バカッター・バイトテロ・芸能人のプライバシー侵害投稿は犯罪!?【弁護士が解説】

法律時事問題を考察
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こんにちは。弁護士法人アズバーズの所属弁護士、菊川です。本日は世間を騒がせているバカッターについてお話します。

1 バカッター・バイトテロ・芸能人のプライバシー侵害のSNS炎上事例

事例①

私は大手飲食チェーンXで法務を担当する者です。

自社の従業員Aが、料理につばを入れているシーンを動画で撮影し、それをツイッターに掲載しました。
ツイッター上では
「Xの食べ物には全てつばが入っていて行きたくない。」
等の投稿が掲載されたりして、お客様が離れてしまい、当社の株価は大きく値をさげてしまいました。

当社は、Aに対してどのような法的措置をとることができるでしょうか。

事例②

② 私は高級ホテル内で営業する飲食店Yで法務を担当しています。
私の店の従業員Bが、芸能人Zが女性を連れて食事をしていたことを、盗撮した写真と一緒にツイッターでつぶやきました。
この投稿は広くリツイートされてしまい、これにより当店の評判は著しく下がりました。

当店はZから何か請求されるのでしょうか。
また、Bを解雇して損害賠償請求をしたいと思いますが、認められるでしょうか。

・バカッター・バイトテロとは?
・バカッター・バイトテロの場合の民事上の責任
・バカッター・バイトテロの場合の刑事上の責任
・有名人のプライバシーと侵害の責任
・なぜSNS炎上問題が起こるのか、その危険性

等を解説しつつ、上記の事案に回答します。

2 バカッター・バイトテロとは?

2013年頃に流行ってしまった「バカッター」と似たようなSNS炎上問題が最近また増えてきました。
バカッターというのは当時使われていたツイッターのパロディの造語です。

ツイッターの内容としては、飲食店等の店舗の中で問題を起こして、その動画をツイッター等のSNSでアップして炎上することです。
同じような造語として、インスタグラムを利用した場合の「バカスタグラムも使われているようです。

①のような事例は、アルバイトが「テロリズム」を行うということで「バイトテロ」とも呼ばれていました。

いずれにしろ、このようなSNSの炎上問題は、SNSが発展してきた現代においては必然の現象なのでしょう。
しかし、これを行うことはとても大きなリスクを秘めており、注意が必要です。

ここでは,SNS炎上を巡る上の2つの法律相談に回答します。

3 バカッター・バイトテロの民事責任:①の事例

①の事例の場合、Aは飲食店で働いている人ですから、Xとの間で雇用契約が成立しており、その内容の一つとして、当然店に損害を与えないようにする義務があります。

そこで、①の場合、ツイッターの投稿で店の評判が落ちることになりますから、雇用契約の義務違反(これを債務不履行(民法415条)といいます。)として、損害賠償義務が発生します。
雇用義務違反とは言えないような場合、また、そもそも従業員ではなく、客が同様の行為をした場合には、民法の別の制度である不法行為(民法709条)に基づいて、損害賠償を請求することができます。

実際に2013年に発生した、蕎麦屋のアルバイト従業員が洗浄機に入る画像をSNSに投稿した結果、その蕎麦屋が倒産してしまったケースがあります。
この事案では、つぶれた蕎麦屋が、アルバイトに対し、1000万円以上を請求する民事訴訟を起こしました。
裁判所での調整で和解が成立し、事件に関わった4人で合計200万円程度の賠償を支払ったと報道されています。

損害賠償を求める民事裁判では、実際の損害額を計算して、その賠償を求めることになります。
損害賠償額には、店舗の清掃・消毒代といった費用のほか、売上の減少に伴う利益の減少額も加えることができます(材料費等の経費がありますから、売上減少額全体ではなく、利益の減少額が損害となります)。

ただ、①の事例において、株価の低下自体をもって「会社の損害」というのは難しいでしょう。
そもそもX社がX社の全株を持っているわけではなく、X社の株をもっているのは、通常、大部分は他の株主や企業です。
また、「投資」というものには、こうした下落リスクも含まれていると考えられるからです。

ただ、2019年にも発生した、全国的回転寿司チェーンや超大型コンビニチェーンを舞台とするような事件では、一つの店舗だけではなく、それらの大企業全体の評判を下げ、売り上げが大きく下がるといったことも考えられます。
このような場合、数千万から数億円といった莫大な金額の賠償請求も考えられることになります。

上記の蕎麦屋の事件は和解で終わっていますので、判決が公表されてはおらず、計算の根拠等は不明です。
ただ、こうした事件では、訴えられた側の実際の支払い能力に限界がある場合が多く、実損額全ての賠償を得られないこともあります。

4 バカッター・バイトテロの刑事責任:①の事例

ところで、こうした問題が生じた場合には、損害の賠償を求める民事裁判とは別に、従業員に刑事罰が与えられることもあります。

①の事例では、Aが鍋の中のスープにつばを入れたとすれば、鍋はもう使えなくなるので器物損壊罪(刑法261条。3年以下の懲役又は30万円以下の罰金が考えられます。
「洗えばよい」と思われるかも知れませんが、飲食業で用いる鍋としては、精神的に嫌悪感があるので、もはや使うことができないと考えることができるのです。
また、Aの行ったことが営業妨害というレベルに至っている場合、業務妨害罪刑法233条~。3年以下の懲役又は50万円以下の罰金の成立の可能性もあります。

