交通事故と後遺障害 【序・4】症状固定と後遺障害診断書作成

【本稿の趣旨】
・症状固定とは,これ以上治療を続けても効果が出ない状態をいう。
・症状固定後の治療費は原則として加害者に請求できない。
・症状固定診断の後,後遺障害認定申請を行っていくため,後遺障害診断書を作成する。
・認定結果に不満があれば,異議申立も可能。

 

1 症状固定とは

事故後しばらく治療を継続していると,完治することもあれば,あるときを境にこれ以上治療の効果があがらない状態になることがあります。
この状態を「症状固定」といいます。

症状固定か否かを診断するのは医師です。
典型的に多いむち打ちなどの神経症状の場合は,痛みが続いていても概ね3~6ヶ月程度で症状固定の診断がされることが多くなっています。
それ以外の多くの症状の場合は客観的な資料から判断されることになります。

症状固定の状態になったということは,それ以上の治療が医学的な意味を持たない=症状固定後の治療は意味がない=事故との因果関係がない,ということを意味します(厳密には少し違いますが)。
したがって,症状固定後に痛みがあるからと言って治療を継続しても,加害者側は原則としてその分の治療費を支払う義務はなくなります。
また,通院の因果関係も否定されますから,症状固定後の通院によっては慰謝料も増額しません。

また,症状固定により,事故によって生じた損害が客観的に確定することになります。
そのため,症状固定をもって,後遺障害(後遺症)があるか否かの判断ができることとなりますので,このとき以降,後遺障害認定申請の手続きを行っていくことになります。

むち打ち症の場合,他覚的所見(=CT等画像)での異常がないため,医師によっては早期に症状固定の診断をすることがあります。
しかし,詳細は別の記事に任せますが,この対応には被害者側としては看過できない問題があります。

 

2 後遺障害診断書を作成

症状固定の診断を受けたあと,医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらいます。
これとその他に関連する資料をもって,損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所に対し,後遺障害認定申請手続きを行います。

手続きに際し,一番重要なのは後遺障害診断書の書きぶりです。
医師によってはほとんど内容のない診断書を作成する方もおりますが,その場合には書き直しを要求することもあります。
中にはへそを曲げて書き直しに応じない方もいますが・・こうしたこともあり,違和感を覚える医師だった場合には早期に転院することをおすすめしています。
転院についての記事

また,これまでの診断書や治療内容などの資料も参照されますので,こちらも重要です。特に神経症状の場合には,被害者がへたに医師に症状が良くなっていることを伝えると,診断書やカルテ中に「症状改善,治癒」などと書かれてしまうことがありますが,このような記載がされると後遺障害が認められにくくなることがあります。

事案によりますが,概ね申請から2~3ヶ月程度で結果が出ます。これによって満足の行く等級が認められればいいですが,場合によっては後遺障害自体が認められなかったり,等級に不満がある結果となる場合があります。
例えば,むちうち症状では,最も低い等級である14級が認められる場合も半分もありません。
14級が認められるかどうかで0か100かというぐらい差が出てくるのは違和感をいつも感じていますが…

 

3 異議申立の方法

こうした場合,その結果に対する異議申し立てを行うことができます。
追加で医師の意見書を提出したり,参考文献を添付するなどし,こちらの有利な結果が出るように請求します。
ただし,一度適正な審査を経て出た結果ですから,これを覆すことは容易ではなく,認められないことも多いです。

いずれにせよ,この後遺障害認定申請手続きを行い,その結果が出ることで,相手方に請求できる金額が定まりますので,これ以降損害額を計算し,相手方と示談ないし裁判を行っていくことになります。

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