調査嘱託・送付嘱託による預金等の開示請求【離婚の財産隠しに対抗】

離婚問題をこれまでに230件以上扱っている,新宿・青梅・あきる野の弁護士法人アズバーズ,代表弁護士の櫻井俊宏です。

離婚等において,夫婦の財産を管理していない側が,財産を隠されてしまって大変なシーンが良くあります。
そのようにならないようにするためには,別居等の前に相手方の預金通帳や保険証書等の内容を写真等におさめておくのが有効です。
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ただ,それができなかった場合には,他の方策を講じる必要があります。
その一つの方法として,離婚の調停・裁判になった場合に,文書送付嘱託・調査嘱託という方法があります。

 

1 文書送付嘱託・調査嘱託とは

文書送付嘱託とは,裁判所が,他の国家の機関や,一般の団体等に文書を送るよう求めることを言います(民事訴訟法226条)

調査嘱託とは,裁判所が,他の国家の機関や,一般の団体等に,一定の調査を求めることを言います(民事訴訟法186条)。

「調査」というワンクッションがあるかどうかの違いがあるだけで,それ程両者に違いはありません。

いずれの制度も強制力があるわけではありません。

ただし,国家機関は,同じ国家機関である裁判所の要請であるので,開示してくれる場合が多いです。

また,金融機関等も,正当な理由があればほとんど開示してくれます。

 

2 離婚事件でどのように利用するか

①上で申し上げた,裁判所を通した調停や裁判の手続の場合,訴状や準備書面といった書面の応酬が主な内容です。

例えば,夫に預金の存在を隠されていた場合,この準備書面において,

「〇〇は三菱UFJ銀行の預金口座を所持していたことを△△は把握しているが,同口座の支店・口座番号・名義等の情報を開示されたい。」

というようにまずは相手方からの任意の開示を求めることが多いです。

 

②しかし,それで開示しない場合に,「調査嘱託申立書」を裁判所に提出します。
裁判所は同内容が相当であると判断した場合は,裁判所の名義で,銀行に,そのような預金口座があるかどうかを調査して提出するように求めます。

そして,大抵の場合は,銀行は,同情報を裁判所に対して開示してきます。
この内容を当事者も取得できるわけです。

 

③開示してもらえないような情報もあるので,その場合には,より強制力を有する「文書提出命令」という手続を検討することになります。

 

3 預金についてどのような内容が開示されるか

預金の場合,その銀行の支店,口座番号,名義等はもちろん,現在残高や,一定期間の取引履歴も開示されます。

離婚事件で重要なのは別居時の残高なので,その内容の開示を請求する場合が多いです。

しかし,その前に,相手方が,預金を引き出したり,他の口座に送金して隠すこともあるので,その疑いがある場合には,別居時から半年前ぐらいまでの取引履歴を開示してくれるような場合もあります。この場合に,更に調査嘱託を申し立てることによって,送金先の預金口座の情報を開示してくれる場合もあります。
相続事件等において,数年にわたる取引履歴を開示してもらったこともありました。

しかし,メガバンクでも,10年ぐらいの長期間が経過するとその取引履歴を廃棄しているので,注意が必要です。

 

4 他にどのような内容が開示されるか

・もちろん,離婚事件において,証券や保険の内容等も開示請求することができます。

 

・携帯電話の情報等も携帯電話会社に開示請求できる場合があります。

 

・例えば不倫の事件で,メールの内容も開示されたこともあります。
不倫事件の証拠収集法3つについてはこちら

 

・例えば交通事故で,警察の捜査の内容も開示されます。
交通事故に遭った場合弁護士に頼んだ方が良い理由3つはこちら

 

・珍しいところで,不倫事件のラブホテルのポイントカード情報を示して,そのラブホテルに行った履歴が開示されたこともありました。

 

5 調査嘱託等に対する回答拒否は違法ではないのか

これに関しては,回答拒否が違法であるとして,損害賠償請求を提起した訴訟としてソフトバンクが,ある携帯電話番号の者の情報につき回答拒否した東京高等裁判所平成24年10月24日裁判例があります。
この裁判例において,東京高等裁判所は判決でこのように述べています。

 

「調査嘱託を受けた者が,回答を求められた事項について回答すべき義務があるにもかかわらず,故意又は過失により当該義務に違反して回答しないため,調査嘱託の職権発動を求めた訴訟当事者の権利又は利益を違法に侵害して財産的損害を被らせたと評価できる場合には,不法行為が成立する場合もあると解するのが相当である。」

しかし,本件では損害賠償は認められませんでした。
携帯電話の契約者のプライバシーを優先させたということになります。

上記のように,回答拒否が違法である場合の存在を示唆されたことで,画期的な判決であったと思います。

 

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