さらに、客や店員であっても、こうした行為をする人は、お店としては迷惑であり、いてほしくない者ということになります。
そこで、施設の管理権者の意思に反して店にいるということで建造物侵入罪(刑法130条。3年以下の懲役又は10万円以下の罰金)も考えられます。

X社は、こうした犯罪について、警察に対して「被害届」を出すことができます。
ただ、被害届が提出されても、警察には必ずしも捜査する義務は生じません。
そこで、被害届を出しても警察がなかなか動かない場合、X社は、警察(場合によっては検察)に対して、告訴を行うこともできます。
要件を備えた告訴がなされた場合には、捜査義務が生じます。

警察は、事件それ自体の被害の大きさだけでなく、その事件の社会的な影響力などを加味して、どのような刑事処分に繋げるかを考え、捜査を行うことがあります。

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過去の事例をみると、SNSに犯罪行為が投稿された場合は、模倣犯の連鎖を考えるからでしょうか、逮捕等を含む強制捜査に踏み切ることが多いといえます。

警察による捜査が終わると、事件は検察に送られます。
検察は、この事件を刑事裁判として起訴するか、それとも起訴せずに終結させるか(不起訴処分,起訴猶予処分)を判断します。
上のいずれも、犯罪自体としては比較的重くない犯罪なので、起訴されて刑事裁判を受けるまでは進まないことが多いでしょう。
ただし、不起訴処分の中でも起訴猶予処分は、被疑事実が明白な場合、つまり犯罪は行われていると検察官が認める場合に、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況を考えて、起訴しないというものですから、有罪判決の記録である「前科」は残りませんが「前歴」が残ることになります。

5 有名人のプライバシーと侵害責任:②事例

②事件では、Zは私生活上の事柄についてSNSに投稿されてしまい、平穏な生活を妨害されていますから、プライバシー侵害というBの不法行為による損害賠償請求(民法709条)ができると考えられます。

問題は、誰がそれを支払うかという点です。
Y店には、従業員であるBの勤務中の行動を監督する義務があるので、使用者責任(民法715条)が成立し、Bと共に、Zに対して損害賠償義務を負うことになります。

芸能人だから、その行動は報道されたり、広く周知されたりしてもプライバシー侵害とならない、という主張がされることがあります。
確かにそのような主張が認められる場合もあります。
しかし、この事件では、一般にプライバシーが守られることが期待される高級ホテル内のレストラン場所で、その従業員が盗撮をSNSに投稿しており、報道という正当な目的も認められません。
要するに興味本位での投稿であったのですから、プライバシー侵害が認められるでしょう。

①事件と異なって、Zの損害額の計算は難しいのですが、過去の事例では、有名なプロサッカー選手が、交際中の女優とキスをしている写真を掲載した雑誌社に対して、1200万円の損害賠償を請求して120万円の支払いが命じられたことがあります。
また、病気療養中の歌手の自宅内での写真を望遠レンズで盗撮して週刊誌に掲載した出版社に550万円の支払いが命じられたことなどがあります。

次にY店とBの関係をみると、まずYは、Zに支払った損害賠償金について、Bに支払いを求めることもできるとされています(「求償」といいます)。
ただし、YがBを十分に監督していなかった場合などは、Yにも落ち度がありますから、その額が制限されます。

なお、Bを解雇することについては、勤務上の悪行為があったという合理的な理由がありますから問題はないといえます。

6 なぜSNS炎上問題が起こるのか、加害者になることの危険性は?

ところで、なぜ、このようなことが多発するのでしょう。

やはり、SNSで目立ちたい、フォロワーを増やしたいと思っているのでしょうね。
今、若い人達の中には、お金よりSNSのフォロワー数(つまり「人気」)の方が価値があると考える人も多いようです。
しかし、フォロワーを増やそうと「炎上商法」が行き過ぎてしまうと、ここまで述べたような罰が課され、社会復帰は容易ではありません。
炎上商法に手を出す人は、ここまで述べてきた法的責任を甘く考えているのだと思います。

だとすると、被害者側としては、泣き寝入りをせずに、断固たる対応をして、実際に加害者が重い責任を負うことになってしまったという前例を作り、公表していくことが大切になってきます。
加害者になろうとする者がこれを躊躇することになるからです。

一方、加害者となってしまうと、損害賠償を支払う義務を負うだけではなく、犯罪者として処罰されたり、前歴が残ってしまったりすることもあります。
刑罰を受けなくとも,①事件のA、②事件のBのように、就職しているような人間であれば、雇い主から重い懲戒処分が下るでしょう。

また、最近では「巡回」と称して、SNS上の問題行動を吊るし上げる人達も増えています。
例えば、問題行動を行った者として、本名や住んでいるところをSNSに公表された場合、家族すら危険に晒すことになってしまいます。
しかも、一度本名をインターネット上に晒された場合、ほぼ永久に検索でヒットしてしまいます。
企業の人事担当者は、しばしば、就職希望者の氏名をネットで検索しますから、就職や転職に問題が生じることもあるのです。

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このことから、SNSのユーザーとしては、投稿する前に、その投稿内容に問題が無いか、自分のことだけでなく誰かが傷つくことがないか等、もう一度じっくり考えることが大切です。
とりわけ「炎上商法」は、取り返しがつかない結果となることを本記事で学んでいただければと思います。

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菊川 一将

菊川 一将

「弁護士法人アズバーズ」青梅事務所所長弁護士。 小・中・高校の10年間、バスケットボール一筋。2017年に弁護士法人アズバーズに入所。

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