交通事故と後遺障害 【二・4】休業損害について

【本稿の趣旨】
・休業損害とは,事故と因果関係を有する休業による損害をいう。
・症状や仕事の内容応じて,認められるか否かが異なる場合がある。
・自営業者や役員でも請求できるが,雇用関係の場合より綿密な立証を要することがある。

休業損害とは,事故による入通院又はその症状のために仕事を休まざるを得なくなった場合で,それによって本来得られるべき収入等が減額された場合のその減額分をいいます。

通常,職場に「休業損害証明書」を作成してもらい,それをもとに相手方に請求します。
これは,雇用主が休業した期間を証明し,その休業期間内に減額したかどうかを明らかにするものです。
これがないと休業損害を受けられなくなるというわけではありませんが,休業や減額の証明を別の手段でしなければなりません。

また,休んだからと言って直ちに全額が損害として認められるわけではありません。
「事故によって休まざるを得なくなった」場合の休業のみが損害として認められるのであり,休む必要がないのに休んだ場合には損害としては否認されます。
この「休む必要」が曲者で,被害者としては痛みがあるから休みたいと思っていても,客観的に見て休業が正当化されない場合や,医師としては業務復帰可能という診断をしているような場合には否認されます。

これは,業務内容とその具体的症状との兼ね合いで判断されます。例えば,肉体労働者の場合,上腕骨骨折の傷害を負った場合は,それがほぼ完治するまで休業は正当化されるでしょう。
翻って,事務職員の場合で画像上は異常のないむち打ち症を発症しているような場合,しばらくは休業も正当化されうるでしょうが,2か月,3か月と経過するにつれて,休業の正当性は疑わしく判断されることとなるでしょう。

自営業者の場合でも休業損害は請求できます。しかし,休業損害証明書による証明ができませんから,被用者の場合と比べて立証に難がある場合があります。

取締役や社長のような役員の場合は,休んだからと言って直ちに報酬が減額される関係にはないため,休業損害の請求が困難です。この場合,取締役等としての業務のうち,役員報酬そのものの分と実質的に雇用関係にあることに対する対価分とを様々な事情から判別し,雇用関係にあることの対価分を請求していくことになります。

主婦の場合でも,その主婦労働は原則として経済的価値を有しますので,休業損害を請求できます。この場合,休業損害証明書は存在しませんから,通院の頻度や症状の程度をもとに,適切な損害額を請求していくこととなります。

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