相続コラム6 持戻し免除の意思表示の推定規定について(民法第903条4項)

相続コラム6 持戻し免除の意思表示の推定規定について(民法第903条4項)

 

こんにちは。弁護士法人アズバーズ,三郷事務所所長,弁護士津城です。弁護士法人アズバーズでは,相続事件に力を入れて取り組んでおります。その一環として,相続についてのコラムを不定期で掲載しております。今回は,2019年7月1日に施行された持戻し免除の意思表示の推定規定について解説いたします。

 

1 条文

相続に関する特別受益についての規定である民法第903条が改正され,第4項が追加で定められました。条文は以下の通りです。

 

第九百三条 (1~3は省略)

4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

 

2 概要

被相続人が,居住用の不動産を配偶者に贈与,遺贈した場合,それは特別受益として扱われるのが通常です。

特別受益となる財産がある場合,被相続人の財産に特別受益の財産を加えたものを相続財産とみなします。そのうえで,特別受益を受けた相続人については,その財産をすでに取得したものとして具体的相続分を計算することになります。

民法第903条4項は,要件を満たした場合に,被相続人がした居住用建物およびその敷地に関する遺贈,贈与について、上記の特別受益の処理を免除する意思表示があったものと推定する規定です。

 

3 趣旨

居住用物件について贈与や遺贈あった場合,それは特別受益になるのが通常です。しかし,長い期間婚姻していた配偶者に対して居住用物件を贈与ないし遺贈する場合は,その配偶者の長年の貢献に報いる趣旨であったり,その後の生活を保障する趣旨である場合が多いでしょう。

実際に,このような場合の贈与について,同様の理由から暗黙の持戻し免除の意思表示を認定した裁判例も存在しています(東京高裁決定平成8年8月26日)。今回の改正は,このような取り扱いを明文で定めたものになります。

 

4 要件

では,どのような場合に適用されるのでしょうか。

①婚姻期間が20年以上の夫婦であること

婚姻期間が20年以上の夫婦であることを要します。

婚姻期間は通算であればよく,結婚離婚を繰り返した夫婦でも,通算で20年以上であればよいとされています。

また,「夫婦」とは法律上の夫婦でなければならないとされています。つまり,事実婚は含まれません。

 

②対象が居住用不動産であること

贈与,遺贈された物件が居住用不動産が対象であることが必要です。住居兼店舗のような場合にはその都度判断していくことになるでしょう。

また,原則として,贈与,遺贈時において居住用であったことが必要です。

 

③配偶者に贈与,遺贈されたこと

贈与,遺贈されたことが必要です。

例えば,「相続させる」旨の遺言は,遺産分割方法の指定であるとされています。したがって「相続させる」旨の遺言の場合には,民法第903条4項は直接適用することはできません。

もっとも,この場合でも,遺言の解釈によっては,結果的に同項の規定を適用したのと同じこととなることもあるかと思われます。

 

5 効果

上記の要件を満たす場合には,居住用不動産の贈与,遺贈について,持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。

 

6 さいごに

適切な居住用不動産の贈与,遺贈を行う際には,今回の改正を考慮したうえで行わなければならないでしょう。

私が所長を務める弁護士法人アズバーズ三郷事務所は,三郷駅徒歩2分とご利用しやすくなっております。ぜひご相談くださいませ。

 

弁護士法人アズバーズのHPはこちら

三郷事務所についてはこちら

 

文責 津城耕右