【賃貸物件】借りた(貸した)家からの明渡手続【家賃滞納】

賃貸物件で家賃滞納した場合にどのような手続で追い出す(追い出される)のか

 

こんにちは,あきる野市の弁護士 石井です。

 さて,新型コロナでの給付金の使い途として,賃料への充当を挙げている人が多くいたようです。今家を出たら新たにどこを借りればいいのだという死活問題になりますよね。

 そのため,賃料を払えなかった場合どうなるのか,その先はどうなるのか気になる方が多いと思います。
 そこで,今回は賃貸した建物の明渡手続について書こうと思います。

 

例えばこんなケース

① 賃借人側
はじめまして。私は,賃貸物件で一人暮らしをしているUといいます。

ここ最近,コロナの影響で仕事が無くなり,収入が無くなって,賃料を払えなくなりました。
その旨を大家さんに告げました。
そうしたら,
『1度でも払えなかったらすぐに賃貸は解約する。
すぐに出て行ってもらう。
物が残っていたら,荷物をマスターキーを使って全部外に運び出す。
出て行かなくても,物を勝手に捨てておく』
と言われたのです。私はすぐに出ていかなければならないのでしょうか。
また,荷物が勝手に外に出されてしまうのでしょうか。
② 賃貸人側(上の事例の大家さん)
 私のアパートでいつもうるさくて,近所迷惑を発生させたこともある,Uさんをこれを機会に追い出すことはできないでしょうか。 Uさんが出ていった後,私の姪が近くの大学に入るというので,ここに住まわせたいと思っています。

回答

結論として,

①1度の賃料不払だけでは建物の賃貸借契約は解約できないことが大半である。

② もし裁判で解約という判断が出そうでも,無理やり追い出すことができるのは多くの場合半年経った後。

③ 借主がいない時などに貸主等が勝手に家に入って物を外に出すことはできない。

④ 払わなかった賃料は払わなくていいわけではない。

 

といった感じになるかと思います。
ここで,2度目はどうなんだ?3度目は?半年後ってなんで?
といった疑問が産まれるかと思います。
なので,それぞれの具体的な内容について以下記述していきます。

① 「1度の賃料不払だけでは建物の賃貸借契約は解約できないことが大半」の意味

まず,前提として,賃貸借契約の構造を説明します。

 賃貸借契約とは,当事者の一方(賃貸人)が相手方(賃借人)も対し,ある物の使用収益させることを約束し,相手方がこれに賃料を支払うことを約束することによって成立する契約をいいます。
 簡単にいえば,お金を払うなら,これを使わせてあげるという契約です。

 ここで,賃貸借契約は,貸す側にとっては一定期間自分の大切な物を使わせるものです。
 また,借りる側一定期間のお金を出し続けなければなりません。

 これらから,賃貸借契約は,継続的にモノを使わせてもらう代わりにカネを払うという関係,すなわち信頼関係が基礎にある契約であるといえます。
 そのため,賃貸借契約は信頼関係が破壊されたといえなければ解約できないといえそうです。

 

次に,不動産賃貸借の場合,賃借人に有利に考える傾向が強いです。

 

 賃借人が有利になる理由としては,賃借人は,急に出て行くとなると不利益が大きい一方(次に住む場所が決まっていないと大変なことになりかねない等),賃貸人は返してもらうインセンティブが少ないためだと思われます。

 日本では,法律(借地借家法)の規定も賃借人が有利にされている規定が多く,多くの場合賃借人が有利に判断されます。

 これらから,賃借人の状況を具体的に考えて,当事者間の信頼関係が破壊された場合に賃貸借契約は解約できるといえそうです。
 そして,裁判例等では,賃料の滞納期間や,滞納をした理由賃借人の態様賃貸人の態様といった諸要素を総合考慮して,信頼関係が破壊をされたのかが判断しています。

