【私文書偽造】嘘が書いてあっても処罰されない?【有形偽造、無形偽造】

時事問題に敏感なアズバーズの弁護士の菊川です。

小池都知事の卒業証書偽造……ほんとかどうかはわかりませんが、穏やかな話じゃないですね。

文書偽造は、刑法で規定されている犯罪類型のひとつです。また、公文書が私文書かでも必要な検討が変わってきます。文書偽造罪は、実は刑法上意外と難しいもので、構成要件ごとに常識とは少し異なる定義が存在しますが、ここでは「偽造」という要件に限ってのみ説明します。

まず、文書偽造罪にいう「偽造」とは、2つの類型があります。

ひとつは、本来であればその文書を作成できる権限がないのに(権限があるかのように装い)、その文書を作成することです。
例えば、私が早稲田大学の卒業証書をそれっぽく作成することです。

もうひとつは、文書の作成権限がある者が、内容が事実と異なる文書を作成することです。
例えば、早稲田大学法学部の責任者が、私が早稲田大学法学部卒業生である旨の卒業証書を作成することです(菊川は早稲田大学教育学部出身であり、法学部出身ではありません)。

前者が有形偽造、後者が無形偽造と呼ばれています。なんでこんなわかりにくい呼び方なのかはわかりません(おそらく海外から取り入れたあとの翻訳の時に形式的に訳したせいかなと思いますが)。

さて、皆さんが偽造と聞いたときに思い浮かべるのは後者の無形偽造の方が多いのではないかと思います。しかし、刑法上、私文書偽造罪においては、この無形偽造は原則的に処罰されないこととなっています。ただし「変造」は処罰されます。なんだかややこしいですね。

最近話題になっている件でいうと、卒業証書の作成名義人はカイロ大学ですから、あの卒業証書をカイロ大学が作成しており、その内容に虚偽がある(=小池都知事はカイロ大学を卒業していない等)ということでしたら、私文書偽造罪は成立しません(変造罪成立の余地はありますが、措きます)。

翻って、あの卒業証書をカイロ大学以外の何者かが作成したような場合には、私文書偽造罪が成立します。

なお、今回特に問題になっているのは偽造罪の成否というより、その行使罪及び学歴詐称による公選法違反の罪ですね。

「行使」についても解釈・論点があって簡単なところではないですが、テレビ局・テレビ番組を介して公開したことがあるとのことですから、「行使」と言って差し支えないのではないでしょうか。

いずれにせよ、説明責任の問題があるとはいえ、今の状況で小池都知事が失脚したら次はホリエモン新党なる新興政党の面々が都知事になってしまう可能性が高まってまいりますね。
きな臭くなってきましたね~、続報に期待です。