不倫を行った有責配偶者への裁判等での対抗策【弁護士が解説】

離婚の際に、不倫を行った側のことを「有責配偶者」といいます。
有責配偶者は、裁判所を通した手続では極めて不利なのですが、それを理解せず、強気に出てくる有責配偶者がちょくちょく見受けられます。
この有責配偶者との離婚の際に有効な対抗策について、


・不倫をした有責配偶者とは?
・有責配偶者への裁判での対抗策、
・有責配偶者に対する仮差押(1)~家を売られそうな場合~、
・有責配偶者に対する仮差押(2)~預金を隠されそうな場合~、


等についてお話します。

中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、
新宿・青梅・三郷の「弁護士法人アズバーズ」代表、
弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

 

1 不倫をした「有責配偶者」とは?

「有責配偶者」とは、結婚当事者のうち、自分に離婚に至るような責任がある当事者のことを言います。
ほとんどのケースは,不貞行為(不倫)を行ったものです。肉体関係,それに準ずる不貞行為が必要と言えます。
例えば異性と手をつないだ,異性と食事に行ったというぐらいでは,有責配偶者とはいいにくいでしょう。

他に典型的な場合として、DVの場合等があります。

この有責配偶者からの離婚請求は、相手方が納得しない限り、基本的には裁判所が認めません。
裁判の判決で、離婚を認めない判決が出ます。
離婚の紛争は、基本的に裁判所では調停を先に行わなくてはならないので(調停前置主義)、調停→裁判とかなりの時間をかけて行われたとしても認められない場合があります。
調停前置主義など離婚調停で重要な点のまとめはこちら

 

有責配偶者からの離婚請求が裁判上認められるのは、
①別居期間が両当事者の年齢及び同居期間から考慮して長いこと(10年以上ぐらいが目安)
②未成熟の子が存在しないこと
③離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するとは言えないこと
(最高裁昭和62年9月2日判決)
です。

かなり厳しい要件です。
基本的に不貞の事実が相手に知られたときは、相手に了承してもらえない限り、離婚はできないと言ってよいでしょう。

 

2 有責配偶者への裁判での対抗策

上で説明したように、有責配偶者が離婚をしたい場合には、相手方に了承してもらう必要があります。
そこで、アプローチとしても下手に回って、それなりに責任をとる提案が必要です。

私が見た事案では、男側が家のローンを全て支払った後、女性側にその不動産を渡して離婚してもらったという事案があります。

しかし、不貞をしながら離婚を迫ってくるような男は、往々にしてそのような態度ではないことが多いです。身勝手だからこそ不貞をするのです。
強引に配偶者に離婚届を書かせようとするなどの事案が多いです。

このような次第なので、不貞をした側でありながら離婚をしようという人は、その性質上、無理な要求をしてくることが多いです。
そこで、私達の事務所では、不貞をした側でありながら離婚を請求したいというケースは、現在、基本的にお受けしておりません。
逆に、体育会系事務所として、不貞をした者を相手方にするようなケースは、積極的にお受けし、力強く解決していっております。

 

そのようなケースでは、不倫をされた側はどのようにすれば良いのでしょうか?
・まず別居をしましょう。一緒にいると離婚できないことに関して八つ当たりをしてきて、精神衛生上よくありません。

・その上で、裁判所に婚姻費用分担請求の調停を提起しましょう。自分から家を出たケースでも、相手に生活費を請求できます。
婚姻費用は、両者の収入と子供がいるかどうかで決まります。
数万円から、多いときには10万円以上支払わなくてはならないことになります。
しかも、これは、原則として調停を提起したときからの金額を請求できます。

この婚姻費用を支払い続けなくてはならない状態におかれることによって、不貞をした側はようやく自分の立場を思い知ります。
譲った条件で離婚をしてもらわなくてはならないことを自覚するはずです。
婚姻費用の請求の際に注意すること

 

・更にプレッシャーをかけるのであれば、不貞の慰謝料に関して損害賠償請求の裁判をしましょう。
不貞相手にでもいいですし、不貞相手がお金がなさそうであれば、そのまま配偶者に対して請求しても構いません。
両方まとめて訴えることもできます。
不倫事件における裁判で問題になること3つ

ただ、裁判では、ある程度厳格な証拠がないと、負けることもあるので注意してください。
探偵の証拠やLINE、録音や誓約書等、証拠をしっかりと集めていく必要があります。
不倫の証拠を集める上での注意点

なお、300万円から500万円ぐらい請求しておいて、100万円~200万円ぐらいの賠償が認められるのが通常です。
不倫の損害賠償請求で過大請求は弁護士費用がかさむ!?

