不倫の慰謝料請求で過大請求をするのは弁護士費用がかさむ!?妥当な金額は?【弁護士が解説】

離婚・男女法律問題

不倫の損害賠償請求で、被害者の方が、怒りに任せて「1000万円」とか「1500万円」とか過大請求をしてくる場合をよく見かけます。
お怒りは良くわかるのですが、弁護士に任せた際に、このような妥当な金額ではない過大な請求を最初にすると、請求者本人にとっても、経済的・精神的・時間的にいろいろと損であり、結論としてもすっきりしない解決になってしまうことが多いです。
なぜそのようなことになってしまうかを詳しく解説します。

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不倫の損害賠償請求事件をこれまでに900件以上てがけている、市ヶ谷・青梅の法律事務所、弁護士法人アズバーズ代表弁護士の櫻井俊宏が解説します。


1 高額請求をしても損害賠償額はあまり変わらない

不倫の損害賠償請求は、不倫というものに対するその時々の国民の意識を反映して、賠償額の相場がだいたい裁判所によって決められています。
実は最近は減額傾向にあります。夫婦関係を超えた自由恋愛に対する非難が弱まっているのでしょうか。

不倫をされても離婚をしない場合には、それほど精神的損害がないということで80~100万円以下ぐらい。
不倫をされて別居をすることになってしまったら、大きめに精神的損害を与えたということで、150万円前後。
不倫をされて離婚にまで至った場合には、精神的損害が大きい不倫として200万円前後。

このぐらいがおおまかな相場感です。
この他、不倫の頻度、結婚期間の長さ等によって変わってきますが、この部分は誤差として、少し影響を与えるに過ぎません。
どれほど感情豊かに裁判官に怒り・悲しみを伝えたとしても、大きくとりあげてはくれません。
もっとも、不倫で妊娠してしまった場合等は、家庭を崩壊させた度合いが大きいものとして、金額が大きく変わってきます。

2 過大請求は弁護士費用がかさむ

このように、不倫の賠償請求においては、事実関係に応じて、ある程度賠償額の相場感が決まっています。

それにも関わらず、大きな金額を請求するということは、弁護士費用がかさむだけという結果を招くことがあります。
なぜなら、弁護士事務所によっては、当人が請求額をいくらにすることを望むかによって、初期費用としての着手金額が決まる事務所が多いからです。
通常は、300万円の請求までは請求額の8%が着手金、
それ以上の場合は5%+9万円が着手金、
というのが、日本弁護士連合会の旧報酬基準に従った金額です。
これに従う場合は、例えば1000万円の請求をする場合には、59万円+税の初期費用を請求する事務所が多いということです。

なお、私達の弁護士法人アズバーズの場合には、交渉段階の着手金については11万円~16万5000(税込)で受けることが多いです。
また、請求する側においては、依頼者の方が集めている証拠状況に応じて、着手金0円プランも用意しております。

ただ、このように弁護士費用は大きくならないとしても、請求額が大きくなれば裁判所におさめる印紙代の額はどうしても大きくなります。

3 過大請求をすると終了するまでに時間がかかる

そして、もちろん過大な請求をたてた方が、お互いの意見をすりよせるために長い時間が必要となってくるので、必然的に時間がかかります。
弁護士同士であっても、交渉する場合、相手方の意見をくみ取って、ご本人と協議し、また相手方に意見を伝えるということが続きます。この返答は、どれぐらいの時間までに返答が欲しいということは通常伝えません。
被害者である請求する側に「14日以内に返信をお願いします。」というようなことを伝えると、被害者本人の気分を害して交渉難航の要因になってしまいますし、請求される側においても、結局は裁判をされるまではお金をとられるというわけではないので、ついついその状況に甘えてダラダラ引き伸ばしがちになってしまうのです。

このようなことから、通常、不倫の事件では、
交渉⇒和解書作成⇒最後の調整⇒賠償額の振込
等のプロセスにおいて、交渉のみで終わっても3カ月はかかる場合が多いです。
更に、裁判でとことん争った場合、1年前後はかかると思った方が良いでしょう。

このことから、交渉にかかる時間を長くして、そのことによって加害者に精神的負担を与えたいとまで思っているような場合でない限りは、請求額は無用に多くない方が良いと言えます。

4 過大請求は本人の精神的にも負担が大きい

不倫の事件では、裁判等で争いになった場合、例えば、

「既に夫婦関係は破壊されていた状態なので、被害者の精神的損害は少ない。」
「不倫相手は結婚していないと聞いていた。」
「ラブホテルには一緒にいったが、性交渉はしていない。」

などと、賠償請求された側は、できるだけ賠償額を少なくするために、状況・証拠等からすれば、あらゆるおかしな主張をしてくるのがセオリーです。

このような見え透いた虚偽主張というものは、請求する側からすると、
「なんで加害者なのにこんなふざけた主張をするんだ!!」
と、なまじ合理性がある主張よりも頭にきて、精神的に負担が大きいです。
しかも、このような虚偽主張をしたからといって、制裁的な意味合いで賠償額が増えるということは、実際にはほとんどありません。

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このような人に危害を加えることに遠慮のない不貞者達と、たとえそれが敵対関係としてであっても関わりを長い間持つと、こちらの気の流れや人生まで悪くなってしまいそうですよね。このような紛争というものはある程度早く終わらせて、関係を断ち切った方が良いというのが私の意見です。

5 まとめ

以上のことから、不倫の損害賠償請求では、その紛争に慣れている弁護士の意見であれば、裁判にしてもほとんど違いは生まれないことがわかります。
そして、ここまで述べてきたような大量のデメリットがあるので、不倫の紛争はできるだけ早く終わらせた方が良いでしょう。

「あなたはひどい被害を受けています。1000万円請求しましょう。着手金は50万円です。」等と過大な請求を勧めてくる弁護士は「事を大きくしてお金をもらおうとしているのではないか。」と疑いの余地を持って依頼するかどうかを検討しましょう。

【2023.1.11記事内容更新】

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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