交通事故と後遺障害 【二・3】通院慰謝料について

交通事故法律問題
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こんにちは。弁護士法人アズバーズの所属弁護士、菊川です。本日は通院慰謝料についてお話します。

1  本稿の趣旨

・通院慰謝料とは,通院を余儀なくされたことそのものに対する慰謝料である。
・原則として通院期間によって算出されるが,通院回数があまりに短い場合は実通院日数基準となることがある。
・症状によって用いられる基準が異なり,むち打ち症で画像所見ない場合は低い基準で算出される。
・保険会社が提示する慰謝料額は,自賠責基準又は保険会社基準であり,弁護士が提示するものより相当に低い。

(入)通院慰謝料とは,望まぬ交通事故によって入通院をしなければならなくなったことに伴う精神的損害を慰謝するするために認められる慰謝料です。
建前としてはこの通りですが,それ以外にも,証明できない恐怖(交通事故で車が怖くなった等)のように,それ自体を損害として認めることが困難なものについてもここに含んで計算されることがあります。

通院慰謝料の計算は,これまでの交通事故裁判の積み重ねによって,ほぼ定型化されています。
入通院した期間に応じて,機械的に慰謝料が算出されるかたちです。(関西地方と関東地方で基準が異なっていますが,算出の方法は概ねおなじになっています。)

慰謝料は,通院した期間に比例するようなかたちで算出されます。ただし,期間が長引くほど増額の割合は小さくなります。
また,通院期間より入院期間のほうが精神的損害の度合いが大きいと判断されるため,入院期間のほうが慰謝料が多くなります。
また,慰謝料算出の基準は,実際に通院した日数ではなく,通院に要した機関です。
例えば,2020年1月1日に事故に遭って通院を開始し,同年6月末まで合計で70日間通った場合,慰謝料算出の基準となる期間は70日ではなく6ヶ月となります。
ただし,通常は継続加療が必要となると見られる症状が見られる場合で,通院期間に比して実通院回数が相当に少ない場合(概ね「実通院日数×3.5<通院期間」の場合)には,慰謝料算出の基準となる期間は「実通院日数×3.5」で計算されることがあります。
むち打ち症で画像所見がない場合や,ちょっとした擦り傷・打撲程度で加療を要しない場合は,慰謝料の基準が低いものになります。

この慰謝料ですが,基準が3通りあります。

これまでに紹介したものは裁判基準ないし弁護士基準と言われるものです。
一つは自賠責が用いる基準で,1日の通院あたり4200円という基準のものです。
もう一つは任意基準とも呼ばれ,任意保険会社が独自に設定した基準です。

損害賠償請求は法律上の権利であって,裁判をしようがすまいが,客観的に損害額は定まっているはずです。
しかし,交通事故における被害者は,通常弁護士をつけなければ裁判を起こすことが困難ですから,保険会社としては裁判の場合の基準より低い基準での解決を打診してくるのです。
こうした場合,弁護士が介入して交渉ないし裁判をすることで,慰謝料増額が見込めます。また,保険会社が勝手に減額した慰謝料を法律上正当なものに戻すだけですので,何ら不当なものではありません(むしろ保険会社の提案に問題があると考えるべきです)。

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菊川 一将

菊川 一将

「弁護士法人アズバーズ」青梅事務所所長弁護士。 小・中・高校の10年間、バスケットボール一筋。2017年に弁護士法人アズバーズに入所。

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