不倫事件における裁判で特に問題になること3点【弁護士が解説】

不倫事件の損害賠償請求事件においては、双方に弁護士が就いた場合、交渉でまとまることも多いです。
賠償額の相場感がはっきりしているからです。

しかし、もちろん、交渉では妥協点が見いだせず、裁判になることもあります。

この記事では,不貞(不倫)事件において、不倫をした相手方との損害賠償請求の交渉が決裂し裁判になった場合、特に問題になる、


・加害者が否認をした場合、
・ダブル不倫であった場合、
・賠償額に争いがある場合、


の3つについてお話します。

中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、
新宿・青梅・三郷の「弁護士法人アズバーズ」代表、
弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

 

1 加害者が否認をした場合

これが典型的に不倫事件がこじれ、裁判になる場合でしょう。
裁判上で、「不貞」といえる行為があったかどうかが争いになります。

当然,訴えた方は証拠をもって立証しなくてはなりません。
まず、典型的な証拠は探偵の報告書です。探偵の報告書でラブホテルに行っていることが立証されるような場合は、性交渉、すなわち不貞があったと推定されます。
不倫慰謝料と探偵費用

逆に言うと、
「ラブホテルまで行ったが、性交渉はしなかった。」
という否認をする人がいますが、ほとんどその主張は通用しません。

このような事案で、
「新しく作るオフィスの内装の参考にしたいから、従業員の女性とラブホテルに2、3回行った。」
というくだらない主張をしてきた相手方がいました。
この事案では、ラブホテルのポイントカード(スタンプを押すタイプではなく、カードの中にデータがあるタイプ)をおさえていたので,調査嘱託という裁判上の手続により、裁判所がホテルに行った回数等をラブホテルに問い合わせ、2、3回ではなく何十回と行っていたことを明るみにすることができました。
調査嘱託・送付嘱託による証拠の開示請求

自宅に相手を入れたが、その相手が日中に帰ったという場合は微妙です。
他にも不倫を推認させる補強的な証拠が必要でしょう。

また、加害者側が不倫を認めた書面(例えば「誓約書」)を書いた場合も、不倫の事実が立証できる場合が多いです。
しかし、後の裁判等で、
「『不倫』という意味を知らなかった、性交渉まではしていない。」
という主張が通ることもあるので、「○○と肉体関係を結んだことについて謝罪する。」などというように,きっちりと性交渉までしていることを認める内容の書面を書かせた方が良いでしょう。

また、当然、録音やGPS等を配偶者が気づかないうちにしかけ、証拠を収集することも有効です。
相手方がきづかないうちにセッティングしても、違法ではありません。
不倫の証拠を集める際の気をつけるポイント3つ

最近ではLINEのやりとりが証拠となる場合が多いです。
LINEのやりとりは消されると再現が難しいので、見つけたら、その場で、そのスマホごと写メで撮って証拠を残しましょう。

通常はやりとりをスクロールして、一枚一枚写メで撮って証拠として提出することが多いです。
ただし、あまりに量が多い場合には、「トーク編集」等を活用しましょう。
不倫の証拠といえばLINE どのように集めればよいか

 

これらの証拠提出をしても相手方が口を割らない場合は、裁判の終盤で証人尋問が行われます。

最初から相手が非を認めなそうな場合であれば、証拠を残しておき、証人尋問の場で「弾劾証拠」としていきなり出すこともできます。
弾劾証拠は突然出すことができるので、相手方を慌てさせることもでき、裁判官に印象づけることもできるので有効な手段です。
裁判における証人尋問中の弾劾証拠提出

 

2 「ダブル不倫」の場合

「ダブル不倫」とは、不倫をした男女両当事者に配偶者がいる場合をいいます。

ダブル不倫の場合は、そもそも裁判となるとその加害者の配偶者にバレるということを考慮する必要があります。
裁判所に訴えを起こすと、自分の配偶者と不倫を行った者のその家に訴状が届き、下手をすると受け取った者に訴えられたことがバレるからです。
具体的にいうと、夫Bが、結婚しているC女と不倫をしたとき、そのC女の夫Dから裁判を提起されることが考えられます。その場合、自分の妻が家でDが提起した訴状を受け取ってしまう可能性があるということです。
このようなことが起こると、自分の家庭が崩壊となってしまう可能性があるので、注意が必要ということです。

