神戸地裁による持続化給付金の差押禁止決定について【弁護士が解説】

新宿・青梅・三郷の弁護士法人アズバーズ、代表弁護士の櫻井俊宏です。

神戸地裁伊丹支部で、持続化給付金の差押を禁止する決定が出たようです。

持続化給付金の差し押さえ認めず
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20201203/2000038061.html

この結論は妥当なのでしょうか。


・債権の差押について、
・差押禁止債権について、
・持続化給付金差押禁止の結論の妥当性、


等について解説します。

 

1 債権の差押について

債権、つまり、誰かに対して何かを請求できる権利も財産です。
特に、お金を支払ってもらう権利については明確に財産です。

典型的には、銀行預金の債権を思い浮かべてもらえればよいでしょう。
銀行預金は、現金そのものではなく、個人が、銀行に対してお金を支払ってもらえるように要求できる権利です。

他に、このような差押が検討できる債権としては、給与債権等が考えられます。

例えば、AがBに対して、お金を支払うことを請求して裁判を提起し、判決で、
「BはAに対して、100万円を支払え。」
という判決が出たとします。

しかし、それでもBが支払おうとしない場合は、民事執行法に基づいて強制執行をする必要があります。
この一つの方法が、上述の預金債権の差押や給与債権の差押です。
AがBの債権を差し押さえると、金融機関や勤務先の会社は、その分をBではなくAに支払うことになります。
民事執行法の改正・財産開示の強化等について

 

2 差押禁止債権について

上記の給与債権は、Bの月額給与が44万円より少ない場合には、4分の1までしか差押えられません(民事執行法152条)。

Aが、養育費の債権に基づいて差し押さえる場合には、2分の1まで可能です。

給与が44万円を超える部分については、差し押さえることができます。
養育費不払についての記事

また、生活保護費や年金等は差し押さえることができません(生活保護法58条等)。

これらの制度は、差し押さえられる当事者であっても、最低限の生活は維持させるためにあります。

 

3 持続化給付金差押禁止の妥当性

では、持続化給付金の差押禁止は妥当でしょうか。

上記の最低限の生活維持という目的からすると、持続化給付金というものは、事業者に給付されるものであり、ちょっと趣旨が違うものであるような気がします。

神戸地方裁判所伊丹支部の谷口真紀裁判官は、持続化給付金について差し押さえを禁止する法律はないとしたうえで、
「新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受けている中小企業や個人事業者などの事業の継続や再起の糧とするためのものだ。債権者が代わって受け取ることは予定されていない。」
と実体的なことを理由としたようです。

確かに、日本の事業を絶やさないようにするためには、ある程度潤っている債権者に涙をのんでもらっても、ぎりぎりの状況にある事業者に給付されるべきであると考えます。

持続化給付金は、個人事業主には100万円、法人には200万円と、破産をするのにちょうど良いぐらいの金額であるのですが、差押えられて、このような使い方ができないとなれば、どうにもならず、自殺する者も増えるかもしれません。

このような緊急時の柔軟な法律の適用として、至極妥当な判決であると考えます。

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