誹謗中傷に対する法的措置のこれから【弁護士が解説します】

法律時事問題を考察

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学校法人中央大学の法実務カウンセル(インハウスロイヤー),新宿・青梅・三郷の弁護士法人アズバーズ,代表弁護士の櫻井俊宏です。


SNS上の誹謗中傷で痛ましい事件が起きました。

私は,前から,名誉毀損等に対する日本の法整備が遅れている実感があったので,この事件をきっかけにどのように移り変わるか,法的観点と予想をお話したいと思います。

1 名誉毀損等に対する対抗手段の貧弱さ

日本の名誉毀損等に対する法的対抗措置が全く保護されていないように感じます。

まず,そもそもSNS等で違法行為を行った者のプライバシーが守られすぎです。
民事の請求,刑事被害届等,功を奏さず泣き寝入りが多かったと思います。

これは,違法行為を行う者の表現の自由(憲法21条)を保護する観点もあるからです。
表現の自由は,これが制限されると,民主主義の根幹に関わるので,憲法上の自由の中でも特に強く保護されています。
このことは報道に対する保護が厚いことからもわかると思います。

このことから,違法行為を行った加害者への追及は大変です。
匿名のSNSでの加害者への民事の責任追及は,

加害者の情報の開示
・書き込みの削除
・損害賠償請求

等があり,全ての対抗策を行っていくには,具体的にどのようなプロセスを経るかは別記事に譲りますが,裁判等のプロセスを3つも4つも経る必要があります。

これを全てやるには,弁護士費用としては,その大変さからどうしても100万円前後かかってしまいます。
時間も数ヶ月単位でかかります。

明らかに違法と思われる件に関しては,もっと簡易にできる必要があるように思います。

また,認められる損害賠償額の低さも問題です。
有名人でもない限り,ほとんどが数万円から多くても50万円以下ぐらいです。

誹謗中傷を受けた被害者の精神的損害はこの程度ではないと思います。

そもそも,このような誹謗中傷を簡単に書き込んでしまう者は,簡単にこの賠償金を支払えないことも多いでしょう。
その場合は,強制執行の手続もしなくてはなりません。

強制執行の方法とその対象財産の調査方法

結局,名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条),業務妨害罪(刑法233条,234条)等について,ほとんど捜査が動いてくれない現状を変えてもらう必要があります。

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捜査がすぐに動くという世間の認識が浸透すれば,加害者も犯罪者にはなりたくないでしょうから,慎重に書き込むようになるではないでしょうか。

2 進行している改善

2020年4月30日付のNHKの記事で,総務省が,裁判を起こさなくても情報を開示できる仕組みや,加害者の電話番号等の情報も開示できるように有識者会議を設けているとの情報が寄せられています。
有識者会議のとりまとめ(総務省)

また,上で言及した刑事犯罪も,今後は裾野が広がっていって,捜査が動くようになりやすいのではないかと言われています。

詐欺等も振込詐欺が社会的な問題となったと認識されてきてからは,捜査側が目の色を変えて動き出してくれましたし,SNS問題も,炎上SNS等について警察等の取締が厳しくなってきているような気がします。

この件も,今回のことをきっかけに,意識が変わってくることは十分にありうると思います。

3 卑劣な誹謗中傷や嫌がらせ行為

インフルエンサーに対しては,「こいつは詐欺だ。」等の根拠のない誹謗中傷は日常茶飯事であるそうです。

メンタリストDaiGoさんのyou tube動画を見ていると,アンチがリアルタイムでどんどん書き込んでいることを動画中でお話しています。

はあちゅうさんやイケハヤさんらは,子供がいるのですが,児童相談所に「虐待をしている。」という虚偽の通報等もしょっちゅうされているそうです。

自宅の写真を載せられたり,自宅へのルートを動画でアップしたりしているようです。

本当にひどい話です。

4 有名人による賠償の動き

このような卑劣な行為に対して,今回の件もきっかけとなり,有名人やインフルエンサー達が立ち上がっているようです。

皆,訴訟準備をしているという宣戦布告をしています。

チャンネル登録者百万人を超えるようなユーチューバー等は,年収も億とかそういうレベルでしょうから,容赦はないでしょう。

5 法的措置のための準備

違法な書き込みだと思われるものはスクリーンショットをきっちり残していきましょう。

本気で裁判まで考える場合は,

「この違法な書き込みにつき削除を要請します。○○日以内に削除されない場合は,弁護士に依頼の上,削除,損害賠償についての法的措置をとると共に,刑事告訴を検討します。」

というような内容のDMを送るのも良いかもしれません。

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今後は,加害者も萎縮することが多いので,これで削除してくれるようなら,弁護士費用等もかからずに済んで良いと思います。

これで駄目ならやむを得ません。弁護士に相談して,とことん戦いましょう。

 
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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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