養育費不払は強制執行で対抗【幻冬舎ゴールドオンライン連載第8回】

新宿・青梅・あきる野・三郷の法律事務所弁護士法人アズバーズ,代表弁護士の櫻井俊宏です。
養育費を支払ってもらえず泣き寝入りになってしまっている方も多いのではないでしょうか。

養育費については,民事執行法が改正され,支払ってもらえない場合も強制執行がしやすくなりました。
幻冬舎ゴールドオンラインに掲載された記事を元に,養育費と強制執行について解説します。
具体的な事例も記載された弁護士櫻井俊宏の幻冬舎の連載はこちら

 

1 養育費について

養育費とは,夫婦が離婚している場合に,実際に子供に対する監護権を持って面倒を見ているどちらかが,相手に対して子供の生活費を支払ってもらう権利です(民法766条)。

なお結婚している最中に,収入が多いほうの配偶者が,少ないほうの配偶者に対して支払う生活費は,子供がいたとしても「婚姻費用」と呼ばれ(民法760条),養育費とは区別されます。

たとえば子供がいた場合,妻が子供を連れて夫と別居したら,妻が夫に対して支払う婚姻費用に関しては,その婚姻費用を支払ってもらう妻自身の生活費分も考慮されるので,養育費より一般的に高くなります。
養育費と婚姻費用は、監護している子供の人数、年齢、両者の収入等から、裁判所が用意している算定表に従って通常計算されます。

婚姻費用・養育費算定表

 

2 強制執行の方法

通常,裁判に勝ったからといって,そのまま裁判所が相手方から自動的に取り立てをしてくれるわけではありません。
裁判に勝つと判決書を得られますが,その判決書を用いて,さらに裁判所に対し,民事執行法上の強制執行の申立をします。

これは,判決のみならず,公証役場で作成された公正証書を用いた方法によっても可能です。

たとえば,相手方の預金口座を差し押さえることができます。この場合,その預金口座の金融機関・支店の情報が必要です。口座番号までは必要ありません。

この預金口座の情報に関して,判決をもって弁護士会を通した23条照会という手続を行うことができます。
この23条照会を申し立てると,弁護士会から金融機関に対し,その債務者の預金口座の支店・口座番号等の情報を開示してもらうことができます。
ただし、開示してくれない金融機関もあるのでその点は注意が必要です。
不思議なことではありますが、ゆうちょ銀行に関しては,支店の情報まで把握していなくても差し押さえることができます。

相手方の勤務先の給与を差し押さえることもできます。
ただ,給与が44万円以下の場合は,通常その4分の1までになります(養育費の場合は2分の1。民事執行法152条)。
44万円以上の部分に関しては差押の対象になります。差し押さえられた者の生活に必要な収入をある程度は確保させるためです。

なお一度給与の差押に成功すると,差し押さえられた者は,毎月,勤務先の会社において差押分を引いた給与が支給されます。
差押分のお金は差し押さえた者に対して支払われます。

しかし,差し押さえられた者が会社を辞めてしまうと効力を失うので注意してください。
ほかの会社に移ったのなら,もう一度新しい勤務先を調べ直し,差押をし直す必要があります。

さらに,不動産に対する強制執行や自動車に対する強制執行等もできます。

 

3 財産開示の手続

各強制執行の方法について解説しましたが,結局この強制執行の対象を探し出すのが一番難しいのです。
昔は探偵を雇って預金口座の情報を探すこともありました。しかし現在は,個人情報保護が厳しくなっているので,探偵により預金口座の情報を探し出すことは厳しくなっています。

裁判所を利用した法的方法としては「財産開示」という手続があります(民事執行法196条以下)。
一度強制執行の申立をしてもうまくいかなかったときは,裁判所の主導のもと,債務者を裁判所に呼び出して,財産内容を報告させる手続です。
財産開示の成功例と強化

財産開示手続は,以前まで債務者が裁判所に出頭しなかった場合や,虚偽の事実を話した場合でも,30万円の過料のペナルティのみでした。
この過料というのは犯罪ではなく前科にもならないので,債務者は,実際ほとんど裁判所に出頭しませんでした。
たとえ出頭しなくても,裁判所側は積極的に支払わせようともしません。

このことから,財産開示手続は旧法ではほとんど使われませんでした。
しかし,法が改正され,罰則が強くなったのです。

 

4 民事執行法の改正

これまで述べてきたとおり、強制執行は「相手方の財産の情報が求められる」「預金口座について担当支店まで調べなくてはならない」「給与を差し押さえても会社が変わった場合は再度差押をする必要がある」等、なかなか簡単にはいかない面がありました。 このことから改正が行われ、2020年4月1日から施行された民事執行法ではいくつかの強制執行方法が強化されています。

まず,前述の財産開示手続は,お話したように罰則が弱くほとんど実効性がない制度でした。
しかし改正により,6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金の制裁が課されることになりました(民事執行法213条1項5,6号)。
これは犯罪にあたり,違反すると前科がつくということです。
債務者がきちんと財産を開示する可能性が高くなったといえるでしょう。

さらに,強制執行をしても何の財産が見つからなかった場合,裁判所に対する申立により,裁判所が差し押さえできる財産について調査をしてくれる制度ができました。

まず,預金口座に関して,裁判所から各金融機関に,預金口座の支店,口座番号等の情報開示を要請することが可能になりました(民事執行法207条)。

不動産に関しても、裁判所から法務局に,その債務者が権利を有する不動産の情報開示を要請することができるようになりました(民事執行法205条)。

 

5 最後に

以上のように,これまでは泣き寝入りとなることが多かった養育費の未払い等につき,法は徐々に改善しています。
困っている方は積極的に利用することをオススメします。
具体的な事例も記載された弁護士櫻井俊宏の幻冬舎の連載はこちら

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