【損害賠償】一部の引きこもり支援業者の話【自立支援業者】

 

こんにちは。

あきる野市の秋川で弁護士をしている石井政成です。

最近,引きこもり支援業者が刑事告訴されて,受理された
というニュースを読んだので,色々調べてみました。

刑事告訴された会社は,既に破産しているようです。

 

他にも,この会社とは別な会社の話ではありますが,
民間の引きこもり支援業者に依頼した人が,
その業者に対して損害賠償請求をしたという民事裁判例もありました。

他にも,消費者庁が引きこもり支援業者への依頼について
注意喚起しておりました。

面白そうなので,民事裁判例と消費者庁の警告について
紹介していこうと思います。

 

1 東京地裁令和元年12月26日判決(民事裁判例)

 

(1) どんな判決だったのか

この判決は,上で書いた,
依頼者による民間の引きこもり支援業者に対する損害賠償請求をした事例です。

結論として,請求が一部認められました。

判決は,引きこもり業者が,依頼者に対して
500万円を支払えというものです。

以下,内容を見ていきます。

 

(2)引きこもり支援業者(以下,「Y」といいます。)へ頼むまでの経緯

この事案は,
Yに引き出された方(以下,「Xさん」といいます。)の
母親がYに社会復帰支援を頼んで起きたものです。

まず,Xさんについて説明します。

大学中退後,実家に戻り,アルバイトをして生活していたそうです。

ん?

と思う方もいるかもしれません。

そして,Yによるプログラムの途中で,
Xさんは普通にアルバイトとして働いています。

なので,正直なところXさんは引きこもりでは無かったみたいです。

次に,両親について説明します。

両親は厳しく,娘のXさんが言うことを聞かないと,Xさんは
激しく怒られたそうです。

認定された事実では,言うことを聞かないXさんを
親が橋から落とそうとしたという記述もありました。

 

その後,親子はどうなったのか。

成長したXさんは,両親とは仲が悪くなっていきました。

Xさんが大学を中退して数年後,父親が家族に暴力をふるい,警察沙汰になりました。

そのため,Xさんと母親は家を出て,父親が所有するマンションでXさんとお母さんは暮らし始めました。

 

 

しかし,元々仲があまりよくない二人は再度ケンカをしました。

その時にXさんが暴力を振るったため
母がマンションを飛び出しました。

そして,お母さんは,娘の暴力を問題視して(?)
Yに頼むに至りました。

正直なところ,親子喧嘩の延長だったんだと思います。

(3)契約の内容

お母さんはYに対して,570万円(税込み)を支払うので,
90日間でXさんを社会復帰させるという
社会復帰を支援するための人材育成プログラム業務を委託する契約
を締結しました。

契約内容として,
支援に必要な情報収集寮の提供生活指導職業訓練
といったものがあげられます。

(4)契約後で問題となった行動

① Xさんを家から連れ出す際に,
(両親の許可があったとはいえ)ドアのチェーンをバールで破壊した。

② 引きこもりの原因が家庭環境や本人の資質,病気,障害等の様々な要因があるのに,
YはXさんに対してほとんど聴き取り調査等をしていない。
加えて,Yには医療や福祉の資格を有する人がいないため,専門的な医学的見解を得ることができないのに,
医療機関等へ受診させることも無かった。

③ Xさんが携帯電話で友人と連絡を取り,Xさんが逃亡し,警察へ駆け込んだ。
その後,連れ戻された。

④ ②の後,Xさんの同意無く,携帯電話や現金等をYが預かった

⑤ 生活指導のうち,支援業務日誌をほとんど作らなかった。

⑥ Xさんが引き出された後にアルバイトをしているが,特にYによる転職支援は無かった。

 

(5)裁判所の認定

裁判所では,契約をしっかり行われていないが,頼んだ母親が積極的に行っていたことを過失として考えた結果,
500万円の契約のうち,9割の債務不履行責任を認めました。

そして,バールでの立ち入りや,携帯電話や現金を預かったことを不法行為と認定し,
55万円を損害と認定しました。

それで,合計500万円支払え,という判決でした。

この判決では,
一部の引きこもり支援業者が
重要なことは何もやっていないのに,
めちゃくちゃなことをしている!
ということが明るみになったといえます。

 

2 消費者庁の注意喚起

消費者庁へのリンクです ↓

ひきこもり支援を目的として掲げる民間事業の利用をめぐる消費者トラブルにご注意ください!

これを読む限り,民間のひきこもり支援業者とのトラブルは多いのでしょうか。

上の裁判例のように,やるべきことを全くやっていないところがまだあるのですかね。

引きこもり支援を頼んだとしても,定期的に子どもからヒアリングをして,
適切な対処をしているかを聞き出すことが大切なんでしょうね。

適切な対処をしていなかったら解約(に加えて返金)をお願いすると。

実際,裁判例のようなことをする業者はいないとは思いたいですが。

もし,解約や返金に応じない場合には,
消費者庁や弁護士に相談するのがいいのだと思います。

 

3 最後に

今回のニュースでは刑事告訴されただけですので,
結果がどうなるか全然わからない状況です。

今後の進展が気になるところです。

 

石井政成