解約金と「平均的な損害」~消費者契約法9条1項【弁護士が解説】

新宿・青梅・あきる野の弁護士法人アズバーズ,青梅支部長の菊川一将です。

解約金規定が無効であると主張してその破棄を求める訴訟が,金沢地裁に提起されたようです。消費者契約法が問題となっています。

適格消費者団体についてあまり詳しいことは知らないのですが,無効確認訴訟でしょうか?

消費者契約法9条1項の「平均的損害」に言及しつつ,本件について考察します。

 

1 具体的事案について

今回問題になっているのは,被告(貸衣装業者)と原告(客)との間の契約における,解約金規定の有効性です。

ニュースによると,「衣装着用日の6ヶ月前までの解約には20%,6ヶ月から7日前までの解約は70%」の解約金が発生するとの契約だったようです。
一見すると後者の70%のほうが問題になりそうですが,今回は主に前者の規定が争われているんでしょうか。

「何が問題なの?双方が合意してるんだから有効な契約じゃないか!」と思われる方もいらっしゃると思いますが,必ずしもそういうわけではありません。

 

2 消費者契約法と本件事案への適用

携帯電話の通信事業者との契約(ソフトバンクなど)やアパートの賃貸借契約などでは,消費者は一方的に約款・契約書の条件を飲まざるを得ない状況にありますよね。
このように,消費者と事業者との契約においては,消費者は弱い立場に置かれることがほとんどです。

これはよろしくないということで,消費者契約法という法律があります。

ざっくり言うと,事業者が多くの情報を持ち,強い立場にあることから,消費者との契約に際して,やらないといけないこと・やってはいけないことを規定した法律です。

本件では,この9条1項「消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効」が問題になっております。

同条文は,極めてざっくり言うと,「高すぎる解約金の定めは無効」ということを規定しています。

もう少し正確に言うと,同種の契約が解除されたときに生ずる平均的な損害額と比較して解約金が高すぎる場合,それは無効な定めであるとの規定です。

本件で言うと,6ヶ月前までの解約なら他の人に貸し出すなどして損害が全く発生しないこともあるということで,9条1項に違反しているのではないかと争われているわけです。
貸衣装業者の具体的業務がわからないのでなんとも言えませんが,もっともな気がしますし,それなら6ヶ月後から7日前は70%という規定もざっくりしすぎて(6ヶ月と1日前と6ヶ月と1日後とで50%も金額が変わることの合理性が見いだせません)同様に無効なのでは?とも思います。
本件については今後の展開に注目です。

なお,この9条1項ですが,要するに「あまりに高い解約金・違約金の定めは無効である」というものですので,いろいろな消費者契約の場面で主張できます。過去には建築請負契約や大学の入学辞退に伴う前期授業料の返還請求などの件でも主張されたようです。

「契約書にある通り・・」と言われても,必ずしも言いなり・泣き寝入りの必要はないということですね。

 

3 消費者契約法9条に関するこれまでの具体的な裁判例の内容

①外語幼稚園の事例において,解除する場合に入園金全額没収とした場合に,1学期開始前の解除であれば,消費者契約法9条の平均的損害は生じないものとし,不返還特約は全て無効としました(東京地裁平成24年7月10日)。

 

②ホテルの宿泊料の事例で,宿泊前7日を過ぎた場合,50%のキャンセル料を徴収することは,消費者契約法9条の平均的損害の範囲内であるとし,適法であるとしました(東京地裁平成24年9月18日)。

 

③更に,パーティーの料金の事例があります。

平成13年4月8日,Xがパーティーのため,人数30~40人,1人当たり4500円で予約しました。店側が,翌日の4月9日,他の客の大口の問い合わせがあったので,あらためてXに予約の確認をしたところ,Xは,パーティーを行うことを返答しました。しかし,Xは4月10日,解約の意思表示をしました。

その店の規約では営業保証料が1人当たり5229円となっていて,全額請求できることになっていたので,店側は,40人×5229円=209,160円を請求しました。しかし。裁判所は,当初の4500円の30%に35人を乗じた47,250円の範囲で認め,それを超えた部分は平均的損害を超えるとしました(東京地裁平成14年3月25日)。

 

④美容整形手術の事例です。

美容整形手術の当日に,契約取消の意思表示をした場合に,既に支払われていた63万円の手術費全額は,平均的損害を超えないものとしました(東京地裁平成16年7月21日)。

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(2020.8.10更新)