格闘技の試合や音楽ライブをYouTubeにアップした著作権侵害の賠償額 犯罪にもあたるの?【弁護士が解説】

法律時事問題を考察

昨日の那須川天心対武尊の決戦、主催者の方では、この試合が終了した後、すぐにYouTubeに試合の様子がアップロードされたのは違法であるとのことで、断固たる法的措置を執ると息巻いているそうです。
榊原信行氏 天心VS武尊の動画違法アップロードに激怒

格闘技の試合や音楽ライブをYouTubeにアップすることは違法なのでしょうか?
本記事では下記について解説します。

・格闘技等の主催者がYouTube違法アップロード者に法的措置を執ることはできるのか
・YouTubeの違法アップロードはどれぐらいの賠償額になるのか
・YouTubeの違法アップロードは刑事犯罪になるのか

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-01-460x460.jpg
櫻井弁護士

学校法人中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、千代田区・青梅市の「弁護士法人アズバーズ」代表、弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

1 格闘技等の主催者はYouTube違法アップロード者に法的措置を執ることができるのか?

格闘技の試合内容や音楽ライブにももちろん著作権(創作活動に対する権利)が生じます。
そのイベント内容に価値があるので、それを動画として公衆に送信できるのは権利者に限られます。これを「公衆送信権」といい、著作権の一種です。

そこで、了承なく試合会場で試合を動画で撮った者が、YouTubeにこれをアップすることは、著作権侵害であるといえます。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2021/06/CW_6239073-案03c-removebg-preview.png
事務員

実際、試合のチケットや約款にも「動画撮影をすること、試合の動画をアップすることは違法です。」といったことが、映画館の開始前に放映されるのと同様に、書かれているはずですものね。

この点、YouTubeでは、そのような公演がたくさんアップされているから、これはYouTubeのルール上、違法ではないと勘違いしている人がいるかもしれません。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-03-460x460.jpg
櫻井弁護士

しかし、それは、そのまま世間の目に届くようにしていた方がもともとの著作者としても、その作品や関連作品が世間に広がる等の利益があるから放置しているか、実際、配信することについて、著作者と配信者の間に何らかの合意があるにすぎないと思われます。

現に、「音楽」の場合は合意があると言えるのであり、チャンネルを収益化していない限り、YouTubeとJASRACの間に、音楽をYouTubeで使って良いという包括的な承諾契約が成立しているのです。

実際は、合意がない限り、試合内容の動画をアップすることは、やはり著作権侵害として不法行為(民法709条)です。
既に試合が終わった後であるから違法でないということもありません。

【MEMO】
なお、YouTubeのチャンネルから配信者がどこの誰なのかわからなくても、プロバイダー等に対し、弁護士の法的手続により相手の情報を開示してもらって、裁判等をすることは可能です。この手続は、今まではとても大変だったのですが、2022年10月頃までに改正された法律が施行され、少しやりやすくなることになっております。下記の記事にて詳しく解説しております。

2 YouTubeの違法アップロードはどのぐらいの賠償額になるのか?

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2021/06/CW_6239073-案03c-removebg-preview.png
事務員

では、主催者が賠償請求をする際、どのぐらいの金額になるのでしょうか。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-03-460x460.jpg
櫻井弁護士

この点、著作権法には、損害額は自動的にこれくらいになるという「推定」規定があります(著作権法114条)

著作権法114条1項は、本来販売できた数に、実際の販売額の利益率を掛けた分を賠償請求できるとしています。
本件のような違法アップロードであれば、違法アップロード動画で得られた再生回数(例えば50万回再生)に利益率を掛けた数字です。
もっとも、そこまで販売できないだろうことを違法アップロードの加害者が立証できた場合は、その分減額されます。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2021/06/CW_6239073-案03c-removebg-preview.png
事務員

この計算からすると、数千万円や数億といったとんでもない数字になる可能性もありますね。

また、著作権法114条2項は、実際に加害者が得た利益分を賠償請求できます。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-03-460x460.jpg
櫻井弁護士

実際にこれまでの事例では、14歳男子生徒が、漫画の配信をYouTubeでしたことで、19憶円の訴えを受けたとも言われています。
また、つい最近では、東宝映画が、映画の違法アップロードにつき、ユーザー達に5憶円の請求をしているとのことです。

3 YouTubeの違法アップロードは犯罪になるのか?

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2021/06/CW_6239073-案03c-removebg-preview.png
事務員

YouTubeの違法アップロードは民事の責任を超えて犯罪にまでなるのでしょうか?

この点、刑法上の犯罪ではないですが、著作権法上の犯罪があり、YouTubeに違法アップロードをした場合には、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられる可能性があります(著作権法119条)。
もちろん、逮捕されることや、刑事裁判を提起されることもありえるということです。

現に、前述の14歳の少年は、少年審判により裁かれたようです。

4 まとめ

YouTubeは、まだリテラシーが熟成していない上に、実際に違法な動画が多いので、著作権法というものを良く分からず、勢いでいろいろ炎上的なことをやってしまう傾向があるコンテンツであると思います。
しかし、実際に違法行為が行われた場合には、巨額の損害賠償を請求されることや逮捕される等、まっとうな生活を奪われる結果になりかねません。

https://as-birds.com/media/wp-content/uploads/2020/09/CW_6152793-01-460x460.jpg
櫻井弁護士

今回の那須川VS武尊の動画アップの問題に対しても、速やかに削除する等、冷静かつ適切な対応をすべきであると思います。

ネット上でのトラブルやご相談は弁護士法人アズバーズまでご相談ください。

弁護士費用と無料電話問い合わせ 【弁護士への依頼】

幻冬舎GOLD ONLINE 身近な法律トラブル

人気記事




櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

関連記事

特集記事

最近の記事

  1. 事実婚の増加とその理由 手続やその証明は?財産分与や相続等はあるの?

  2. ツイッターのリツイート、いいねは違法となるか?【弁護士が解説】

  3. 遺産分割協議書作成後でも協議のやり直しができる?やり直す場合の手続きの流れや注意点を解説

TOP