私文書偽造!?開成高校の家族なりすまし問題 替え玉受験ではない!?【弁護士が解説】

最新時事問題の法的考察
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千代田区・青梅市になる法律事務所弁護士法人アズバーズの代表弁護士であり、学校法人中央大学の法実務カウンセル(インハウスロイヤー)として学校法務に精通している櫻井俊宏です。

開成高校のなりすまし問題、最高峰の私立高校にしてこの内容、なかなかショッキングな話題ですね。
本人が普通に開成高校に合格した後、その兄弟が本人になりすましてオンラインの講義に出ていたということです。
この行為は犯罪が成立しないのでしょうか。

・開成高校なりすまし問題の事案の概要
・私文書偽造等の犯罪が成立するか

等を中心に,お話します。

1 開成高校なりすまし問題の概要 替え玉受験ではない?

この事案は、弟が開成高校に合格し、兄がそのまま弟になりすまして、前期の講義を受けていたというものであるようです。
中学の「指導要録」が送られてないので、それを開成高校が出身中学に要請したところ、指導要録が別の中学に送られていたことから、なりすましの事実が発覚したようです。

確かにこの件は、オンラインの授業だったから最初に気づかれにくかったというコロナの時期特有の問題と言えるかもしれません。

しかし、その後、通学状態になっても教員が気づかなかったということで、よっぽど顔も似ていたのでしょうか。少なくとも、なりすましていた方はかなりチャラい風貌だったという説もあります。

発覚してからは、合格した弟についてはおそらく懲戒処分に基づいて学籍を除籍されたでしょう。
なりすましていた兄については「立ち入り禁止」となりました。
問題のあった卒業生が「立ち入り禁止」になることはたまにあります。

2 なりすまし問題で犯罪は成立しないのか

この事件の構図は、一見単なる「替え玉受験」のようにも思えます。
しかし、替え玉受験の場合は、Aが受験の手続をした後、その試験につき、試験だけをBが受けるというものです。Bが能力が高いと試験に受かりやすいことから、このようなことが行われます。
今回は、Aが受験の手続をした後、受験することにつき、Aがそのまま受験をして合格し、Bがその後Aになりすますというものであり、やはり正確には単なる替え玉受験ではありません。

刑法上の「偽造」とは、名義人と作成者の人格の同一性を偽ることを言います。
替え玉受験の場合は、実際に入試を申し込んだ名義人と違う者が答案を作成することにつき、公文書ではないテストという文書について名義人と作成者の同一性を偽る行為にあたるので、「私文書偽造罪」が成立します(刑法159条。最高裁平成6年11月29日決定、東京高裁平成5年4月5日裁判例)。

今回は,受験が終わるまでは実際には正当です。

しかし、その後、BはA本人になり代わって様々な手続文書を作成したでしょうから、おそらく形式的には「私文書偽造罪」が数多く成立しているでしょう。

また、そのような望ましくない者が学校の敷地に入っていたということで建造物侵入罪(刑法130条)の可能性も一応考えられます。

本件は、試験後、違法状態がずっと続いているといえますね。

3 まとめ

本件は謎めいております。

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動機も良くわかりませんね。どこかでバレることは重々承知だと思います。
なりすました方の名前で高学歴が得られるわけでもありません。
よっぽど、開成高校における最高峰の授業が受けたかったのでしょうか。
それとも今後他でもなりすまして生きていく気だったのでしょうか。

【2023.1.11記事内容更新】

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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