 例えば,賃料の未払いが1ヶ月で信頼関係が破壊されたとする裁判例もあれば,半年の未払いでも信頼関係が破壊されていなかったという裁判例もあります。なので,賃料未払い以外の要素も考慮する必要があるのです。

 

 これを本件でみますと,たしかにUさんは近所迷惑を起こしていたかもしれせんが,未払いが1ヶ月だけであり,またUさんも自分から支払えないと謝罪の意を込めて(?)いるので,これだけで解約は難しいと思われます。

 

② もし裁判で解約という判断が出そうでも,無理やり追い出すことができるのは多くの場合半年経った後の意味

 日本では,納税,教育,筋トレの3大義務の他に是非とも理解しておく必要がある原則があります。

 それは,「自力救済の禁止」です。

 これは何かというと,何らかの侵害を受けた人は,自分の物理的な力で解決せずに,適切な機関の力で解決しましょう,というものです。

 例えば,自分の財布が盗まれたが,後日その自分の財布を持っている人がいたので,それを奪った。
 という場合,窃盗罪が適用されることになります。
 これは,本来なら,警察にいうべきでした。

 

では,建物の明渡の場合はどうでしょうか。

 そうです。裁判所の力で解決をしなければ犯罪になってしまいます(住居侵入罪,器物損壊罪等)。

 裁判所の力を用いて,強制執行をするには,裁判で判決を得なければなりません。

 しかし,裁判手続はなんだかんだで半年ほど続きます。

 例えば,訴状提出後1ヶ月後に裁判が開かれるとします。

 しかし,裁判は1ヶ月に1回しかやらないので,上記の信頼関係が破壊されているかといったこと等を判断するために,3〜4回ぐらい裁判所での期日を要します。
 そして,審理が終わった後の一ヶ月後に判決が出るかと思います。

 これらから,半年になってしまうというものです。

 もし賃借人側がダラダラとしたり,控訴をしてしまったりしたら,最悪の場合2年以上かかってしまう可能性もあります。

 これでもし裁判で解除が認められるという判断が出そうでも,無理やり追い出すことができるのは多くの場合半年経った後の意味になります。

 

③ 借主がいない時などに貸主等が勝手に家に入って物を外に出すことはできないの意味。

これも,先ほど説明した
「自力救済の禁止」
に抵触するため,することができません。

これも同様に,裁判所の手続を介す必要があります。

 

④ 払わなかった賃料は払わなくていいわけではない。

 賃借人の人が,何ヶ月も出て行かなくてもいいなら賃料を払わなくていいと思うかもしれないので,一応記述しておきます。

 賃料は,出て行くまで毎月発生しますし,もし支払いが遅れたら遅延賠償として,契約書に(おそらく)記載されている約定利率をかけた額が請求されますので,早く支払った方がいいのは間違いないです。

⑤ まとめ

今回のケースは,賃料の支払いが1ヶ月だけ遅れたことを理由とした建物明渡を求めるという,通常ではあまり考えられないようなケースを紹介しました。

建物の明渡では,貸主側,借主側双方にとって深刻な問題であることが多く,両者の利益になるように解決することが難しい問題であるといえます。

そして,こういう場合は得てして,
最初であればすぐに問題が解決できたのに,
感情がもつれて解決できなくなって裁判になってしまう
のであろうと思います。

そのため,私個人としましては,貸主側の人が早い段階で弁護士に相談し,早い段階で借主との間で,貸主もしくは弁護士が交渉するようにするのが一番いい収まりを見せるのではないかと思います(交渉だけなら弁護士費用も安く済むことが多いです)。

上記の通り,裁判まで移行すると,貸主側はずっと目的を達成できませんし,借主側も住んでいて気持ちがいいものでは無いと思います。

最後に宣伝させていただきます。

弁護士法人アズバーズでは,上記のような建物明渡事件についても勿論取り扱っております。

賃貸人のみなさま,賃借人のみなさま,もし不安なことがあればお気軽にご相談ください。

以上となります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

石井 政成