ダブル不倫で裁判にまでなると、4当事者の思惑が複雑に絡み合い、泥沼になってしまうので、かえってそれぐらいの状況に追い込むという仕打ちをしたいという場合以外は、なるべく裁判をすることは回避した方が良いように思います。
加害者側は、ちょっと相場より多くの賠償を支払っても、家庭を壊すぐらいならと、穏便に解決するべきです。

あと、ダブル不倫の場合、自分の夫Bが相手の夫Dに先に交渉で過大な金額といえる300万円の賠償を支払ったとして、妻Aが相手の妻Cに裁判をした際、同じ300万円を支払ってもらえるという判決をもらえるかというと、そうはなりません。
通常、相場通りに落ち着きます。
なので,ダブル不倫の場合,先に誤って高額の賠償をしてしまわないことには注意が必要です。
ダブル不倫の場合の対処方法

更に、ダブル不倫の場合は、被害者が離婚をするつもりかどうかでも利益状況がかわってきます。

例えば,夫Bに不倫をされても妻Aが結婚生活を続けていくつもりかどうかです。

被害を受けた者が離婚を決めた場合は話が早いです。
妻Aとしては、相手の女C又は夫Bからできる限り多くの賠償を得て、夫Bとも離婚し、できる限りの今後の生活費を得ればよいのです。
【参考】不倫された場合の賠償請求方法
【参考】離婚調停において気をつけること

しかし、妻Aが、夫Bと結婚生活を続けていくのであれば、夫Bが不倫したことについて不倫相手である相手妻Cに賠償請求していく際、それが相手の夫Dにばれてしまうと、面倒なことになります。
前述のように、相手の夫Dが自分の夫Bに対して賠償を請求することになるからです。

このようになってしまうと、今後夫婦生活を続けていくつもりのAB夫婦としては、不倫相手である妻Cから100万円回収したとしても、相手の夫Dが夫Bから100万円を回収されてしまっては、夫婦全体としては結局何の利益も得られないことになってしまいます。

それどころか、相手の妻Cと相手の夫Dが別居したり離婚したりした場合は、別居することになるような不倫により、夫B の方が相手の夫D に対して精神的損害をより多く与えたとなってしまい、100万円よりも更に慰謝料が高くなり、かえって請求をしたことが損になってしまうことも考えられます。
幻冬舎ゴールドオンライン連載第10回 ダブル不倫

もし、離婚をするつもりがなく、相手の家庭も離婚をするつもりがないのであれば「ゼロ和解」といって、お互いに賠償の支払いはゼロで、今後関わりをもたないという内容だけ約束をして終わりにするべきです。
ダブル不倫 ゼロ和解等の対処方法

3 賠償額に争いがある場合

通常の不倫事件の場合で裁判になるのは、金額で折り合いがつかないときでしょう。
確かに、
「私は,こんなにパニックになってしまっている、精神的にも参っているという診断も出た。だから1000万円が妥当だ。」
というような主張を繰り広げる人はいます。

しかし、残念ながら不倫事件の場合、裁判所は、
結婚期間,
性交渉の頻度,
離婚になりそうかどうか,
等の要素で損害賠償額を算定します。
これら以外の理由は、いくら主張してもほとんど考慮しません。
判決内容を見ると、裁判官は、主張した内容を見ていないんじゃないかとすら思うこともあります。
不倫の裁判における基礎知識

また、判決内容に不満があって高等裁判所に控訴しても、実務上、ほとんど賠償額が変わることはないようです。

不倫事件では、上記の結婚期間や性交渉の頻度、離婚になりそうかどうか等の要素で、どのぐらいの賠償額になるかは、実務上かなり明らかになっています。
そして、その結果はほとんど変わることはありません。

すなわち、不倫事件では、弁護士が不倫事件に慣れていない等の事情で相場感がわかっていないようなことがない限り、ある程度のところでおさめるのが良いと考えられます。
裁判では不倫の有無や内容という精神的に負担のある事実について徹底的に戦うことになるので、お互いに、時間・精神・弁護士費用をいたずらに奪われることになります。
不倫事件の賠償額の相場感について詳しくはこちら

(2021.2.2更新)

 

幻冬舎ゴールドオンライン 弁護士櫻井俊宏の身近な法律トラブル防止に関する連載 全13回