 

このような断固たる態度に出ることによって、そのような有責配偶者は、自分の立場を認識しはじめ、真っ当な離婚条件を提案してくるようになるでしょう。

 

3 強行手段に対する仮差押(1)~家を売られそうな場合~

仮差押」という手続があります。
相手方に対して何らかの請求権がある場合に、その請求権の金額を回収するために、相手方がまだ油断しているときに、自分の財産を動かすことができなくする裁判所を通じた手続です。

私達が実際に遂行した有責配偶者に強引に家を売られそうになったケースで、仮差押により家の売却を防止できた方法を紹介します。

このケースでは、男が、不倫をし、別居をした後、こちらに弁護士が入っていて調停が行われていたにも関わらず、妻がまだ住んでいる家を強引に家を売ろうと、(おそらく闇の)ワールドなんとかいう不動産屋に相談していました。

その不動産屋から、こちらの依頼者である妻が住んでいる家に、
「すぐ出ていくプランなら何円で売れる、妻が居住したまま売却するプランでは何円で売れる。出ていかないならそのまま売るプランで進めます。」
というような説明書面が、妻が住んでいる家に届いたのです。
いわば間接的な「住んでいても家を売るぞ」という脅迫状です。
男もひどいですが、この不動産屋もひどいものです。

このケースでは、男は不倫自体は認めていました。
ということは。妻が夫に対して慰謝料損害賠償請求権を有しています。
そこで。その損害賠償請求権を確実に実行するためという名目で「仮差押」を行いました。
相手に知れないように「不意打ち」のような形で、家を売れなくする方法です。
家を売れなくすることによって、損害賠償請求を家の売却代金からとる準備のための手続といった位置づけです。

裁判官も、
「このままでは家が売られてしまう、早く仮差押を実行した方が良いですね。」
と快諾してくれました。

そして、仮差押は実行され、その家の登記簿謄本に「仮差押」がされた旨が記載されることにより、不動産会社も買いたくなくなるので、男の方で家が売れなくなりました。

次の調停期日以降、打つ手がなくなった相手方は、妻にきちんと慰謝料と財産分与をするように話してきて、その後、有利な条件で和解をすることができました。

なお、この仮差押は、相手方の意見を聞かずに認めるかどうかを決定することから、ひょっとすると財産隠しとはいえない状況である際はその相手方(「債務者」といいます。)に損害を与えてしまう恐れもあるので、申立人は、担保として、裁判所の決めたお金を事前に納付する必要があります。

動かせないようにしたい相手方の財産の金額の10~30%程度が通常です。
つまり、1000万円分の預金を凍結させるためには、100~300万円ぐらいの担保金が必要ということです。

 

4 強行手段に対する仮差押(2)~預金の財産隠しをされそうな場合~

次のケースは、離婚の調停中に、夫が、自分の預金からお金をどんどんおろして、財産分与をしにくくする、いわゆる「財産隠し」のケースです。

このような場合の仮差押はどのように行うのでしょうか。

相手の財産隠しの恐れについて、離婚調停中であれば「調停前の仮の処分」という手続を申立てることができます。
しかし、この手続には強制力はありません。
調停委員会が、隠そうとしている当事者に対し、何らかの処分を行うだけの手続です。

そこで、前述同様、一般的な民事上の仮差押を行う必要があります。

財産隠しに対抗するため、「財産の分与請求権を守るために仮差押」を申立てるのが通常であると思います。
財産隠し等を防いで財産分与を有利に進める方法

ただ、このケースでは、
・相手方が著しい不貞を行っており、
・財産も査定が難しいものが多く含まれていて、すぐに財産分与請求権を守るための仮差押の書類を作成することが難しい状況でした。

そこで、急ぐ必要もあったことから「不貞に基づく慰謝料請求権」を守るためという目的で、仮差押の申立てを行い、認められました。
大きく慰謝料が認められるようなケースは、迅速性を重視して、このようなやり方も有効であると思います。
不倫事件における裁判で問題になること

 

5 まとめ

以上のように、有責であるにも関わらず離婚を迫ってくる者には、断固たる対応をした方が良いと思います。
逆に、有責であるにも関わらず離婚をしたいと思う場合には、下手から出る態度が重要になります。

特に相手方に弁護士が入っている事案では、上記の二つの事例のように、逆ギレしてもジリ貧になることがほとんどです。

 

幻冬舎ゴールドオンライン 弁護士櫻井俊宏の身近な法律トラブル防止に関する連載 全13回