車の無断放置と明渡【幻冬舎ゴールドオンライン連載第13回】

新宿・青梅・三郷の弁護士法人アズバーズ、代表弁護士の櫻井俊宏です。
幻冬舎ゴールドオンラインの連載第13回、駐車場に黒塗り車無断放置の事案について、大きく反響をいただいております。
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幻冬舎ゴールドオンライン 弁護士櫻井俊宏の連載全13回

1 「警察では無理です」黒塗り外国車の滞納騒ぎ

「駐車場、貸してもらえますか。急ぎなんですが」

私の持っている駐車場の看板を見て、Aさんから直接問い合わせの電話が来ました。
最近空きスペースが多くなったこともあり、すぐ快諾しました。

「ちょっと立て込んでいるので、契約書は郵送してください」
(ずいぶん強引だな)と思ったものの、せっかくの打診だし断りにくかったので、駐車場の契約書を郵送しました。
契約書はサインされ、送られてきました。

契約当日の10月1日。
車を見に行ったら、衝撃を受けました。

「え…」
そこには、濃いスモークがほどこされた黒塗りの大きな外国車があったのです。
車内がまったく見えず、まさに、といった様相の車です。
私はちょっと不安になりました。

そして、やはり私の予感は的中しました。
1ヵ月目から賃料が振り込まれていません。例の車は置きっぱなしです。
契約書に書かれている電話番号に電話をしてもかかりません。

2ヵ月目も振込がなかったので、警察に相談しました。
「すまないけど、警察でこの件は扱えないですね…弁護士にでも相談してみてはどうですか?」
私は警察の対応に不満を感じながらも、弁護士事務所に行きました。

「明らかに違法な車なので、レッカー車で持っていてもらえませんか」
「違法かどうかは、明渡の裁判に勝たないと明らかにならないのですよ。それに裁判に勝っても、相手方が自分でどいてくれなかったら『強制執行』という裁判所の手続をしなくてはなりません」
強制執行までやる場合、弁護士費用や撤去費用を入れると明渡の依頼は100万円前後かかるそうです。
私はこの踏んだり蹴ったりの状況に愕然としています…。

 

2 駐車場の賃料不払いの場合は車を持っていってもらえるのか

本事例のような私有地への無断駐車が続いたときに、当然レッカー車で持っていってもらいたいと思うはずです。しかし、行政がそのようにしてくれる制度というのは私が知る限りでは存在しません。

では警察がなんとかしてくれるのでしょうか?
実は、警察は「民事不介入」といって民事の事件に関わることができません。
犯罪が成立しそうな場合に限り、捜査をしてくれます。

本件では、最初は賃貸借契約に基づいて駐車をはじめたのであり、1回も賃料を支払わない問題行動であるとはいえ、犯罪ともいえないケースになります。
私的にレッカー車で持っていった場合、Aが現れた際「勝手に動かされた!」と言われる可能性があります。
また、いずれにしろ高額の保管料等がかかるので現実的ではありません。

賃料を支払わずに置きっぱなしなわけですから、無断で公道にまで押し出し、公共団体に持っていってもらいたいところですが、Aが現れた場合に責められるリスクがあり、なかなかそういうわけにもいかないでしょう。
このことから、法律に則って解決していくのが通常です。

 

3 明渡訴訟

そこで、明渡の訴訟を提起します。
建物の賃貸借契約がある場合に、賃料を支払わずに住み続ける者に対して行う、明渡訴訟と同じです。

まず、訴訟を提起するためには車の持ち主が判明する必要があります。
もし実際に駐車場の契約を結んだAの持ち物ではなかった際に、裁判が空振りになってしまう可能性がありますので、車両のナンバーに基づき、陸運局にその車両の登録事項証明証を発行してもらいます。

その登録証に車両の持ち主の名前と住所が記載されているので、該当の名前と住所を記載して訴状を裁判所に提出します。これが訴訟提起です。
裁判所では相手方の住所に訴状を送ります。
それが届けば裁判が始まります。
しかし本件のような事例では、相手方は訴状を受け取らない場合が多いでしょう。
その際は弁護士が相手方住所地を調査してから裁判所に申請することによって、訴状が届かなくても裁判が始まるようにすることができます。
この場合、相手方が裁判に出なければ勝訴することができます。

 

4 強制執行

いずれにしても勝訴すれば、裁判所が自動的に自動車を引き上げてくれるというわけではありません。
今度は裁判所に対して申し立てる強制執行という手続が必要となります(民事執行法)。
強制執行が無事終了すれば、裁判所の執行官が主導となって、車両をレッカー車で引き上げ、裁判所がいったん引き取ってくれます。
その上で、いわゆるオークションである競売によって売却されることになります。

売却額が不払賃料やかかった費用に充てられることになりますが、車の場合は劣化が早いので、不動産のような値段はつきにくいです。

 

5 最後に

「自力救済禁止」というのですが、法律上、自分で勝手に自動車を廃棄することはできません。
これは、賃貸借契約の途中で賃借人が失踪したときに、その建物の中にある私物を勝手に廃棄できないのと同じです。
そこで、上記のように非常に面倒な手続を執らざるを得ないのです。

明渡はかなりの時間と費用が必要です。
強制執行までやる場合には、弁護士費用だけでも最低60万円は請求されますし、その他撤去の諸費用等まで入れると、(車か建物か、その大きさ等によって変わってきますが)数十万円はかかります。

賃貸借契約においては、建物賃貸借はもちろん、駐車場の賃貸借でも、貸す相手が信用できるかどうか良く検討する必要があるといえます。

幻冬舎ゴールドオンライン 弁護士櫻井俊宏の連載全13回

 

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