モンスタークレーマーへの対応法 録音?メール?【弁護士が解説】

最近は、正当性がなくただわめきちらすだけ等のいわゆる「モンスタークレーマー」が増えています。
生徒の父母(モンスターペアレント)客(カスハラ)、道を歩いている相手へのクレーム等、あらゆる場面でモンスタークレーマーの増長が見受けられます。
カスハラについての記事はこちら

もちろん、正当なクレームは法人にとって宝と言えます。
正当なクレームの内容にはその企業の問題点、向上のもとが詰まっています。
また、クレームに対して丁寧に対応することにより、クレーム前よりもその企業のイメージがよくなるということが往々にしてあります。

しかしながら、正当とは言えないモンスタークレーマーは、組織の従業員に肉体的・精神的・時間的にダメージを与えるようなものもあるので、このようなモンスタークレーマーに対する対応法について、法的な観点を交えつつお話したいと思います。
弁護士櫻井俊宏の幻冬舎の連載で具体的な事例も踏まえつつ解説しています

中央大学の法務全般を担当している中央大学「法実務カウンセル」(インハウスロイヤー)であり、
新宿・青梅・三郷の「弁護士法人アズバーズ」代表、
弁護士の櫻井俊宏が執筆しております。

 

1 モンスタークレーマーに対する録音の重要性

まずは録音を最大限活用することが重要です。

その後、裁判等の法的紛争になった場合を想定して、証拠収集のため録音をすることは必須です。
相手に録音していることを伝えない「秘密録音」の方式であっても、後々の裁判の証拠として使うことができます。
ただ、威圧的に話してくる相手には、録音をしていることを伝えるのも良い手です。理由は後でお話します。

基本的にメールで対応するべきでしょうか?それとも電話で対応するべきでしょうか?

証拠という観点からすると、やりとりはできるだけ書面かメールのように、証拠として形に残るものでやりとりをするのも重要です。

ですが、伝えるべき内容が、手を怒らせないようにすべき繊細な内容であれば、むしろ書面やメールではやりとりをしない方がよいです。
書面やメールではニュアンスが誤って伝わってしまい、また冷たく感じるので、相手の怒りを増幅させてしまう場合が多いからです。

 

2 電話によるクレーム対応方法

電話のクレーム対応においては、モンスタークレーマーに対する場合は、ある程度毅然とした対応が必要かと思います。
調子に乗らせるとどこまでも激しく話してくるからです。

前述のように、録音をしていることをあらかじめ伝えるのも一つの方法です。
「今後の対応の向上のためにこの電話は録音させていただいております。」
というような感じで最初に告知すれば良いと思います。
断られてもこちらで秘密録音をしてしまってください。

このようにあらかじめ録音していることを伝えておくと、録音されていることを意識し、大声を出したりしないなど,クレームの態様が穏和になる可能性があります。
嫌なことを強く言われ続けるとそれだけで精神的に参ってしまうので、これは有効な手段であると思います。

何時間もしつこく話してくるような場合はそれにお付き合いしてはいけません。
対応者のメンタルに影響を与える上、業務の進行が妨害されるし、また,話せば話すほど後にこちらに不利になる情報を相手方に与えてしまうことにもなりかねないからです。
特に、それに最後まで対応しなければならないという法的義務はないです。

「他のお会いする予約されている方がいらっしゃったので,いったん電話を切らせていただきます。」
「これから外出しなくてはならないのでいったん電話を切らせていただきます。」
というようになるべく早いうちに終わらせるとよいと思います。

この場合、別件が終わったらかけろ、折り返し電話しろと言われても、
「必要であればお電話いただければと思います。」
などと伝え、折り返しの連絡の約束をしない方がよいです。相手が増長するからです。
基本的には、あくまで何か要求する側、すなわちクレームの場合はクレーマー側にボールがあることを意識してください。

 

3 電話における話し方のコツ

クレーマーの方は、畳み掛けるように話しますよね。
そのまま聞いていると、こっちが悪いような気分になってきます。
そこで、ついついヒートアップして言い返してしまうことが多いと思います。

しかし、余計な話はせず、ただあいづちを打ったりする方が良いです。
なぜならクレーマー状態になっている人は、何を言ってもヒートアップしている状態なので、話せば話すほど、火に油を注ぐ可能性が高いからです。

また、相手も録音をしていることが多いです。
このような場合、こちらに不利な言質を無理にとらせようとすることします。
そこで、こちらに不利な発言がなるべくないように、こちらの発言は必要最小限がよいと思います。
ひたすら聞き手に回って、相手が何も言わなくなっても、沈黙を続けてしまってもよいと思います。私は良くやります。

これについて、こちらに不利なことを一方的に言ってきて、あいづちを打たせて了承したかのようにさせるようなクレーマーもいます。
「今『はい』って言ったよな!?」
という感じの人です。

このような場合、あいづちを打っただけです、と答えるのも良いですが、そもそも「はい」ではなく「ええ」等であいづちをうつというのも一つの手です。
「ええ」だと肯定の意味とはなりにくいというわけです。

いずれにしろ、ここまで問題あるクレーマーの場合は、早くやりとりを終わらせたいところです。

「もうお電話でお話しすることはありません。」
「要望があれば書面で送ってください。」
「お話しすることはないので法的措置を執ってくださって構いません。」
という感じでばっさり切り上げてください。

実際に法的措置、すなわち裁判等をされても負ける場合は少ないです。
従業員の皆様のメンタルを守ることの方が重要です。

今のお話にあった、法的な責任を認めない回答をするというのも非常に重要です。
責任を認めてしまったことを録音されると、後に裁判等で不利になるので、謝る場合でも、
「迷惑をかけてしまって」
ではなく、
「ご不快にさせたようなら申し訳ありません。」
と、相手がそう思っているなら、という言い方で逃れた方がよいです。

 

4 刑事犯罪に当たるような場合

「夜外を歩くときに気をつけろよ。」みたいなことを言ってきたら、これはもう刑事上の脅迫罪(刑法222条)にあたるので、録音したまま「脅迫ですか!?」と強気に言ってください。
相手が法的措置に出られるのではないかと思い、ひるむ場合が多いです。
それでもとまらなければ、警察に相談してもよいと思います。

あまりにもしつこく電話をしてくるような場合は業務妨害罪(刑法234条)にあたるようなこともあるのですが、裁判例上も、3か月で1000回電話をしてきた場合等、極めて執拗な場合に限られます。
ただ,「業務妨害で被害届を出しますよ。」ということを言うのはやはり相手がひるむので有効だと思います。

 

5 最後に

昔は、「お客様は神様」などという言葉もあり、このようなモンスタークレーマーも大事にしなくてはならないという風習があったように思います。
今までもこのようなモンスタークレーマーはいっぱいいたのでしょうが、最近になってようやく問題となってきました。
特に、日本の場合、他の国よりもモンスターに丁寧に対応しすぎのような気がします。

客と店員も単なる契約当事者同士であり、客に対しては全てきっちり対応しなければならないというものではありません。

ここまで述べてきたように、従業員が健全に働くことができる労働環境を整えるのも企業の責務です。
モンスタークレーマーに対しては毅然と対応しましょう。
具体的な事例も記載された弁護士櫻井俊宏の幻冬舎の連載はこちら

幻冬舎ゴールドオンライン 弁護士櫻井俊宏の身近な法律トラブル防止に関する連載 全13回