財産開示手続の改正 出てこないと犯罪!?【弁護士が解説】

こんにちは。弁護士法人アズバーズ三郷支部長の津城です。

先日、神奈川県警は民事執行法上の財産開示手続に正当な理由なく出頭しなかったとして、男性介護士を民事執行法違反の疑いで書類送検しました(記事はこちらです)。これは今年4月に改正民事執行法が施行されてから初の検挙だそうです。警察としても、財産開示手続に実効性を持たせることに関して協力的な姿勢を示しているものと感じます。そこで、今回は改正後の民事執行法上の財産開示手続の制度に関していくつか解説いたします。
財産開示の成功例についての記事はこちら

 

1 財産開示手続の概要

⑴ 裁判手続等によって判決などの債務名義を獲得した場合であっても、債務者が任意で債務を履行するとは限りません。そのような場合は、債権者は自ら債務者の財産を調査・発見し、強制執行を行わなければなりません。しかし、この調査はかなり大変です。例えば犯罪被害にあい、その損害賠償を請求する場合、相手方はそれまで見も知らぬ人の場合もあり、そのような債務者がどのような財産を所持しているのかは見当もつかないでしょう。また、元夫が養育費を支払わないが、現在どこに勤務しているかもわからない場合、元夫の現在の勤務地を調査することも同様に困難な場合があります。このような場合、民事執行法上の財産開示手続によって債務者の財産を調査することが考えられます。

⑵ 民事執行法第197条には以下のように定められています。

第百九十七条 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
第2項以下略

かかる要件を満たしたとき、裁判所は財産開示手続の開始決定を行い、手続きを行う期日を指定します(同法198条1項)。そして、債務者はかかる期日に出頭し、その財産について陳述しなければなりません(同法199条1項)。債務者は正当な理由のない限り、かかる期日に出頭し、財産について陳述しなければならず、これに反すると刑事罰が科されます(同法213条1項4号、5号)。

 

2 改正について

このように財産開示手続は、裁判所の手続きによって債務者の財産を調査することができ、強制執行にあたって有用な制度です。しかし、これまでは財産開示手続の期日への呼び出しを受けても、債務者が出席をしないケースが多く、その実効性には疑問がありました。そこで、民事執行法の改正に際して、財産開示手続も改正され、①罰則が強化された他、②第三者からの情報取得手続きが新たに定められました。

 

3 罰則の強化について

適法に財産開示手続が申し立てられ、裁判所が同手続の開始を決定した場合、裁判所は財産開示手続を行う期日を指定します。債務者は、かかる期日に出頭し、宣誓をしたうえでその財産を陳述しなければなりません。

正当な理由なく期日に出頭せず、または宣誓を拒んだ場合や、宣誓した債務者が、正当な理由なく陳述を拒んだり、虚偽の陳述を行った場合には刑事罰が課されることになります。

改正前は、かかる刑事罰は30万円の罰金とされていました。しかし、先述のように財産開示手続はその実効性に疑問があり、刑事罰が強化されました。

結果、改正民事執行法では、50万円以下の罰金又は6月以下の懲役が刑事罰として課されることとなりました。懲役刑が定められたことで、債務者は財産開示手続を無視することはより難しくなったと考えられます。

しかし、かかる罰則の強化も、警察等の捜査機関が実際に立件しないとなれば結局財産開示手続の実効性の確保には資さないこととなります。その意味で、今回神奈川県警が財産開示手続への不出頭を立件し、送検手続をとったことは非常に意味のあることであるといえます。

 

4 第三者からの情報取得手続き

⑴ 概要

先述したように、これまで民事執行法上の財産開示手続の実効性は必ずしも高いとは言えず、ま た、3のように罰則が強化されたとしても必ずしも財産開示手続が奏功するとは限りません。債務者が刑事罰を恐れず欠席する可能性もあるでしょう。改正民事執行法では、財産開示手続が奏功しなかったとしても、裁判所への申し立てを行うことによって、第三者機関から債務者の財産状況に関する情報を得ることができる手続きを定めました。かかる手続きによって、債務者が有する不動産、債務者の勤務先、債務者の預貯金に関する情報を得ることできる可能性があります。

⑵ 要件

第三者から債務者の財産について情報の開示を受けるためには、いくつか要件があります。のそのうちいくつかピックアップします。

ア 民事執行法197条1項各号のいずれかに当たること

要件として、まず197条1項各号のいずれかに該当することが必要です。これは、不動産、給与の情報、預貯金の情報を取得するについて共通の要件となっています。

イ 財産開示手続が行われてから3年以内であること

これも、不動産、給与情報、預貯金それぞれの開示手続に共通の要件ですが、第三者への開示手続を行うに当たってはまず財産開示手続を行っていなければなりません(財産開示手続の前置)。
さらに、かかる手続きを行ってから、3年以内に第三者に対する情報開示請求手続きを行わなければなりません。

ウ 給与情報の開示請求に当たっての要件

給与情報の開示請求を行うに当たっては、不動産・預貯金の開示請求にはない要件が課されています。

すなわち、勤務先情報の開示請求を行うことができるのは、生命または身体に関する損害賠償請求権か、婚姻費用・養育費等の権利に関して執行力ある債務名義を有している場合に限られます。これらの債権についての判決等債務名義を有していなければ、給与情報の開示を請求することはできません。

⑶ 影響

以上のように、いくつか要件はありますが、このように、裁判所を介して第三者機関に対して債務者の財産情報の開示を請求することができる手続きが定められたことは大きな意義を有するものと言えます。これまでの財産開示手続には残念ながら実効性があるとはいえず、債権者代理人が弁護士会を通じて調査を行ったり、債権者が例えば探偵を雇うなどして調査するしかありませんでした。しかし、第三者機関への情報開示請求が裁判所への申し立てによって行えることになったことで、債務者の財産の調査はこれまでと比してかなり行いやすくなったといえるでしょう。これまでの調査では発見できなかった方は、この制度を利用して債務者の財産を改めて調査するべきと思います。また、この改正によって養育費について、これまで回収できなかった方も、債務者の給与情報を取得して養育費の回収を行うことが行いやすくなります。

 

5 最後に

以上、民事訴訟法の改正についてその一部を解説しました。第三者への情報開示手続のうち、不動産情報の開示については、まだ法務局の体制が出来上がっていないため現在整備が行われているようです。その他の制度については現在すでに運用が行われているものと思います。未回収の債権について、上記の制度の利用を検討されている方は、ぜひ弊所までご連絡くださいませ。
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