(連帯)保証における根保証の極度額についての民法改正により賃貸保証等はどうなるか?【弁護士が解説】

不動産法律問題
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「幻冬舎GOLD ONLINE」で身近な法律トラブルに対する対処法を交えた記事を連載している、弁護士法人アズバーズ代表弁護士の櫻井俊宏です。

幻冬舎GOLD ONLINE連載記事の第2回がアップされました。
貸金と保証の話です。

今回はこれに基づいて、保証契約について、

・保証契約とは?
・保証契約と付従性
・保証契約と補充性 連帯保証とは?
・包括根保証契約に関する極度額の設定【民法改正】

等についてお話します。

1 保証契約とは

保証契約とは、大元の借金等の債務の履行を担保とすることを目的として、債権者と保証人との間で締結する契約です(民法443条以下)。
「主たる債務」、すなわち大元の債務があることを前提に、債務者からその支払いがない場合には、保証人が保証債務を支払う責任を負うことを内容とします。
なお、あくまで債権者と保証人の間の契約となります。

2 保証契約の付従性

保証契約は、上記のように、「主たる債務」があることを前提としています。
そのため、主たる債務がない場合には、保証契約から生じる債務、すなわち保証債務も存在しません。 これは、保証債務の「付従性」(ふじゅうせい)と呼ばれます。

「付き従う性質」と読むとおり、主たる債務に何かが起きたときに、保証債務もそれに付き従います。
たとえば、主たる債務が消滅した場合は保証債務が消滅します。
そもそも存在しない場合はもちろん、途中から債務がなくなった場合も同様です。

主債務が存在するならば保証契約は残り続けるので、主債務者が仮に死亡しても、その相続人が地位を承継する限り、主債務も保証契約も残ることとなります。 借金(債務)も自動的に相続されるからです。

なお、保証人の地位も相続されるので、その点も気をつけておきましょう。

3 保証契約の補充性と連帯保証

また、保証契約には、主たる債務者が支払いをできない場合にはじめて責任を果たさなくてはならなくなる「補充性」(ほじゅうせい)という性質があります。

この補充性という性質から、
「先に主債務者に金を請求してくれ(主たる債務者へのお金の請求)」といった内容の催告の抗弁権(民法452条)と、
「Aに強制執行でも何でもして、それでも無理だったらこっちに請求してよ(主たる債務者の財産に執行をしてから請求)」といった内容
の検索の抗弁権(民法453条)

が導かれます。

そのため、債権者が裁判で請求してきても、保証人は「保証人に請求するのはやることをやってからでお願いします」という催告・検索の抗弁権を裁判上主張することができます。
これでは、保証契約を締結していても、債権の回収が難しくなるのは当然のことです。
そこで、実際にはほとんどの保証契約で「連帯保証」という契約が締結されています(例えば、賃貸借契約で連帯保証でないことは極めてまれです。)。

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この「連帯保証」である旨を契約書に記載しておくと、補充性がなくなり、催告・検索の抗弁権を主張されることがなくなります(民法454条)。
「保証人」という記載のところを「連帯保証人」と書いておくだけで大丈夫です。

4 2020年4月の民法改正と保証

2020年4月に民法の大改正がありました。保証契約も重要な部分が変わったので、少し説明します。

保証契約は、通常「ある特定の債務を保証すること」を目的としています。
しかし、それでは幅を持った内容の債務、たとえば賃貸借契約の賃借人が、賃料を支払わないだけでなく建物を破壊した場合等に、賃料債務についてのみ保証をしていたとしても、この建物破壊行為までは保証人に責任を負わせることができません。

このような場合には、幅広いいくつかの債務をカバーする保証をすることが考えられます。これを「包括根保証契約」といいます(民法465条の3以下)。

賃貸借契約については、賃貸借契約に関連する債務一切についての保証が考えられます。
もっとも、この根保証契約は幅広く債務を保証するので、債務者にとっては、予想外に多くの債務が発生する危険性があります。

そのため、2020年4月に民法が改正されるまでは、個人に対する貸金等の債務であった場合の根保証契約には極度額(最大何円まで保証することになるという上限額の内容)を設定しなければ無効となっていました。
しかしこれまでの民法では、例えば賃貸借契約のように、貸金意外で根保証契約をした場合に極度額を定める必要がありませんでした。
例えば、家が賃借人の過失により焼失した場合は、家自体の費用等、高額な全額を根保証人が責任を負うことになってしまっていたのです。

そこで新法では、貸金等の債務でなくても、根保証契約の場合には極度額を設定しなくてはならないというようになりました(民法465条の2)。

具体的には、建物を貸す際に個人が保証人になる場合には、極度額を定めなければ根保証契約は無効となります。すでに各不動産会社の賃貸借契約でも、この改正を踏まえた契約書になってきています。

すでに国土交通省が改正民法に準拠された賃貸借契約書のフォーマットを公表しています。

「(連帯保証人) 連帯保証人は、借主と連帯して、本契約から生じる借主の債務を負担するものとする。本契約が更新された場合においても、同様とする。
2.前項の連帯保証人の負担は、頭書及び記名押印欄に記載する極度額を限度とする。
3.連帯保証人が負担する債務の元本は、借主又は連帯保証人が死亡したときに、確定するものとする。
4.連帯保証人の請求があったときは、貸主は、連帯保証人に対し、遅滞なく、賃料及び共益費等の支払状況や滞 納金の額、損害賠償の額等、借主の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。」

なお、各不動産会社では、今の所、「連帯保証人」ではなく、以前から利用されていた保証会社を積極的に賃借人につけてもらうことによって対応してもらっているようです。
極度額を明記したものに連帯保証人のサインをもらうのが難しいからかもしれません。

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また、大学の入学の際に、学生の保証人として親などを記載するようになっていましたが、これも「標準的な在学年数の学費相当額」というような極度額の記載の入ったものに変更されつつあります。

5 まとめ

保証契約は、責任を負担する契約者本人でもないのに、その人と同様の責任を追わなくてはならない、危険な契約です。
安易に他人の保証をしないようにしましょう。

実際に、友人や遠い親戚の保証をしてしまい、人生を台無しにしてしまったケースを多数見てきております。

また、逆に、人にお金を貸す際には、このような担保をしっかり設定しましょう。
それがない場合は、戻ってこなくて当然と思って貸すべきです。

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櫻井 俊宏

櫻井 俊宏

「弁護士法人アズバーズ」新宿事務所・青梅事務所の代表弁護士。 中央大学の法務実務カウンセルに就任し7年目を迎える。

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