、その主婦としての家事等の労働は原則として経済的価値を有しますので、休業損害を請求できます(「主婦休損」といいます。)
この場合、休業損害証明書は存在しませんから、通院の頻度や症状の程度、その年令の人の平均収入等をもとに、適切な損害額を請求していくこととなります。

 

5 通院交通費や文書代について

通院交通費とは、通院に要した交通費のことです。
通院に際して、合理的な経路を通る電車等の公共交通機関を利用している場合には、問題なく実費全額が認められます。

また、自家用車を利用した通院の場合、1キロあたり15円に換算したガソリン代が損害として認められます。
ただしこれらの場合でも、治療そのものとの因果関係が認められないような場合には、通院交通費も否認されます。

タクシーによる通院は、事前に相手方保険会社の了承を得ないともらえない場合が多いので注意しましょう。

文書代とは、診断書等の病院で作ってもらえる書面の料金であり、これも認められます。

以上、弁護士費用特約についてのお話と、弁護士に依頼した場合にどのように交渉が進むかをまとめました。

これを見ればどのような賠償が得られるか、どのように交渉すればよいかがわかったと思います。

ただし、怪我の程度によっては、1~14級の「後遺障害」が認定される場合があり、更に多くの賠償が得られます。

ここからは後遺障害について詳しくお話します。

 

5 後遺障害がある場合の賠償請求の方法

一般に、後遺障害のことを「後遺症」と言ったりします。
これらの持つ意味はほとんど一緒ですが、後遺症が、広く何らかの傷害を受けたあとに身体に残存する症状を指すのに対し、後遺障害とは交通事故・労災実務等で使われる用語で、後遺症のうち法律上の一定の要件を満たしたものをいう、といえます。

これは法律上のもの、すなわちそれを負わせたことに対して不法行為責任が生じるものですので、後遺症について「後遺障害がある」というためには,その証明が必要になります。
そのため、被害者の「痛い」という訴えのみでは客観的になかなか証明ができず、後遺症が後遺障害とは認められないことが多くなるのです。

後遺障害は、その程度に応じて重い方から順に1~14級までが設定されています。
そして、具体的な症状がこの後遺障害等級に該当する場合に、後遺障害が認められることになります。

良くあるむちうち(頚椎捻挫)の症状の場合、通常14級が得られる場合があり(だいたい申請したうちの30~40%です)、ごくたまに12級が得られることがあります。

14級が得られた場合、200~300万円賠償額が変わってくることがあり、12級に至っては500万円以上変わってくることが多いです。

 

後遺症が後遺障害と認められたときには、主として、

①後遺障害慰謝料
②後遺障害逸失利益
③事案によっては将来介護費

がそれぞれ損害として認められます。

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後遺障害慰謝料とは,後遺障害を負わされたことそのものに対する慰謝料で,いわゆる通院慰謝料とは別に損害として認められます。

上でお話した赤い本で、得られる金額は決まっており、14級の場合は75万円~110万円、12級の場合は226万円~290万円です。
ちなみに、後遺障害がなくてももらえる上述の「通院慰謝料」とは別にもらえます。

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後遺障害逸失利益とは、その後遺障害によって将来の仕事に支障をきたし、本来得られるはずだった将来の利益が減少すると認められることにより(できるはずだった仕事ができなくなるなど)、その分が損害として認められるものになります。


これも計算式等が決まっており、後遺障害の等級に応じて、本来得られるはずだった利益の想定される減少割合が大きいです。
例えば、14級だと収入の5%ですが、12級だと収入の14%となっています。

将来介護費は、その後遺障害が重度の場合、将来に渡って介護を要することになる場合のその介護費用のことです。
原則として介護にかかる実際の費用ですが、施設などに預けるのではなく、近親者が介護を行う場合には、その近親者の介護を金銭的に評価し、1日あたりいくらというかたちで損害が認定されることがあります。

このように、後遺症について「後遺障害」が認められると、認められない場合に比して相当に賠償額が大きくなり、きちんとした保障を受けられることになります。

 

6 後遺障害の申請方法

事故後しばらく治療を継続していると、完治することもあれば、あるときを境にこれ以上治療の効果があがらない状態になることがあります。
この状態を「症状固定」
といいます。

この症状固定になってはじめて、後遺障害の等級が得られるかどうかの申請をすることができます。

症状固定か否かを、本人が申告することはできますが、最終的に診断するのは医師です。
典型的に多いむち打ちなどの神経症状の場合は、痛みが続いていても概ね3~6ヶ月程度で症状固定の診断がされることが多くなっています。
それ以外の多くの症状の場合は客観的な資料から判断されることになります。

症状固定の状態になったということは、それ以上の治療が医学的な意味を持たないということを意味します。
そこで、その状態について、「後遺障害診断書」という保険会社用の特別な診断書を作成してもらうことになります。

その上で、印鑑証明等の必要な書類を添付して、自動車賠償責任保険の担当会社に対して賠償を請求すると共に後遺障害の申請を行います。
これを「被害者請求」といいます。

相手方の保険会社に後遺障害診断書を出して申請をする「事前認定」という方法もあります。
ただ、相手方保険会社が選んだ第三者機関に認定をしてもらうので、やや後遺障害を認定してもらいにくい可能性があると言えます。

いずれにしろ、この申請においては、添付資料を自由に提出できるので、医学的な画像の他、医師の報告書・勤めている会社の報告書等、的確な資料を添付することによって後遺障害を認定してもらえる可能性を上げることができます。

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なお、この後遺障害申請は、何度も異議申立をすることができます。
2度3度やっても結果が変わることはあまりないですが、1度は試してみるのも良いでしょう。

 

7 まとめ

以上、弁護士費用特約についてと、弁護士に依頼した場合にどのように交渉が進むかをまとめました。

これを見れば弁護士費用特約をどのように利用するのか、どのような賠償が得られるか、どのように弁護士と共に保険会社と交渉すればよいかがわかったと思います。

 

交通事故で怪我をした場合には、交通事故事件700件以上の事件解決実績がある、新宿・青梅・三郷の弁護士法人アズバーズに気軽にご連絡をください。

電話問い合わせは無料、弁護士費用特約の件も対応させていただきます。
弁護士費用特約がなくても、相手方保険会社の保険金支払提案が既に出ている場合には、初期費用0円プランが適用される場合もあります。

(2022.5.11内容更新)

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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